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アオヘリアオゴミムシとスナハラゴミムシの同所生息についての所感


絶滅危惧IA類アオヘリアオゴミムシは、絶滅危惧II類のスナハラゴミムシが生息しているポイントでの発見例が多いという報告がある。
自分が発見したポイントの大半も両種が生息していた。

しかし、アオヘリアオがスナハラと同所生息している確率は高いとはいえ、スナハラ生息が見られないポイントにおいてもアオヘリアオの密度が高い例はいくつかある。今まで発見した8つのポイントの中でも3箇所ではスナハラを確認できなかった。
単純にスナハラを発見できなかったという訳ではなく、それらの場所ではタニシの生息が一切確認できなかった。
そのため、それを主要な餌とするスナハラの生息もまず期待できないと考える。

スナハラの生息がアオヘリアオの繁殖に寄与している可能性を第一に考えたが、アオヘリアオ1齢幼虫はスナハラ1齢よりも遥かに華奢であり、少なくとも主要な餌として利用する事は難しいだろう。
頭部を潰したスナハラ幼虫をアオヘリアオ幼虫に何度か与えても、同種幼虫亡骸を与えた際の共食いと同じような反応を見せ、共食いの際と同じく栄養が足りずすぐに亡くなってしまった。
その際は羽化に至らない例ではあったが、成長率に関しては、後述する飼育繁殖論文のようにコガネムシ科幼虫を与えた時の方が成績が良かった。

繁殖に寄与するというよりは、スナハラが好む素掘り水路等のエコトーン条件をアオヘリアオを含む多くのゴミムシも同様に好むと考える方が辻褄が合うのかもしれない。素掘り水路の存在は、ほとんどのポイントでアオヘリアオの密度に影響している。

また、それらの地域はかつて昆虫にとって毒性が強い農薬が使われた時代であってもそれをやり過ごす事が可能であるような環境の例が多かった。
「なぜスナハラと同所生息しているか」ではなく「なぜスナハラがそこにいるか」を基準に考えるべきなのかもしれないと感じたポイントも多々ある。


度々紹介しているが、スナハラゴミムシに関しては以下リンク先の記事が詳しい。
「生態に関してはほぼ不明」との記述があるが、後に記事の筆者が『月刊むし』にて生態を報告している。

詳細な生態に関しては月刊むしNo.618
『絶滅危惧種スナハラゴミムシの野外における餌メニュー 〜特にタニシへの顕著な行動について〜』
小松貴

を参照にしていただきたい。

また、アオヘリアオゴミムシに関しては同じく月刊むしNo.616
『2019〜2021年に関東地方で採集されたアオヘリアオゴミムシの記録』
中村涼・源河正明・谷島昴・法師人響・西田恒介・平井文彦
を、アオヘリアオの飼育繁殖に関しては

日本甲虫学会和文誌「さやばね」ニューシリーズNo. 20
『飼育下におけるアオヘリアオゴミムシの繁殖生態』
渡部晃平・福富宏和・須田将崇


参照にしていただきたい。

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