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スナハラゴミムシ飼育実験途中経過報告


出張中かつ作業中のため、本日は手短に報告を。


タニシを捕食するスナハラゴミムシ


先日、タニシ食の絶滅危惧ゴミムシであるスナハラゴミムシが羽化をした。
昨年は繁殖に挑戦した時期が遅かったこともあって1匹しか羽化に成功しなかったが、今年は複数匹が蛹化及び終齢に至っている。
シーズン終了までには10匹以上の羽化を見れる可能性もある。

スナハラゴミムシ・テネラル個体
スナハラゴミムシ終齢幼虫(前蛹)

スナハラ幼虫は全ての齢で脚を使った歩行を行うが、捕食後に著しく膨張した状態及び前蛹ではイモムシのような蠕動ぜんどうによる移動が基本となる。


スナハラ幼虫のほとんどはタニシを与える事で加齢した。野外においても主要な餌の一つであると考えられる。

飼育下ではタニシの蓋を取り除く、もしくは蓋をピンセットや釘、キリで貫く事で幼虫の捕食の補助を行った。
これにより1齢幼虫の生存率が向上し、半数以上が加齢に至る。

幼虫は稚貝サイズの蓋を剥がす能力を持っている可能性もあるが、飼育容器内で発見した際にはすでに衰弱を伴った飢餓状態であることも多いため、生存率を高めるためには即座にタニシの身を捕食させる必要がある。

蓋を取り除いたタニシを捕食する
スナハラゴミムシ幼虫

幼虫も成虫と同じくタニシを主食とする事がほぼ確実であるという考えは以前から持っていたが、水中へ潜る貝、ましてや頑強な蓋を持つタニシを主食とする事への疑問点が多かった。

そこで、ここ1ヶ月は
・『幼虫は水中で活動を行えるか否か』
・『蓋を持たず、ある程度陸地へと進出しやすいサカマキガイを捕食して加齢できるか』
・『湿地帯が減水した際に陸上に取り残されたタニシの死骸を捕食する事で加齢できるか』

を中心に試す事にしていた。

途中経過の報告としては

・水中へ潜る事はほとんど行わず、水際で溺死してしまう場合も多い。水中での狩りは考え難い。

・2例だけサカマキガイの捕食を行ったケースもあるが、そのうちの1個体は脱皮不全により死亡した。
今後、検証を重ねてサカマキガイが餌として不適であるか否かをさらに調査したい。

・炎天下の陸上に1日放置し熱死させたヒメタニシ成貝をそのまま与えた場合、蓋が閉じ切って亡くなった個体を1齢幼虫が捕食する事は叶わなかったが、自己消化が進んで身が緩み、蓋に隙間が生まれた貝の捕食を行う事はできた。
死亡後数日が経過した貝を捕食する事での加齢も確認できたが、死亡後1週間以上が経過し腐敗臭が漂うようになったタニシを好んで捕食しようとする様子は見られなかった。

というデータが得られた。
幼虫は軽度のスカベンジャー要素を持つ生態なのかもしれない。

また、成虫の飼育容器内で食べ残されていたタニシの破片に1齢幼虫が食いついている様子も見られたので、野外においても同様の捕食を行っている場合もあると考えられる。




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