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王道だけどちゃんと聴いてなかったシリーズVol.9 『パール(Pearl)』

「ロックスターの証」

第9回目は「ジャニス・ジョプリン」より、2枚目のソロアルバム『パール(Pearl)』です。

ジャニス・ジョプリンは、アメリカはテキサス州出身の、若くして夭折(ようせつ)した60年代アメリカのカウンター・カルチャーを象徴する女性ロックシンガーです。

2枚のアルバムを出した後にレコード会社を変えて新しいバンドで再出発し、アルバム『コズミック・ブルースを歌う』を出しますが、その後すぐに解散し、また新たなバンドでレコーディングをしたのが今作『パール(Pearl)』です。

しかし今作の製作中、元々ドラッグの常習者であったジャニスは、致死量を超える薬物を摂取したことにより亡くなってしまいます。

レコーディング途中での死去となったため、アルバムにはアカペラやインストゥルメンタルのみの曲も含まれています。

結果的に彼女の死後に発表された本作は、彼女の最大のヒットアルバムとなり、ロック史に名を残す名盤となりました。

それでは早速アルバムレビューに移りたいと思います。

曲目は以下の通り、全10曲です。

1.『ジャニスの祈り(Move Over)』

2.『クライ・ベイビー(Cry Baby)』

3.『寂しく待つ私(A Woman Left Lonely)』

4.『ハーフ・ムーン(Half Moon)』

5.『生きながらブルースに葬られ(Buried Alive In The Blues)』

6.『マイ・ベイビー(My Baby)』

7.『ミー・アンド・ボビー・マギー(Me And Bobby McGee)』

8.『ベンツが欲しい(Mercedes Benz)』

9.『トラスト・ミー(Trust Me)』

10.『愛は生きているうちに(Get It While You Can)』

冒頭いきなり、彼女の代名詞である『ジャニスの祈り(Move Over)』から始まります。

この曲を聴いて一気に彼女の魅力に引き込まれました。

しゃがれた声で魂からシャウトする様は、正に彼女が唯一無二のロックンローラーである証であり、そんな姿に影響を受けた人の数は計り知れないでしょう。

正直なところ、私は以前まで「ロック」というものは男のものであるという、一種の固定観念に囚われていました。

しかし彼女の存在を知ったことで、自身の視野がいかに狭かったかに気付かされ、ロッカーとしての熱い魂があれば性別など関係ないということを教わりました。

続いて2曲目の『クライ・ベイビー(Cry Baby)』も彼女を代表する曲となったもので、「ガーネット・ミムズ」というソウル歌手が1963年に発表したヒットナンバーが元になっています。

ブルース風にアレンジされており、彼女の歌声と相まって、より哀愁のある見事なカバーになっています。

ちなみに原曲はこちらです。

7曲目の『ミー・アンド・ボビー・マギー(Me And Bobby McGee)』は、カントリー調の曲で、こちらも元々は「クリス・クリストファーソン」という歌手と「フレッドフォスター」によって作られたものが原曲です。

ジャニスの持ち味が遺憾なく発揮されたこの曲は、アルバム発売の翌日にシングル・カットされ、ビルボードチャートで2週連続1位を獲得しました。

そして8曲目の『ベンツが欲しい(Mercedes Benz)』は、彼女が本録音する前に亡くなってしまったため、アカペラのみの仮録音のまま収録されることになった曲です。


この曲はジャニス自身が知人とメルセデス・ベンツ600でドライブしたことで着想し、”ベンツが欲しい”という率直な気持ちを詩に表しています。

ちなみに2003年に発表されたベスト盤には、新たにリミックスされたバージョンが収録されています。

ラストの『愛は生きているうちに(Get It While You Can)』は、ジェリー・ラゴボイとモルト・シューマンによって作られ、元々はソウル歌手のハワード・テイトによって発表されました。


曲中に、”人生は何が起こるか分からない。だから、愛は今のうちに手に入れなければならない”との旨の歌詞が出てきますが、まるで彼女の生き様そのものを表しているかのような、ラストにふさわしいナンバーとなっています。

アルバムを通して聴いた後は、エネルギーを貰ったのと同時にどこか切ない気持ちになりました。

冒頭でも述べた通り、彼女は齢27歳という若さでこの世から旅立ってしまいました。

夭折したロッカーは他にもジミ・ヘンドリックスやドアーズのジム・モリソン、ニルヴァーナのカート・コバーンなどと数多く挙げられます。

そして、こういった早期に亡くなったロックスターたちを神格化する風潮というのは、確実に存在すると思います。

元オアシスのノエル・ギャラガーは、カート・コバーンの死に影響を受け、『リヴ・フォーエバー(Live Forever)』という同バンドの名曲を生み出したとされています。

たとえ一瞬だとしても燃え尽きるように輝く刹那的な生き方と、歯を食いしばってでも最後まで生き抜いていくという価値観。

どちらが正しいかなど私には分かりませんが、唯一つ言えることは、彼女の歌声と作品は色褪せることなく、これからも多くの人々に驚きと感動を与え続けていくであろうということです。

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