知靖

月記

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最近の記事

「街とその不確かな壁」

村上春樹さん作、6年ぶりの長編小説ということで期待いっぱいに、発売されてすぐ書店で購入しました。 ですが買ったものの、読み終えるまでに1ヶ月近く経っていました。長編を読む筋肉みたいなものが衰えたのかもしれません、、読み落とさないようにじっくり読んでいました。 この本に限らず村上春樹さんの作品は一人静かな場所で、時間をかけてゆっくりと読むのが個人的にはいいなと思います。じわじわと文章が沁み込んでくるような重厚感のある文体です。 村上ワールドとよく言われていますが、村上春樹さ

    • 「いまさら翼といわれても」

      長い春休みが明けて、新学期が始まりました。本棚を整理するために本を売って、そのお金で新たに購入した小説の2冊目が米澤穂信さんの「いまさら翼といわれても」です。 スクール×ミステリー 神山高校の古典部に所属する折木奉太郎が、学校で起きる不可解な事件や問題に巻き込まれるところから物語は始まります。 章ごとに物語が完結しているので読みやすく、それでいて読み進めていくと章と章に繋がりを感じられて面白い構成になっています。 高校生特有のシチュエーションから事件や問題が起こるのが物語

      • 「違うことをしないこと」

        本棚を整理して、定期的に本を人に譲ったり、売ったりしています。今回は25冊の本を売って、2冊の本を買いました。その1冊が吉本ばななさんのエッセイ、「違うこと」をしないことです。 「違うこと」をしないこと 好きなことをするでも、嫌いなことはしないでもなく、違うことをしないというタイトル。 社会に溢れるノイズのなかで生活していると、どうしても無理をして自分らしくないことをしてしまうことがあります。 「これは、自分じゃないな」と思うことをすると、ひどく緊張したり、居心地が悪く感じ

        • 「月の立つ林で」

          最近、時間や環境で本の好みが変化していると実感します。私の場合、映画や音楽はジャンルを広く見聞きしていますが、読書はテーマや著者、文体などの好みがその時々に変遷しているので面白いです。 3、4年前は吉本ばななさんや江國香織さん、原田マハさんなど女性作家さんの小説を多く読んでいました。しかし最近は男性作家さんの小説が多く、何か専門性を持つ主人公が大きな物事に挑むような胸が熱くなる本が好きです。 エヴェレスト南西壁を未踏ルートで登るとか、記者がネパールで起こった殺人事件の真相に迫

        「街とその不確かな壁」

          「王とサーカス」

          米澤穂信さんのミステリーの好きなところは、急降下したときに感じるような、ひやりとする感覚と「そこが繋がっていたのか、、!」と物語の後半にかけて何度も驚かされる見事な伏線回収の連続です。 東京に行く機会があり、4年前に読んだこの本を改めて読み返そうと思い携えていきました。 空き時間に読んでいたのですが、上野公園で読書をした時間がとてもよかったです。カフェの店内が混み合っていて、外の軒下にあった椅子に座って読んでいました。いつもは屋外で本を読むことがないので新鮮な気持ちで、少し

          「王とサーカス」

          「神々の山嶺」

          「それがそこにあるからさ」 イギリスの登山家、ジョージ・マロリーの言葉から始まる夢枕獏の「神々の山嶺」は、上下巻あわせて1000ページを越える読み応えのある本。長編小説は中弛みしがちですが、テンポの良いストーリー構成で、没頭して3日で読んでしまいました。 この本は1924年のエヴェレスト登山で行方不明になったジョージ・マロリーがエヴェレストの初登頂に成功したのか、という謎を解く鍵となるコダック製のフィルムカメラが起点となって、カメラマンの深町の視点で物語が進みます。 舞

          「神々の山嶺」

          「路」

          大学が春休みになり、久しぶりに小説を読もうと思い立って書店をうろうろと歩き回り、そこで立ち読みした際に惹かれて購入したのが吉田修一さんの小説、路(ルウ)です。 湿度と匂いが伝わってくる文章 情景を想像しやすく温かみのある文章が私は好きで、路を読んでいると台湾の気候や風土がひしひしと伝わってきました。私自身台湾に訪れたことはないけれど、熱帯のスコールや屋台の熱気、台湾料理の香辛料の香りなど、異国を感じさせられる文章が瑞々しくて、読んでいて心地良い。本場の台湾料理が食べてみたく

          「路」