見出し画像

2023/03/22 採集記録

2023/03/23
(採集記録詳細を追記しました)

21時55分。
帰宅が遅れそうなので、一旦暫定的に更新。

結論から言うと、ずっと探し求めていた地元県産セアカオサムシの完全自力開拓に成功しました。

恐らく日付は変わってしまいますが、後で追記いたします。






2023/03/22
19:25

仕事を終え、しばらく運転をして辿り着いたそのポイントに来るのは2回目となる。
前回は低気温もあってセアカオサムシに出会えなかったが、ここには必ず居るはずと目論んで再び訪れた。
気温と湿度がある程度高い好条件のこの日にこのポイントの傾向を観察したかった。


19:20
まず目に入ったのは、そのポイントへと向かう道中で見つけたオカダンゴムシ。
舗装された道と草地の狭間に集中している理由はなんだろうか。石からカルシウムを摂る生態は知られているが…。
ともあれ、草地の湿り気を見てこの日は好条件の湿度である事を確信した。
セアカオサムシには出会えずとも、何かしらの発見はあるだろうと。


19:46
次に出会ったのはアオゴミムシ類。
やたら見かけるので完全にアオゴミムシかと思っていたが、これはもしかしてセアカオサムシに似た環境を好むアカガネアオゴミムシだろうか。
というかかなり近い気がする。
この虫は絶妙な赤銅あかがね色をしており、ライトに照らされたその姿に一瞬だけセアカオサムシの影を見てしまう。
毎度「あ!??」と思ってしまう。


19:46


ついに出会った。
正真正銘の、完全自力開拓、地元県産の、セアカオサムシ。
特殊な生息環境を必要とし、多くの都道府県で絶滅危惧種となっているために易々と拝めるものではない。環境省カテゴリでは準絶滅危惧(NT)となっている。
ただし、よく知るマニアほどこの説明には疑問を覚えるかもしれない。

オサムシやゴミムシを始めたばかりの5年前ほど前だろうか。
自分はこの虫に憧れて、それ以降とある有名産地である湿地帯に何度も通った。
それでも片手で数えるほどしか赴いてはいないが、有名産地でこの虫に出会う度に「いつか産地を自力開拓したい」と願うようになり、そのうち「自力開拓できて初めてスタートラインに立てる」とさえ思うようになっていった。


その後は出会った生き物がセアカオサムシ以上に特殊な環境を要求する種類であったため、少々割愛する。

21:22
タヌキの溜め糞を見かける度にその中にセアカオサムシの鞘翅を探し、タヌキの物音が聞こえる度に「見つけたら教えてね」と声をかけていた最中、草地でキラリと光る赤銅を確認した。


交尾中のセアカオサムシだ。
初めて出会った地元県産セアカオサムシの次は交尾中の個体達。感慨深すぎる。
驚きの声を上げてしまった。

しかも、セアカオサムシは地中から何かを掘り出した形跡の横で、とある生物を捕食していた。
真っ先に「もしや…」と特定の生物を思い浮かべ、セアカオサムシを捕らえるよりも先にその餌を確保した。餌は何度も咀嚼され土に塗れて、何が何だか分からない。
しかし、帰宅後に餌の残滓を洗浄してエタノールに漬けた事で、その部位を細かく確認する事ができ、正体が想像通りのものだったと判明した。
かつてフォロワーが上げていた画像の餌と同じだ。
もしかすると、Twitter上でセアカオサムシがその餌を捕食するシーンを観察した者は自分を含めて5人もいないのかもしれない。
恐らくはその人達もそれに関する研究や掘り下げをしている最中であると思われるので、今は大っぴらな考察をあれこれ書く事はできないが、数年以内にはさらに有名な説になる可能性がある。


特に有名産地において、セアカオサムシの採集は草地横のアスファルトを歩きながらその上に出てきた個体を捕獲するものというのが一般的に思える。
本来の生息地である草地の中を探す事でも採集は行えるが、時間のコストパフォーマンスが非常に悪く、それを続けているうちにこの虫が最も活動する時間帯が過ぎてしまったり、目を酷使する可能性が高い。
そのため、有名産地ではアスファルトをとにかく歩いてその上の虫を探す事に注力した方が広範囲の捜索を行えるので、結果的に遭遇率が高くなる。…のだと自分は考える。最適化に近い採集方法だろう。
(それでも昆虫の影に似たヨシ焼きの炭の量が凄まじいため、この方法も目を酷使するものではあるが。)

しかし、草地内を捜索する事でしか上記画像のような本来の(と思われる)捕食生態は確認できないだろう。
セアカオサムシを飼育すれば分かるが、これは明らかに餌生物による掘削跡ではなく、セアカオサムシによるものだ。産卵痕に酷似している。
最適化された採集方法がこの虫の生態解明を遅らせてしまった要因の一つなのかもしれない。


23:17
気温が著しく低下してきたため、撤退を考え始めたところで4個体目のセアカオサムシを発見。
目も疲れてきた所だったので、裸地部分に出ていなければ見つからなかっただろう。


23:21
この日最後のセアカオサムシとなる5個体目を発見。


ルッキング採集中の発見は、脳内麻薬の分泌により回復ポイントのように機能する。
今回の採集においては、セアカオサムシを発見する度にマラソンの給水所のように疲労が回復していったような感覚があった。

そうして要所要所で回復を行ったためか、セアカオサムシの生息環境とは離れた場所の傾向を下見する余裕が生まれ、いつのまにか時刻は午前0時を過ぎていた。
4時間半も巡っていた実感は無かった。ただただ楽しかった。


しかし、その経過時間を認識すると途端に首や背筋の疲れが生まれたので、少し休憩した後に帰宅する事にした。
帰宅がてらによった林道のポイントではアオオサムシを発見し、そこでペアが揃った。
ちなみに今年繁殖を行う余裕は無さそうだ。

アオオサムシとセアカオサムシ



今回の採集は90点以上をつけても良いかもしれない。


春を待ち望み、ここに生息していると目論んだポイントで、狙った条件の日にここまでの成果を挙げ夢を叶えられたのなら冥利に尽きるし、万々歳だろう。

次の記事では帰宅後の生体メンテナンスと感想を書く。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?