見出し画像

大好きだった彼はASDなのかもしれない。

9月に約10ヶ月交際した彼氏とお別れした。
出会った当初、こんな素敵な男性がいるのか、とゾッコンだった私が、まさか自分から別れを告げるとは。
今でもちょっと信じられない。


けど、彼のことを嫌いになったわけじゃない。
彼を想う気持ちは確かにあった。正しくは今もある。
彼と過ごした時間は幸せで、かけがえのない時間だったし、別れてからも彼のことを考えない日はない。

未だに待受は誕生日に彼からもらった花束の写真だし、誕生日兼クリスマスプレゼントにもらったカルティエのネックレスは先日の健康診断で外すまで、ずっと着けていた。

俺達、なんでうまくいかなかったんだろうね?

彼に言われた言葉が鮮明に蘇る。

交際中、コントロール不能な自分の脳が不安を感じてしまった。その不安はどんどん膨れ、動悸や不眠という形で、体に異変をもたらした。
そんな状況が3ヶ月続いた(症状は落ち着いてきてはいるものの、現在も完治はしていない)。

自分が考えすぎていることはよく分かっていたし、彼は悪くなくて私の思考の癖や認知の歪みゆえに不安感が巨大化していったのだと思う。

だけど、不安のループに陥り、それが体調にまで影響を及ぼすと人は心病む。
自分の中ではもう別れるしかない、という頭になっていた。

モラハラ疑惑

きっかけはひょんなことからだった。
6月のある日、仕事が休みだった私はTwitterを見ていた。TLにたまたま流れてきたモラハラをする男性の特徴といったツイートが目に留まった。

そこに書いてある特徴の複数が付き合っている彼に当てはまっていた。

モラハラというのは、交際中はなかなか分からず、結婚後や子供が産まれた後で、パートナーが変わってしまう、というのがよくあるパターンらしい。

つまり、交際前や交際中はそういうことをする人かどうか、見抜くのは難しく、結果として離婚に至ったり、耐え忍んでいる方が多くいるようだ。
だからこそSNSなどで、こういう人は危ないから、しっかり見極めて!そうだと思ったら一目散に逃げて!というような注意喚起的ツイートが散見される。

胸騒ぎがした。
ツイートを見たことをきっかけにモラハラについて検索したり、YouTubeなどの解説動画を漁った。また、モラハラ夫について吐露する奥さま方のツイートもたくさん見た。

気になると、調べずにはいられないタチの私はその日、何時間もモラハラについて調べまくった。
そして、あっという間に今付き合っている彼にはそういう要素がある、だから別れなきゃという答えを出していた。

不特定多数の情報に踊らされていたのは間違いない。ただ、少なからず過去に起きた出来事において、これってモラハラ?!と疑問に思ったことがあったため、あのときのあの発言はやっぱりそうだったのか!
と答え合わせをしてしまった。

それが別れなければ、という私の思考を強化した。
色々と特徴が当てはまるうえに、実際にこういうこともあった。これはきっとそうに違いない。
モラハラ男とは別れるのが大変らしい。さぁ、どうしよう、と。

私の脳内はグルグルと多動しはじめた。
不安から私の心臓はバクバクし、その夜はほとんど眠れなかった。

その日を境に、私は目覚めてから寝るまで、ずっと彼とどう別れるか、何と伝えれば穏便に別れられるか、好きな気持ちがありながらも、別れるしかない、と同じことを何十回、何百回と考えていた。

夜は入眠できても、動悸で中途覚醒してしまい、そこからはひたすら彼とのことを考えてしまい、脳疲労を起こし、仕事中も頭の中はそのことでいっぱい、というような異常事態が発生していた(診断は受けていないが、私にはADHDの傾向がある自覚をしており、やめたくてもひたすらグルグル思考していたのは特性の影響もあると思われる)。

そんな状態だったからかは分からないが、悩み始めてから1ヶ月後、仕事で大きなミスをした。
意識朦朧としながら、ミスの後処理をするのは辛かったが、ある意味その1週間はそれに集中せざるを得なかったので、ショック療法になった。

が、それも長くは続かず、仕事の件が落ち着くと、またひたすら悩む日々が始まった。
生まれて初めて心療内科を受診した。

睡眠薬や不安感が強まったとき用の頓服薬を処方されたが、薬漬けになるのが恐くて、睡眠薬を半錠飲むにとどめた。

悩んでいる間も、彼にはちょこちょこ会っていた。彼には仕事のミスがきっかけで、不眠と動悸の症状があると伝えていた。
親身になって心配してくれる彼を騙しているようで、胸が痛んだ。

悩み始めて3ヶ月、満を持して彼に別れ話を切り出した。

情深い彼は静かに涙を流しながら、私の考えをすべて受け入れると言ってくれた。
あまりにも円満な別れだった。

ともちゃんはすぐ幸せになれるよ、絶対幸せになれるから大丈夫、安心して。
俺がちょっと癖が強かっただけだと思うから。

と言われた。

私が事前にネットで予習していたモラハラ男の振る舞いではなかった。
そりゃこちらも1番相手を傷つけない方法で、と3ヶ月練りに練ったわけだけど、もっと否定されたりゴネると思ったし、数回にわたって話し合いを重ねる覚悟だった。

なのに、こんなにもすんなり受け入れてくれて、号泣しながらひたすらお互いの幸せを願い、感謝の言葉を述べ合った。

別れたその日の早朝4時(翌日)、たまたま中途覚醒したタイミングで彼から電話がかかってきた。
恐る恐る電話に出た。
私と別れたあと、彼は朝方まで1人で飲み歩いていたらしい。

泥酔後、松屋で潰れ、吐いて、警察に身分証明書を確認され、家まで帰れるか?というやりとりをしたそうだ。
酔いながら、

おまわりさんが心配してくれた。
お店の人が助けてくれた。ありがとう、ありがとうって思いながら、今帰ってる。

次の瞬間、彼は号泣しながらこう言った。

幸せにできなくてごめんなさい。
期待に応えられなくてすみませんでした。

と。

胸が苦しくて、

あなたは悪くないよ、もう分かったから謝らないで。

と言う私に、彼は泣きじゃくりながら、何度も何度も同じ言葉を繰り返した。

別れ話をした際、あなたは悪くない、ということをひたすら伝えていたが(モラハラする人にモラハラの話をするのは御法度ということだったので、別の切り口でアプローチした)、

俺はこういうとき、自分に矢印を向けるからさ。俺が色々迷惑をかけてしまったんだと思う、ごめんね。

というようなことをそのときも言っていた。

別れ話をしたときの彼の反応や言葉からも感じていたが、彼はいわゆるモラハラ男ではない、ほんまもんなら、窮地に追い込まれたときに自分を省みたり、相手の気持ちを尊重したり、穏やかな反応はできないのではないか、と思った。

そう確信したことで、心優しい彼を疑ってしまったこと、信じ抜くことができなかったことへの罪悪感に押しつぶされそうになった。

目の前にいる生身の彼の言動ではなく、不確かな情報に過去の彼との出来事を当てはめ、別れるという結論を確かなものにするために、彼の欠点や粗ばかりを探してしまった。

彼は本当にピュアで真っ直ぐな人だった。
それなのに、私が歪んだ心で彼を見てしまったのだ。

別れてから1ヶ月以上が経った。
罪悪感は和らいできているが、不安が暴走してしまうところや、偏った思考に支配される自分を変えなければいけないと強く反省している。

ASD


実は別れる少し前から彼には何らかの特性がありそうなことに気付いた。

仕事でのミスと、脳内多動により、やっぱり私はADHDなのでは?とADHDについてネットで調べる中で、ASDという単語が目についた。

ASD。
これまで知らなかったが、発達障害の1種らしい。

特徴として、コミュニケーションが苦手とか人の気持ちが分からない、ということをよく挙げられているようだが、彼は営業職でバリバリ働いていたし、私が一緒にいたときもコミュニケーションに問題がある、とは1度も感じたことがなかった。

強いて言えば、仕事の話をマシンガントークすることが多く、本来おしゃべりな私がわりと聞き役に徹していた感はある。

でも、彼もそれを認識していて、

いつも話聞いてくれてありがとう、愚痴ってごめんね

など声がけしてくれていたし、

ともちゃんは最近仕事どう?
ともちゃんもそういうことある?

など、こちらに話を振ってくれる気遣いもあった。

人の気持ちが分からない、ということについてもあまりピンとこず、むしろ彼は感受性が強かったように思う。

建前上、私の病みは仕事がきっかけだったのだが、別れ話をする3週間前くらいに、彼から

ともちゃんが病んでるのって俺のせいじゃないかな?俺が悩ませちゃってない?

と私の表情や様子からそういう状況を感じ取り、心配していた。

それ以外にも一緒にマラソン大会に出た際、レース直前に脚が痛くなった私をめちゃくちゃ気遣ったり、また別のときには足が攣った私の足をマッサージして、治してくれたりした。

映画やドラマ、ドキュメンタリーなどで最近すぐ泣いてしまう、と言っていたし、家族を大事にする様子などを見ていると、とても愛に溢れた人に感じた。

人の気持ちが分からないのではなく、自分の中でのこうあるべき、から外れた場合やストレス過多でキャパオーバーになってしまったときなどに、相手を思いやる余裕がなくなり、反射的にキツめの言葉が出てしまうのではないか?

私のこれまでの感覚では、仮に上記のような状態になったとしても、相手の立場に立って物事を考えれば、言い方や言葉を選べるでしょ、と思っていたが、ASDの人達にとって「相手の立場に立つ」「他者視点」というのが難しいらしく、その結果、自分の気持ち・主張に焦点が当たり、受け手がモラハラと感じてしまう言動になることがあるようだ。


ASDの彼氏や旦那さんを持つ方の情報を得ようとしたが、Twitterや Yahoo知恵袋に出てくるのは、うまくいかず離婚や別居に至っていたり、パートナーが鬱などのメンタル疾患になっていたり、同居していても旦那さんの悪口・不満を書いているものが多く、マイナスな印象をひたすらに受けた。

彼のお兄ちゃんの奥さんが昔、体調を崩していた時期があり、そのことが原因でお兄ちゃんは栄転の話を一旦見送った、というエピソードをふと思い出し、お兄ちゃんにもそういう特性がある?奥さまはカサンドラだった?と完全なる憶測と思い込みを加速させたりもした。

夫婦の実情は本人達にしか分からないが、彼曰く、お兄ちゃん夫婦は仲良しで、彼もそんな関係に憧れていた。
結婚して10年以上が経っており、子供が2人いて、毎年スタジオで家族写真を撮っているのだと以前、写真も見せてくれた。

当時の私は自分の心身を守るために、彼から離れるしかない、数ヶ月にわたる脳のグルグル、不眠・動悸から解放されたい気持ちが強く、彼のことを冷静に見られていなかった。

自分の勘違いがきっかけだったとはいえ、彼に対する不安感から、体に不調が出てしまった以上、自分の身を守るためにも離れるという判断は間違っていなかったと思うし、試す意図は1mmもなかったが、別れ話をしたことで彼の根っこにある優しさや、本気で私を大切に思ってくれていたことを確認できた、とも思っている。

今改めて思うのは、彼のことをちゃんと理解したかった、正面から向き合いたかった、ということ。
自分に何ができるのか、この出来事から何を学ぶべきなのか。
正解は分からないけれど、思いつく限りのことをやろうと思い、大人の発達障害やASDについて少しでも学ぼうと図書館に通い始めた。

彼のことが人として好きなのだ。
今思えば、脳内お花畑状態だったかもしれないが、出会った当初はこの人と家族になりたい、この人を守りたい、この人との子供なら産みたいとまで、思った人。

彼女とか友達とかこの際、関係の形はどうでも良くて(と言いつつ、未練タラタラだが)、彼が何か困っていたら助けたい、私で役に立てるなら力になりたい、という気持ちが強い。

彼はおそらく特性の自覚がない。
だから、得体の知れない生きづらさを感じているように見えた。

感覚過敏らしき症状があること、最初の頃揉めたときの口調や態度を思い出すと、飲酒していたとはいえ、明らかに普段の彼とは違っていたこと、本人がそのときの記憶がほぼないこと、話し合いのときに元カノの話で泣いたこと(当時は未練があるから、と解釈したが、今思えば一種のパニック?)、満腹感や疲労感のキャパを本人が把握していないこと、比較的マイナス思考、自分を客観的に見られない、イレギュラーへの苦手意識、仕事のパワポを誤って消した際に癇癪を起こしたことなど。

あくまで私の見てきた彼でしか判断できないが、総合的に見て、傾向はあると思う。

ただ、仕事は大きなトラブルなく、活躍しているし、二次障害の鬱やパーソナリティ障害はないし、家族仲良好、友人も複数人おり、過去お付き合いした異性も複数人いる(学生時代かなりモテた模様)。
清潔感もあり、掃除・洗濯・皿洗いなど家事もそつなくこなし、ファッションや持ち物のセンスも抜群、車は安全運転など、社会生活においての大きな困りごとは基本なさそうだ。

が、柔軟な考え方が苦手なので、仕事での対人関係がかなりストレスになっている印象を受けた。
上司が飲み会好きで、飲みの場で部下の悪口を言う。喋ってばかりでマネージャーとしての仕事をしない。事前に報告していたのに、ハシゴを外す、などとよく愚痴っていた。

他人は変えられないし、休日まで嫌いな人のことを考えて自分が嫌な気分になるのはもったいないよ?

と伝えると、

そうだよね、もう考えるのやめるね、愚痴ってごめん🥺

となるので、言われれば、受け止めてくれるが、つい彼の中の上司とはこうあるべき、仕事とはこうあるべきの思いが優ってしまい、許せなくなるのだろう。

違う性別・種族の時点で100%理解なんて、無理だけど、それでもASDについて学びはじめた今なら、あのとき彼がイライラしていたのは私にじゃなく、疲れてたからだったんだろうな。あのときあんなことで怒ったのは、本人の中のこだわりゆえだったんだろうな。
ちょこちょこ不調になるのは感覚鈍麻で、体に無理をさせすぎてしまっていたんだろうな、と説明がつく。

人は得体の知れないものや現象に恐れを抱く。彼の根っこにモラハラ要素はなく、むしろ優しい人間性なんだ、と認識したうえで、特性がこういう言動を引き起こしていたのね、と仕組み?を理解できれば、過度に恐がる必要はないのだ、と感じる。

私自身が変わらねば

彼との関係から、私自身、「課題の分離」ができていないことに気付いた。
彼がたとえイライラしていたとしても、私が原因じゃないのなら、こちらが気を揉む必要はない。
そういうときはそっと放っておけばいいのだ。

彼に対して感じていた不安を彼に伝えることから逃げ、別れるというある意味1番簡単な方法を私は選択してしまった。
言い合いになることや否定されることを恐れ、自分の気持ちや思いをぶつけられなかった。

これも私が自己受容ができておらず、彼に嫌われて傷つく勇気がなかったからだと思う。
嫌なことは嫌、不安なことは不安、としっかり伝えても改善されなかったり、受け入れてもらえなかったことの結果として、別れるのと、何も伝えずに勝手にそういう人なんだ、と決めつけて、一方的に別れるのとでは全然違う。

前者は自分の中でも相手の中でも合わなかったんだ、という諦めがつき、納得感が高いが、後者は問題と向き合えなかったゆえの心残りや相手に与えるダメージなど代償が大きい。

私はどうすれば良かったのかな。
どういう選択をしていれば、大好きな彼と良好な関係を築けたのだろう。
未だに分からない。

私がもっと初期段階でASDについて知り、対策を打っていれば、モラハラと勘違いすることなく、過剰に不安を抱かずに済んだのだろうか。

いや、ASDに辿り着いたとしても、得られるのはマイナスな情報が多く、体に異変が出たかは分からないが、自分の性格上、思い悩んでしまったのではないか。

私と彼とでは遅かれ早かれ相性が合わず、別れる運命だったのだろうか。
お互いあんなに好きだったのに?

医者でもカウンセラーでもない私が、ネットの情報に踊らされ、素人目にやれモラハラだ、ASDだ、と彼を何かの枠組みに当てはめようとすること(レッテル貼り)、
世の中に絶対なんてないし、彼の良いところをたくさん知っているはずなのに、あるときから悪いところばかりに着目し、彼はきっと将来的にモラハラをする人だ、ASDグレーゾーンに違いないと自分の知っている少ない情報で結論を決めつけること(白黒思考)。

おそらくこの思考が一番良くない。
私は自分で自分を苦しめていた。

結婚して豹変する可能性という意味では、誰だってそうなる可能性はあるし、そこを絶対避けたいなどと言い始めたら、誰と付き合っても確実性は担保されないので、誰とも関係を進展させられない。

ASDだって人それぞれ個性があるようだし、身近に有識者がいないから分からないが、要素がある人なんて言い出したら、いくらでもいるのではないか。彼程度であれば、分かりやすい男脳、くらいに考えておけばいいのではないか。

本当は大好きな彼と一緒にいられるように、ただただ安心したかった。
彼は私を蔑んだり、心無い言葉を投げつけてきたりしないし、少し気を付けなければいけないこと、癖を知ることは必要だけれど、それを把握できれば、良好で信頼できる良いパートナー関係が築けるよ、と誰かに言ってもらいたかった。

知識のある人に相談をしていたわけではなかったから、そんなふうに言われることはなかったけど、せめて自分でそう思えるような成功例に出会ったり、大丈夫、彼とならきっとうまくやっていける、という自信まではいかなくとも、前向きな気持ちになりたかった。

私の悪い癖として、先のことを考えすぎてしまい、良からぬことばかりがよぎり、自ら不安を生み出し、今ある目の前のことを楽しめず、絶えず悩み続けてしまう。

明日死ぬかもしれないのだから、後悔のない生き方をする。今を全力で楽しむ。
そういう心持ちで日々生活していれば、未来のことでこんなに苦しむことも、思考が暴走することもなく、今頃、彼と幸せな時間を過ごしていたんじゃないかな。

今が人生で1番自分と向き合っているかもしれない。
自分の欠点や弱み、改善しなければいけない点はだいぶ分かってきた。
31年間の月日で自分に染みついた思考の癖を治すのは簡単なことではないけれど、自分のために変わる。

自分が幸せになるためには、変わるしかない。
大事なことに気付かせてくれた彼には感謝している。
強く、たくましく、フラットな思考ができるようになった暁には、叶うか分からないけれど、彼と再会したい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?