言葉を綴るのが好きでした。 今ではただの趣味になってしまいましたが、時折思いを乗せた言…

言葉を綴るのが好きでした。 今ではただの趣味になってしまいましたが、時折思いを乗せた言葉を投稿してみたいと思います。

マガジン

  • 『 言葉の無い世界 』

    主人公のライは毎日同じ夢を見る。 十七歳の春からもう五年も続いているのだ。 夢の世界では、現実と同じ様に時間の概念があり時が進む。 ライはその世界を『ゼロ』と呼んだ。

最近の記事

夜は考える

ご飯を済ませ、風呂も上がった。 後は寝るだけなのに、妙に寝つきが悪い日がある。 右を向いて寝ていると、肩が痛くなり、また反対と繰り返している。 寝れない時間が続くと、段々と寂しさが募ってくる。 ふらっと旅に出るように過去の思い出や、将来の不安や希望そんなものを覗きながら突然明日が来るのか怖くなる。 きっと今日は明日が来る。でもいつかは明日が来なくなる日が来る。それがとてつもなく怖い時がある。そんな不安と戦いながら音楽を聞いたり、お笑いのテレビを見たり何でもない時間を過ごす。

    • ワインレッド

      今、私は最寄り駅から歩いている。 いつもは十分で着く道を、既に十五分ほど歩いている。 全く真っ直ぐ歩けていない。 少し寄り道したい気持ちと戦いながら一軒目の酔いを覚ましている。 帰りながらいろいろな遊びをしている。 まずは電柱の数を数えている。二十本くらいで飽きた。 信号が変わる瞬間を当ててみたり、大体反対の信号が赤になって三秒後だから面白くなかった。 次は何しようかなと思いながら、前からおじさんが歩いてきた。 今時珍しいカセットテープで音楽を聴いている。 あれは玉置浩

      • 月と私

        寝支度を済ませて、ベッドに腰掛けて呆けていた。 いつもは見ないTVを今日は少しだけ見ていた。 久しぶりに見るTVに映る人たちはみんな知らない人たちだった。 暇を潰すために見始めたTVが余計に退屈にさせた。 テレビを消して、煙草を吸いに外に出てみたい。 さっきTVで春の兆しが、と言っていたがまだまだ冬だ。 ここに冬がある。 そう裸足で履いたサンダルから見える私の足が叫んでいる。 寒い足を暖かくしてやろうと歩き始めて通る道。 いつもの通勤には使わない一つ裏の道。 私はここが大

        • ランドリー

          私は東京に住む何でもないサラリーマンだ。 新卒で事務仕事をする会社に入り、今期で三年目だ。 私の家は決して広くは無い。所謂普通のワンルームだ。 それもあって私は洗濯機を家に置かずに、コインランドリーで洗濯は済ませている。 知人に話すと面倒くさくない?と聞かれるが意外と好きなのだ。 家で作業をする日などに、過集中気味な自分への外に出る理由にもなるし、夜だと缶ビールを飲みながら小説を読んだりしている。 今は辞めてしまったが、コインランドリーの前に置かれた赤い灰皿と並んで煙草を

        夜は考える

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        • 『 言葉の無い世界 』
          1本

        記事

          また朝が来る。

          生まれたから、何かをしなくちゃいけないみたいな そんな世界がしんどい。 何者でもない私を、私は嫌いになれない。 今日も朝が億劫だった。 今日で私は24歳になる。 何も変わらない日常の中で、アラームすら鳴らない静かなアパートの一室で迎えることになるだろう。 メッセージ音が鳴った。 数週間ぶりに父からのメールだった。 目を覚まして、携帯を手に取った。 なんて事のないメールだった。 陽、元気にしているか? 誕生日おめでとう。 もう24歳になる、そろそろ何か始めたらどうだ。 そ

          また朝が来る。

          街灯の下で

          昔ながらの日本家屋や新しく建ったアパート、屋根のない月極駐車場が並ぶ長い一本道。 端から端まで歩くと成人した私の足でも十五分はかかる。 その一本道の真ん中らへんにある小さなアパートの三階の角部屋が私の部屋だ。 私は小説家になりたいと、東北から出てきて四年が経つが、未だに収入の十割がコンビニのバイト代が占めている。 これでは駄目だと最近は筆を持つことを増やしたが、頭にあるものを文字に起こしても無いものは出てこない。 きっと私には才能がないのだろう。 そう思い、日で焼け色褪せ

          街灯の下で

          濁った緑色の窓から。

          コロナ禍の日本で、 私は23歳のサラリーマンをしている。 緊急事態宣言の際も、都内の中心地にあるオフィスへ向かい、20時まで働いていなければならなかった平社員だ。 そんな私が楽しみなのが、環状線に乗り通勤する際に見える東京の景色だ。 それも濁った緑色の窓から見える東京。 私は熊本県から上京し、今年で2年目の社会人となる。子供の頃からTVや雑誌で見ていた東京は、まさに、電車の窓から見える景色そのものだった。 駅を出てから見上げる街並みは、灰色の物々しいビルに囲まれた本当

          濁った緑色の窓から。

          小さな恋の話

          小学生の頃、僕はサッカーを習っていた。 放課後に練習場に行き、ボールに触り、年に数回試合がある。 当時は、運動が得意な人はクラスでもスーパースターになれた。 サッカーの授業で、ゴールなんて決めた日にはキャーと声が聞こえるほどだ。 だが、それは同じクラスの大和の話で、僕の話ではなかった。 僕も同じクラブに通っているが、リフティングすら10回も出来ないほど、運動音痴だった。 周りのみんなには、何故クラブに生き続けているのかが分からないと言われていた。 僕も何故だかわからなかっ

          小さな恋の話