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鋼のメンタルさんこそ注意したい"こころ"の金属疲労

”こころ”の金属疲労とは?

「金属疲労」という言葉があります。丈夫なはずの金属も、長時間に渡って小さな力を加え続けると、やがて壊れてしまいます。

比較的小さい応力でも繰返し受けることで、材料に小さな割れが発生し、それが少しずつ進行して、最終的には破壊にいたる現象です。

また、大きな力を加えた時のわかりやすい破壊よりも、破壊までの確認が困難とのこと。

金属が破壊するのにはいくつかのパターンがあります。
最も単純なケースとして引張試験のように応力をかけ続け破壊するものです。この場合、破壊の前に変形が起こるため、確認は容易です。
しかし、金属疲労の場合、大きな変形は起きずに小さな割れが起こるだけです。そのため、疲労の発生確認と破壊までの予想時間が困難です。

これって金属だけじゃなくてメンタル面でも同じだなぁと思っていて、
・妻から突然離婚を切り出されたが心当たりがない
・優秀な部下が突然退職してあたふたした
こういう話って、こころの金属疲労が起きたパターンじゃないかなって思ってます。

一つひとつは取るに足らないことかもしれない。取るに足らないからわざわざ指摘したり怒りを表すほどのことでもないかもしれない。
でも、それが少しずつ少しずつ繰り返されると、だんだん神経がすり減ってくる。怒りというよりもうんざりするとか残念に思うとか、いや、単純に「なんかもう疲れた」という気持ちになってくる。
中には指摘したり意見したりもするけど、往々にして取り合ってもらえないというか、真剣に受け止めてくれない。

そしてある時、それもまたごくごく小さな力が加わっただけなのだが、ポキッと何かが折れる音がする。

鋼だからこそ気づかない疲労

風呂敷を広げる人と畳む人という話がありますが、金属疲労を起こすのは圧倒的に畳む人に多いです。組織のNo.2とか、取締役直下の実務家とか、中間管理職とか、管理部門スタッフとか。割と地味で目立たない苦労人ポジション。

私が尊敬するビジネスパーソンが畳む人なのと、仕事柄畳む人との接点が多いために、そちらへの擁護が強いかもしれませんがご了承ください。普段はフラットな立場でいる必要がありますが、ここではわかりやすく贔屓します(笑)。

彼らは実務家なので合理的に物事を捉えるし、あんまり感情的にならない。基本のストレス耐性は高い鋼のメンタル。割と面倒見の良いタイプも多いので、多少のことでは怒ったりへこたれたりせず、仕方ないな〜って感じで普段はやり過ごす。だからこそ、冒頭のように(時には本人すら)気づかないうちに金属疲労を起こしていて、ある日ポキッといってしまう。

こんな光景をしばしば傍で見てきました。

では、それを避けるためにどうしたらいいでしょうか?

スポットライトよりリスペクトを

基本的に実務家の畳む人たちは、職人気質でコトがうまく進めば手柄や名声はあんまり欲しがってない傾向が強く、何なら手柄は広げる人が掻っ攫っていっても全然問題ないとさえ思っている人もいます。
ただ、プロ意識の強さから、自分がやっていることへのプライドはあるため、周囲の人が彼らにリスペクトを感じていて、それが彼らに伝わってるかどうかは大事だなと思います。また、誠実さや計画性などを重んじる人たちでもあるので、それを邪魔しないコミュニケーションも大切だと思います。

①情報公開・共有をする
畳む人の傾向としてなんでも知りたがりな人が多いこと&そもそも広く情報を知っておくことで万が一の対策行動を取っておけるという安心感を覚えるので、可能な限り情報公開をする。広げる人はマメな情報共有はやれと言ってもなかなかできないと思うので、畳む人が自由にアクセスできるようにしておくと勝手に収集してくれるので楽かなと。

②事後ではなく事前のエクスキューズを入れる
大抵、何かが起きる直前や起きた後に「ごめん」って言われることが多くて、振り回されていると感じて疲れてしまうケースが多いです。広げる人たちが計画通りに進めないことは理解しているので、こうなるかも?と早めに言ってくれたらリカバーするのにとも思っている。「早く言ってよ!」ってやつですね。

③約束を守る
これがなかなか難しくて、広げる人の醍醐味は、予定調和じゃないところや、思い切りの良さ、行動力や爆発力なので、臨機応変さこそが強みだったりする。だから決めたことを時には変えねばならず、約束したことが守れないことだってある。…というのは畳む人も重々理解しているのだけど、やっぱりこれが続くとこころが疲れる。これに関しては「なぜ変えるのか」の合理的かつ誠実な説明に尽きるのかなと思います。(基本、合理の人なので納得すれば大丈夫なことも多い。)あとは10約束があったらそのうちの2,3くらいは死守するとか。

④自分が苦手なことをやってくれることに感謝を示す
畳む人の地味な仕事の意味や重要性について興味を持ったり、理解したりすることは多分難しいので、少なくとも「自分が苦手なことを代わりにやってくれているんだな」ということだけは常に念頭に置いて、そしてわざとらしくても言葉で伝えてもらえるといいと思います。
(ちなみに畳み人たちは、広げる人の仕事は自分達には到底できない、すごいことだとちゃんとリスペクトを感じていますよ)
ただ、口だけだとそれはそれで「またかよ」ってなるのと、コトが進むことを何より重視しているので、①②③をちゃんとやってもらった方が不満足は軽減されるかなーと思います。

⑤その他、畳む人が若手の場合
広げる人が思いつくがままに次から次に投げてくるボールをうまく捌き切れないことが多いので、納期・クオリティ・優先順位付けの整理はしてあげると良いと思います。また、自己効力感もまだ強くはないので、他の畳む人よりは周囲から分かるような評価を出してあげる方が良い気もします。(社内表彰で、わかりやすい数的成果以外の指標で評価する部門とかがそうですね。グッドプラクティスとか。)

畳む人といってもいろんなタイプがいるとは思いますが、私が見聞きした中でいうと、こういう対策があると畳む人がちょっとでも報われるのかなって思うことを書いてみました。

逆に、広げる人の言い分とか、畳む人への不満や要望とかも色々聞いてみたいものです。


【引用】
・金属疲労・疲労破壊が発生するメカニズムとその対策
https://engineer-education.com/metal-fatigue-mechanism/ , (参照 2020-12-28)


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