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#65 最近の組閣が地味でつまらなく目新しさもない本当の理由

まずそもそもなぜ、組閣をする必要があるのか。第何次改造内閣、などという言葉を皆様に聞いたことがあると思うんですけれども、二つ大きな理由があります。

一つは、党内不満の解消。当選回数が、例えば衆議院だと5回以上、参議院だと3回以上となった場合、これはおおむねですけれども、入閣待機組と呼ばれるようになります。

当選回数だけを見た場合、大臣になってもおかしくない年次になっている、そういう意味合いです。

そして自民党内、各派閥にそれぞれそうした入閣待機組の人たちがある一定数います。資格があると、次はこの人起用してくれるんじゃないか、そういう機運が高まりますよね。あえてそういう人たちを登用することによって、各派閥内の不満を解消していく、そして、派閥から登用されれば、派閥に属している議員たちは、ここに属してるとやはり大臣になれるんだな、そういう期待を抱いていく形になります。

いわゆる調整ですね。

配慮、そういったものをして派閥単位での支持・支援を固めていく、そういった意味合いがまずあります。

なぜ派閥の支援・支持が必要なのか

そもそも論で言えば、ではなぜその派閥の支援・支持が必要なのか。自民党総裁選で勝ち進んだ人が理論上は総理になっていくわけですけれども、派閥単位での応援が欠かせないんですね。総裁選では、どこどこの派閥が支持を固めた、誰それを支持することを固めた、などのニュースが飛び交うんですけれども、やはり派閥単位の支持の影響力は大きいんです。野田聖子さん、総理を目指していますけれども派閥ないんですね。すると、応援してくれる議員があまりない。総裁選にすら出られなくなる。

なので、派閥というものの影響力、それを考慮した上で組閣が行われていきます。

直近は失敗だが…支持率向上を狙った組閣

そしてもう一つ。支持率の向上、これは国民、有権者の支持率ですね。今回の岸田さんの内閣改造の場合は、支持率が落ちてしまっているのでこの点においては成功したとは言えないものの、初めからそこは狙ってなかったんじゃないかなという気すらします。

というのも今回の岸田さんの組閣、その中身を見てみますと、総理大臣を除いた19人の閣僚のうち14人を交代させました。ただし、留任が5人、そして再入閣が5人、合計10人いるんですね。10人が、経験者なわけです。

ではなぜこういう形をとるのかというと、元々やっていた人たちだから、失言もないし、何より身体検査も済んでいます。なので、目新しさはない、サプライズ感もない、ただし、安定感は見込まれます。失敗がほぼないと考えられるからです。何より経験者はわかっていますからね。質疑の応答の仕方ですとか、答弁の仕方がわかっています。なので、そういう人たちを、今一度入閣させる。

そうなると、先ほど話した、いわゆる党内不満の解消につながらないじゃないかと思われる方がいると思いますが、どっちを取るか。過去、失敗してきた歴史を踏まえているんですね。

小泉純一郎さんのサプライズ人事は高支持率があってこそ

小泉純一郎さんの時代はなんと発足当初80%〜90%の高い支持率がありました。彼の場合は、一本釣りだったんです。党内のそうした派閥の調整などはほぼせず、彼が1人で人事を決めていたといわれています。

それがなぜできたかというと、9割近い国民の支持があった場合、彼が決めたことに対して反対できる人はなかなかいませんよね。9割近い支持率があるということは、その彼に反旗を翻す、すなわち、9割近い国民を敵に回すことになる。

だからこそ、そこまでの彼のカリスマ性、それを発揮した上での人事が出来たんです。漏れないんですね、話が。なんせ1人で決めているから、我々マスコミに誰が大臣になるのか、そういった情報がほとんど入ってこなくなるんです。

そして、組閣当日を迎えます。官邸に次から次へと総理大臣から電話で呼び出された人たちが入っていきます。最近は、ほぼ前日までに大体誰がなるのかという情報が伝わってきてますから、私達は官邸に入ってきた人たちに対して「何々大臣に内定してる何とかさんです」みたいにリポートをつけることができるのですが、小泉さんの場合はなんせ情報が漏れてこないので、官邸に入ってくるその人を見て「今、何とかさんが入ってきました」もうこれぐらいしか言えないんですよ。何大臣になるのかすらわからない。

首相官邸

それによってサプライズ感も演出されていくわけです。「この人は何とか大臣でした」そのようなニュースで持ちきりになるわけです。

なので、まず高支持率があることによって、自分が思い描く、派閥などに一切配慮することのない、まあ多少はもちろんあるのですが、そういったものに対して気をとらわれずに組閣ができる。女性もかなりの数登用されました。そうしたことが総合的にどんどん好循環につながり、さらに支持率が高くなる。

安倍さんは真似して失敗

第一次安倍さんの場合はそれを真似して失敗したパターンです。

ちょっと失礼な言い方になりますけれども、小泉さんほどのカリスマ性がなかったわけですね。なので、小泉さんの手法を真似して自分で人事を断行してたのですが、身体検査が不十分だったりしたこともあって、不祥事がどんどん発覚していきます。

そして辞任ドミノが発生。当時、安倍さんはそういう人たちを守ろうとしたんですね。国民からしてみると、なんなんだこの人、この政治資金の使い途は何なんだ、事務所経費としてこんなものを計上してるのか、そういった批判が相次いでいるのにも関わらず守ろうとした。だから「お友達内閣」なんて揶揄されたりもして、国民の気持ちが乖離していって、やがて支持率が低下していって…という結末を迎えていくわけです。

第2次安倍内閣ではそうした反省を踏まえて、派閥均衡・配慮型の組閣をしていくことになります。

サプライズ感による一時的な高支持なんてものは、一発の不祥事で吹き飛ぶわけです。それよりも、安定を重視していこうと。

不規則発言、失言、そういったものが出ない。そして、ちゃんと中身もある
。支持率低下を招く原因となるようなことをしない人をきちんと選んでいく、さらに加えて、派閥の支持を固めていく。

きちんと均衡的に小さな派閥からも、大臣として登用していくすると、自然と自民党内が固まってきますよね。

安倍内閣を支持していれば大臣になれるんだ、と。今はこのような時代の流れになっています。

だから、時代によって組閣の仕方、そしてその起用の仕方、だいぶ変わってきてるんですね。

ぶっちゃけますとですね、やはり小泉さんの時代は、報道する側からしても、面白かったですよ。こんな人出てくるんだ!とか誰が来るのかわからないドキドキ感は、やはり報じる側にもありますからね。

今はもう事前に漏れ伝わってきます。しかも小出し小出し、ちょっとずついろんな人事情報が出てくるとサプライズ感もない。サプライズが必要かどうかと言われれば、それも使い方次第なのですが、失敗すると「辞任ドミノ」に繋がっていくような過去の例もあるので、それが良いとは言えないんですが、だからこのような地味な形になっていく。

ただその背景には、こういう考え、過去の教訓があるんだ、ということを知った上でニュースを見れば、永田町、そして政治、そういったものに対する興味も多少は湧くのではないか、という期待も込めてお話をさせていただきました。

(voicy 2022年8月13日配信)

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