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じゃない方ゲー人による、平成ゲーム業界回顧録 #07

持ち込みで縁のあったジャンプの編集者にアシスタントの件を相談すると、ちょうどスクールのある吉祥寺に仕事場を構えていた”E川先生”を紹介してくれた。

E川先生は当時ジャンプで連載していた「まじかる☆タルるートくん」というアニメ化もされた作品を描いた人気作家で、もちろん自分も作品は知っていたし、普通に毎週読んでいた。

先生の漫画は絵柄も可愛らしく、作品に勢いがあり、内容も面白かったのでぜひ参加したかったが、採用には作品提出の審査があるという話だった。

具体的には、車、家、モブ(群衆)のカットをそれぞれ最低1点ずつ、ペン入れまで完成させたものを見せて欲しいということだった。

車の方はロボットアニメブームの時に趣味でオリジナルのメカをデザインして描いたりしていたのでまだ良かったが、背景は持ち込みの時にもあくまで物語を伝えるための手段としてイヤイヤ描いていたりと苦手意識がありしんどかった。

ただ、今回は明確な目的があり、ターゲットもはっきりしていたので、E川先生の漫画を読み返し、写真を元に先生の作風に近いイメージで描き起こす作業をコツコツと積み重ねた。

また、モブのカットも普段描くことがないのでどうしようか悩んだが、身近なものの方が描きやすそうだと、中学の卒アルを引っ張り出し、校庭にクラスのみんなが集まって屋上から撮影した空撮っぽいカットを元に、見開きいっぱいに根性で一人一人丁寧に描き分けていった。

今の人にはピンと来ないかもしれないが、少子化前のマンモス校とか呼ばれていた時代だから、1クラスといっても普通に50人近くは描いたと思う。

そういえば、小学校の卒アルには先生に絵が上手だからとおだてられて、僕がクラスの皆の似顔絵を描いたページが残っている。

実際は、全員分描くのはさすがに大変で、半分くらい兄に手伝ってもらっていたのだが、期待に応えようと必死だった。

将来の夢みたいなページにも”絵の仕事をしたい”と書いてあるが、結果その頃にもてはやされた記憶にすがって、今度は中学の卒アルまで持ち出して苦労を続けているのだから、もはや呪いのようなものだと思う。

それでも、そんな根拠のない自信がこうして物事を決める勇気や前に進む力を与えていると考えれば、何もないよりはマシなのかもと自分を納得させ、力を振り絞って提出する作品を完成させた。

#創作大賞2023

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