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[3Dプリンター改造]KP3S(Fraxinus 1st gen)の電源ユニットの分解

前回のこのマガジンの記事「Fraxinusを作ってみた 」でベースにした Kingroon KP3S の電源ユニットですが、作業部屋の室温が10℃を下回ったあたりから電源ユニットが起動しなくなりました。

発端

発端は2023年の正月も明けた1/17のこのツイートです。色々と忙しくしばらく動かしていなかった Fraxinusを久々に使うために電源をいれたところ、全く起動しません(ファンすら回らない)でした。
暖房が効いた部屋に持ってきて10分くらい放置したら無事電源が起動しました。

ネットで調べると同じ症状に悩んでいるKP3Sユーザーが何人もいることがわかりました。
周囲温度が低い(室温は実測10℃)ことが原因とはいえ、通常は暖房を入れていない北海道の自宅作業部屋では冬場は非常に不便ですので、改善の可能性はないか電源ユニットを分解して回路構成を確認してみます。

プリント基板を取り出す

電源ユニットの外装ケースはビスで固定されていますので、これらをドライバで外してケースから取り出します。
AC入力側のドライブトランジスタと24V出力側のトランジスタはシリコーンシートを挟んでアルミの放熱板(ケースにビスで共締め)に固定されていますので、このビスも外して基板を取り出します。

電源基板(部品面)
電源基板(パターン面)

プリント基板は電源回路では一般的なガラスコンポジット(CEM-3)の片面基板です。パターン面を見ると左半分及び右下半分が1次側(AC入力側)のパターンとかなりの面積を占めています。
 右上半分は2次側(24V出力側)ですが、大電流を流すためにレジストがはがされ、ハンダが盛られています。電源基板としては標準的な基板パターンとなっています。

電源のコントローラICは1次側に実装されています。温度が高くなるということもあり、フィルムコンデンサが多数使用されています。(セラミックコンデンサは温度での容量変化がフィルムコンデンサに比べて大きい)

コントローラIC周辺

電源トランスのドライブ用トランジスタは2段になっています。トランジスタをコントローラからドライブするために、専用のドライブトランスがあります。

ドライブトランジスタ周辺

回路構成

せっかく分解したので、回路図を作成しました。
 ※大きなサイズのものはこちら

回路図

電源のドライブトランジスタは2個をトーテムポール構成で使っています。ネットで調べるとトーテムポール接続でのPFC(力率改善)動作例がありますが、ほぼこの構成になっています。

東芝のアクティブPFCアプリケーションノートより
KP3Sの電源トランス部分の抜粋

主な部品の仕様

突入電流防止用NTCサーミスタ 「5D15」

NTCサーミスタ

電源をONした時に、AC平滑用のコンデンサに大きな突入電流が流れるのを防止するサーミスタです。
温度が上昇すると抵抗値が下がる「負の温度特性(Negative Temperature Coefficient」なのでNTCサーミスタと呼びます。
タイプは「5D15(直径15mm/5Ω@25℃)」、安全規格(TÜV)のマークがついています。

NTCサーミスタのマーキングルール
NTCサーミスタの特性例(参考)

2次側(24V出力側)整流ダイオード 「MBR30200PT」

整流ダイオード

2次側の整流ダイオードは定格30Aの2個入りショットキーバリアダイオード「MBR30200PT」です。
同じ型番のものが復数の会社より販売されています。
データシートはThinki Semiconductor という会社のものが以下より入手できます。

https://datasheetspdf.com/pdf-file/1125345/ThinkiSemiconductor/MBR30200PT/1

1次側(AC入力側)ドライブトランジスタ 「W13009」

ドライブトランジスタ

1次側のドライブトランジスタは定格400V/12AのNPNパワートランジスタ「W13009」です。
これも同じ型番のものが復数の会社より販売されています。
データシートはSTMicroelectronicsのものが以下より入手できます。

https://datasheetspdf.com/pdf-file/835946/STMicroelectronics/W13009/1

電源コントローラIC 「KA7500B」

電源コントローラIC

 電源コントローラICは杭州百隆电子有限公司(iCF HANGZHOU BOON Electronics co.,ltd.)のSMPS( Switched Mode Power Supply)コントローラ「KA7500B」です。
これも同じ型番のものが復数より販売されています。
データシートはiCFのものは見つからなかったのですが、オリジナルとおもわれるFairchild(OnSemi)のものが以下より入手できます。

https://html.alldatasheet.jp/html-pdf/53227/FAIRCHILD/KA7500BD/407/1/KA7500BD.html

KA7500Bの内部ブロック図(データシートより抜粋)

低温起動特性改善案 (現状では未解決)

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