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「大冒険だね」と、はなむけの言葉を【キューバ・ハバナ→ビニャーレス】

キューバの空はとても広くて、私は久しぶりに視界に入りきらない雲と青を見る。南国の植物と気温と湿度、そして知らない言葉の響き。

愛している、と私は想う。同じ気持ちを思い起こさせるのは、ラオスのルアンパバーンやミャンマーのバカン、そしてカンボジアのシェムリアップ。私はどうしても都会じゃなくて緑豊かで街が完成されていない、いわゆる途上国の景色が好きなようだった。

このnoteを書いている今日は、首都ハバナと、そこから東に180キロほど進んだ海沿いの街バラデロを経て、今度は再びハバナに戻り、そこから北西へ200キロ進んだ先にある、世界遺産のビニャーレス渓谷へ向かっている。

車内には前から恰幅のいい運転手、エルネストさんがいて(チェ・ゲバラと同じ名前なのだと笑っていた)、隣にもう4年ほど日本へは帰っていないというネイチャーガイドのたけしさん、その後ろにカナダでワーホリ中のえいちゃん、そして続く私にれいみちゃん、後ろにしおりちゃんとたつやくんという私たち4人の一行。

昨夜はさらに2人増えて8人ほどでキューバのビールを飲んでいたから、私は「こんな大人数で旅をするのは、(あらかじめ決めていた場合をのぞいて)初めてだな」と常時少し愉快な気持ちで生きていた。

楽しいものなのだな、ひとりでない旅も。

Wi-Fiのつながらない、つまりただ原稿を書いたり企画をしたり、写真を撮って編集して、という作業以外の仕事ができない世界において、私は「どうしてこれまでひとり旅を頑なに志してきたのか」と「インターネットの世界で生きる意味について」考えていた。

そしてそれなりの答えには行きついているけれども、まだ正解はつかめていない。

とかくキューバは、素晴らしかった。隣でシャッターを切るたつやくんと「難しい」と嘆きながらも、毎日をただ淡々と過ごすことさえ平常にできないこの街で。

そういえばこの街にはモノがない。通常、私たちがコンビニで見るようなモノが、まったくないのだ。コーラ一本買うにも手間取うし、水さえ決まった場所でしか買えない気がする。両替だって大変だし(通貨は2種類)、食べ物の種類は少ない(高価なお店に行けば、別だけれどね)。

思い通りにならないことに出会えるからこそ、旅は旅なのだ、と私は全力ドMな気質をかみしめていた。

実際、話は違うけれどぜんぜん思うような写真だって撮れないのだ。この街にはもっとポテンシャルを感じるのに、もうぜんぜん。

けれど、これでいいような気もしていた。写真は難しい。新しいレンズとはまだ仲良くなりきれない。私の旅レベルもまだまだとてつもなく低い。言語なんて、言わずもがなだ。


ま、けど。


世界は広い。空も青くて鳥は鳴く。幸せに生きるために、さぁ? とばかみたいに素直に考えるための材料とヒントが、キューバにはたくさん詰まっている。と、みんながすやり眠るバンの車内の中、iPhoneでこのnoteを書きながら私は考えて続けていた。

言葉が沈殿する前に、刺激の嵐とたくさんの友人たちの中、私はシャッターを切り続ける。

Wi-Fiがつながらない世界。ふだんウェブの世界に常時生きてしまっている自覚があるからこそ、リアルの美しさの中で生きる喜びは大きく、やはりこちらに軸足を置きたい、と。

日本を出る前に、「大冒険だね」とはなむけの言葉を。彼は正しかったと、ルートも思考もクリアになりつつある旅の7日目、私は日本から遠い真夏の国の昼間に想う。


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