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だから自治体職員は面白い!

≪おごおりト−ク24≫

今回はとりとめのない話ですので、お気軽にお付き合いください。

突然ですが、自治体職員の皆さんにお尋ねします。日頃から自治体職員の仕事って面白いなーと感じている方、自分の仕事にやりがいと魅力を感じている方はどれぐらいおられますかー?

一言で「面白い」と言っても、あくまで仕事なのでいつも楽しいことばかりあるわけではありません。辛いことや苦しいこともあって相対的に楽しいことを楽しいと感じることができるわけであって、楽しいことだけの仕事は実は全く面白くないと断言します。

地方自治体の仕事は、市民や職員との関わりの中で直接人と接する仕事なので、当然にトラブルあり、クレームあり、苦しいことや辛いこと、不安や心配事、時には「辞めてしまいたい」とさえ思うこともあるかもしれません。しかし一方では、嬉しいことや楽しいこと、明日も頑張ろうと思える出来事などもあって、それらを総じてみれば…という話です。

私たち自治体職員は、常に自分の立場を守ることや自分の平穏安泰のことだけを考えて仕事をしているわけではありません。どんな時に仕事にやりがいを感じるかというのは人によってそれぞれ違うかもしれませんが、その中で一番に求めているのは、自分の仕事が市民の幸せにつながるという実感であり、その手応えこそが私たち自治体職員の仕事のやりがいや面白さにつながるものだと思います。

自治体の仕事は組織的にも分業制で分担されており、決して職員一人の力だけで完結できるものではありません。例えば、政策立案は各担当課、総合計画は企画課、予算編成は財政課、予算議決は議会などに分担されています。
また、地域のまちづくりの課題になれば、担当課だけでなく組織横断的な連携体制が必要であったり、地域の住民や民間事業者、ボランティアなど様々な人たちの力を借りながら協働で取り組んでいくことになります。だからこそ、一つの成果が生まれたときには、大きな達成感と喜びを職場の仲間や地域の皆さんと一緒に共有することができるのだと思いますし、それが自治体職員の醍醐味だといえます。

自治体職員としてある程度経験を積んでいくと、自分がどういった仕事が得意で、どの分野に興味や関心があるのか、自分自身の得手不得手や嗜好性(好き嫌い)も自覚できるようになってきます。ちなみに私は地味で地道な仕事が大好きです(笑)。
個人的な“好き嫌い”で仕事を選ぶことに抵抗がある方もおられるかもしれませんが、私の経験から言えば、その方がより楽しく、モチベーションをもって質の高い仕事ができると思っています。自分の一番“好きな仕事”が「市民ニーズへの対応や地域課題の解決によって住民満足度を向上させること」であれば何の問題もありません。

自治体職員の仕事は、ざっくり言ってしまえば、総合振興計画基本構想(10年)、基本計画(5年)、実施計画(3年ローリング)や各個別計画等などに基づいて、分野ごとの政策目標の実現に向けて毎年各施策を計画的に実施していくことの繰り返しです。しかし、全ての事務事業が詳細にわたって計画に記載されているわけでもありません。
それゆえ、計画に定められた仕事を粛々と取り組んでいくことも“あり”なのですが、すでに決められた既定の計画にとらわれずに、自分の仕事を通して見えてくるまちづくりの課題に対して、今の自治体の現状や市民のニーズ、それに関わる人達の思いなどを踏まえて自分なりに実現してみたい夢やビジョン(目指すべき姿や将来像)を思い描いてみることも“あり”だと思うのです。

さらには、自分の夢やビジョンを漠然としたものではなく、自分の中でできる限り具現化させていく作業も面白いかもしれません。それは、自分なりのビジョンを実現可能性のある具体的なスキーム(課題解決に向けた具体的な方法や仕組み)として企画・立案する作業になるので、そこにはロジックモデル(その取り組みが成果につながるまでの論理的な因果関係)が必要となります。
また、自己研鑽、内部調整、合意形成、多様な主体との対話と議論、そして試行錯誤(トライ&エラー)の繰り返しでもあるため、たとえ道半ばで挫折してしまったとしても、その経験値は自分自身の成長につながる貴重な財産だと信じましょう!

それぞれのまちづくりの課題に対するアプローチは、地域自治であれ、福祉政策であれ、防災対策であれ、商業活性化であれ、計画に定められていることが必ずしも正しいとは限りません。そのあるべき姿や目指すべき方向性は社会情勢の変化とともに刻々と変化しています。また、その政策目標を達成するための手法やアイデアは無数にあって、そこには正解なんかありません。

「自分の夢やビジョンを実現する」と言うと何か壮大なドラマをイメージしてしまいますが、実はそんなことはなく、そのプロセスはすさまじく地味な作業の積み重ねであり、日々地道な作業を繰り返しているうちに、気が付けばいつの間にか自分の思い描いた夢やビジョンが課内で共有され、自治体の総合振興計画(基本計画)に位置付けられることになった、といったことも十分あり得る話だと思うのです。

私なりに大事にしたいと思っている考え方は、「答えは常に自分の中にある」ということです。「環境が良くなることに期待しない」「他人に答えを求めない」ということです。

自分なりの夢やビジョンを目指すとき、今ある現状や与えられた環境の中でどうするかということが全てです。今ある現状や環境のすべてを許容し、受け止めることからのスタートで、そこで無いものねだりをしても始まりません。
「まわりの環境が悪いからできない」「他の職員が協力してくれないからできない」というのは、「自分の夢やビジョンが実現できなくても仕方がない」と言っているのと同じで、自分自身が自分の夢を諦めているにすぎません。

しかし、だからといってまわりの環境がずっと変わらないままかというとそうではないと思うのです。「答えは常に自分の中にある」、自分自身が常に自問自答を繰り返し、自分の中に答えを求め続けることは自分自身の成長につながります。そして、その成長によってまわりの環境に変化を与える影響力を身に付けることができます。さらに、その影響力は職場環境や他の職員に対してだけでなく、地域の人達やまちづくりの方向性にも大きく影響を及ぼす力につながると思うのです。

だからこそ、自分の仕事を通じてまちづくりの夢やビジョンを語れる、自分のやりたいことを“やりたい”と言える、そんな自治体職員を目指して欲しいと思っています。

私の場合、「自治体職員の仕事が面白い」と感じている理由は何かと問われれば、それは自分のやりたいことができているから、自分の役割がそこにあると勝手に思い込んでいるから、ときに記憶力が欠如しているから、思いがけなく評価してもらうときがあるから、市民からの感謝の言葉を忘れられないから、いつも職場の皆さんが支えてくれるから、なぜか地域の人たちも協力してくれるから、など理由をあげればキリがありませんが、一番大きな理由は、「自分の関わってきた仕事が市民の幸せにつながっていると実感できるから」ということだと思います。

しかし考えてみれば、これまで私一人の力で成し遂げた仕事なんて何一つないのです。それどころか自分一人では何もできないということを痛感することばかり。課題や問題ばかりの中で、できていないことのほうが圧倒的に多いのですが、ただただ職場や地域の皆さんに迷惑をかけながら協力して一緒にやってきただけのこと、すべてはその継続にすぎません。

そんな中で、私にとって一番ありがたいと思えること、それは「同じ職場にお互いに支え合い、信頼し合える仲間がいる」ということに尽きます。そんな仲間の皆さんに感謝です。
(2022.7.28)

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