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スナハラゴミムシの産卵及び孵化を確認


2023/08/07
絶滅危惧Ⅱ類であるスナハラゴミムシが何匹も孵化していた。
数日前に成虫が卵のような物を捕食している様子が見られたので隔離した所だった。

孵化直前のスナハラゴミムシ卵
幼虫の複眼と大顎が目立つ

今回は忙しかったので軽く撮影した程度だったが、スナハラゴミムシの卵が公開されるのは恐らくこれが初めてかもしれない。
ゴミムシの卵はどれもほとんど同じような風貌とはいえ、もう少ししっかりと撮影すべきだったか。

過去にiPhoneで撮影した低解像度の画像しか持ち合わせておらず恐縮だが、幼虫は以下のような風貌をしている。

スナハラゴミムシ1齢幼虫
2022年撮影

スナハラ幼虫の大顎が孵化前でもここまで目立つ物だという知見を得られたのは運が良かった。
スナハラ幼虫は成虫と同じくタニシを主食にしていると考えられており、その大顎も食性に特化した物なのだろう。

昆虫食であるセアカオサムシの孵化直後〜幼虫は以下の通りだが、大顎はあまり目立たない。

セアカオサムシ卵
孵化直前のセアカオサムシ卵
セアカオサムシ1齢幼虫




飼育容器の床材には湿らせた珪砂を使用。
本来は水田や河川敷等、スナハラの専食対象と思われるタニシが生息する環境に存在する泥を使用するべきなのだろうが、自分は基本的にゴミムシの繁殖においては産卵に適さない床材を使用した上で飼育容器内に『泥を詰めたタッパー』を設置する事で卵の見落としを防ぎつつ回収を簡略化している。

地中で隣り合うように産み付けられていた
スナハラゴミムシの卵


アオヘリアオゴミムシは卵を包んだ泥(マッドセル)をタッパーの縁やタッパー外から持ち出して珪砂上に放置していたが、スナハラゴミムシは全ての卵を地中へと産み付けていた。
隣り合うようにして並んだ卵も見受けられたが、スナハラゴミムシが地中産卵であるがどうかは不明。

今回は繁殖個体及び採集個体が全てメスのみであったため、半ば繁殖を諦め気味に設置したタッパーを長期間放置してしまった事に加えて、成虫は珪砂よりもタッパー内の泥を好んで隠れ家としていた。
そのため、形成したマッドセルを泥上に置いても坑道内に落下して埋まってしまった可能性も否定できない。

回収したスナハラゴミムシ卵

昨年、スナハラゴミムシの詳細な生態を報告した小松貴氏の報文を参考に1齢幼虫にもタニシを与えた事で無事に飼育繁殖の成功に至ったが、サンプル数が少なかったために『無傷のタニシ生体を与えた際に蓋を剥がす事は可能なのか』『幼虫は成虫と同じように水際のタニシを引き摺り出して陸上で捕食を行うのか』という事を詳しく調べる事ができなかった。

その中で一度だけ、数日間稚貝の蓋に張り付いた後に捕食を成功させた幼虫を確認したが、生体の蓋を剥がした捕食なのか、陸上で数日を過ごしたタニシが死んだ事によって蓋が弛み結果的に捕食が成功したのかは判別できなかった。

蓋を取り除いたタニシ稚貝を捕食する1齢幼虫
2023/08/07撮影


スナハラ幼虫は減水時に陸地に取り残されたタニシ及びその死骸を主に捕食する生態を持つのではないかと個人的に予想している。



ちなみに、スナハラゴミムシに関しての解説は度々紹介しているように、以下リンク先の小松貴氏の記事が詳しい。

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