タイヤの選び方

本記事は2021年にNPの削除されましたスレに記載した内容の転載です。
備忘録として。


はじめに

先日自家用車のタイヤを交換した。
クルマを持ってる方なら古くなったタイヤを交換した事はあるだろう。

そして、その際にタイヤ選びに頭を悩ました経験がある方も多いだろう。

もちろん私も毎回悩む。

なぜタイヤ選びが難しいのか。

そもそもタイヤはその単体の性能だけでは評価できない。ホイールに嵌めて空気を入れて車両に付け、更にはホイールアライメント(取付時の角度とそれに伴う接地面状況)に合わせて変形してから(馴染んでから)でないとわからない。

つまり付けてある程度走ってみないとわからない。

一般的なタイヤなら通常二万キロ以上は使うだろう。年間5,000キロ程度しか乗らない当方は交換頻度4年に一度だ。
コレでは様々な銘柄を比較するのは困難だ。

劣化したタイヤと新品タイヤなら、後者の方が印象がいいに決まっている。新品同士の比較なんてできない。

じゃぁどうやって選ぶのか。
ヒョーロンカの試乗記か?
価格比較サイトやみんカラのクチコミか?

実は当方この極めて主観的かつ評価軸が曖昧な情報は、あまりアテにしない。
スペックやファクトデータだけは参考にするが。

そんな自分のタイヤ選びについて、今後備忘録として書いていこうと思う。

もちろんあくまで私見なので悪しからず。

エコタイヤ

最近は低燃費タイヤ、いわゆるエコタイヤってのが主流だ。転がり抵抗を減らしたタイヤだ。

エコタイヤって、どうやって転がり抵抗を減らしているのか。

その前にタイヤはどうやって路面を掴んでいるのか、グリップしているかを理解しておく必要がある。

タイヤのゴムが路面を掴むには大きく2つの要素がある。

1つはゴムの粘着力。アドヒージョンとも言われるが、ゴムの粘着力を使って路面に貼り付かせる。

もう1つはゴムの弾性による変形だ。
ご存知の様にゴムは変形し。その後元の形に戻ろうとする。この変形した時に路面を掴む。

サーキットを走るレースシーンを除けば、一般道路では後者の弾性によるグリップが支配的だ。

ここでタイヤの転がり抵抗を減らすにはどうするのが良いかを考えると話は単純だ。

常に真円で変形しなければ良い。

鉄道はその輸送エネルギー効率が非常良い。転がり抵抗は自動車のゴムタイヤと比べて桁が2つ位違う。
なぜなら変形しない鋼鉄の車輪が常にフラットな線路に乗っているのだから。

しかし、鉄道は車輪と線路の摩擦係数は非常に低い。グリップなんてしてない。急ブレーキ掛けてもなかなか止まらないのはご存知の通り。

転がり抵抗低減とグリップ能力はトレードオフなのだ。

ならばゴムの温度依存性をうまく利用しようって話になる。

平常時は低温でなるべく変形を減らしたい。
しかし、アツい走りの時にはタイヤを温め、高温時は変形させてグリップを確保したい。

コレがエコタイヤの基本。

こう聞くとうまく両立できそうな気がするが、1番の問題は路面が濡れてる場合。

豪雨で路面が常に濡れていると、タイヤの温度が上がりにくく、グリップが出ない。

そう、エコタイヤの基本特性はウェット性能が低いのだ。

コレがあるもんだから、最近はラベリング表示され、各タイヤのウェット性能が公開されるようになった。

ただ、このラベリングを鵜呑みにしてはいけない。タイヤには様々な薬剤及びシリカを配合して仕上げられる。コレで狙った点をピンポイントでチューニングする事もできる。

本来ならタイヤ性能の温度依存性は低くして、常に一定のグリップ能力を持たせるべきなのだ。

それを否定した。

乱暴に言えば安全性と引き換えに省燃費を実現。

コレがエコタイヤなのである。

更にヤヤコシイのは、エコと謳いながら普通のタイヤをエコ側に寄せたもの、エコタイヤを普通のタイヤに寄せたものの2種がある。

前者ならタイヤの性能はある程度確保できてると判断できるが、後者は願い下げだ。そんなのは避けたい。

一つ言えるのは、速度レンジが低いエコタイヤは避けるべきだろう。

タイヤのサイズ、性能はタイヤに書かれている。

例えば当方自家用車のタイヤ、ミシュランプライマシー4は以下の様に書かれている。

225/55R17 101W EXTRA LOAD(XLとも呼ばれる)

225はタイヤ幅225mm相当。
55は扁平率。
17はホイール径。

まぁサイズはいいだろう。ホイールサイズを変更しないなら純正サイズを選ぶのが普通だ。

重要なのはその後に続く数字だ。

101はロード(荷重)インデックス。

タイヤはその空気圧によって耐荷重が決まっている。同じ空気圧ならエアボリュームが大きい方が耐荷重は大きい。

例えば同じ200kPaの空気圧なら、エアボリュームの大きいタイヤの方が耐荷重が高い。要は硬いわけだ。
ロードインデックスの数字は更にヤヤコシイので後述する。

続くWは速度レンジ。
このタイヤの耐えうる最高速度を示している。

速度レンジは時速(km/h)で決まっており、下からQ(160)、S(180)、H(210)、V(240)、W(270)、Y(300)だ。

日本車は通常180km/hでリミッターが効くし、そこまで速度出さないからなんでもいい、と言うのは大きな間違い。

速度レンジが上がるという事はより高精度の真円じゃ無いと成立しない。要はこのレンジが高い程高級で普段のタイヤ性能に大きく影響するのだ。

速度レンジQは大抵スタッドレスや特殊用途なので除外するとして、コンパクトカーに多いのはSだ。そしてそれらの多くはスペシャルエコタイヤか安価なタイヤだ。

例えばトヨタヤリス標準タイヤの多くはS(180)のエコピアだ。
コレが上級のZグレードやオプションのアルミホイールを装着するとH(210)のエコピアになる。

ホンダフィット通常グレードHOMEはH(210)のダンロップエナセーブ、上級グレードはV(240)のヨコハマブルーアースだ。
(試乗時実車確認)

さて、走りを重視してるのはどちらだろうか。

エクストラロード

そして更にヤヤコシイのは、その後のEXTRA LOAD(XL規格)表記だ。

コレは高荷重構造タイヤを示している。
要は通常よりも高荷重に耐えられるタイヤですよ、と。

そう聞くと、XLにすれば車重の重いクルマでもOKな訳ね、余裕があっていいねって誰もが思う。

しかし、実は高荷重タイヤは相応の空気圧でないと効果は無い。

それどころか同じ空気圧だとXLタイヤの耐荷重は減少するって事は意外に知られてない。

なんでそんな事になるのか。

実は耐荷重のロードインデックス指標が変わるのだ。

以下のサイトを見ていただきたい。
https://tire.bridgestone.co.jp/about/tire-size/pressure-list/

「①同サイズでXL規格のタイヤを装着する場合」
で解説されているが、215/45R17の場合、通常タイヤなら空気圧210kPaで、耐荷重505kgだ。

コレが同サイズのXLだと、同じ210kPaで耐荷重475kgに低下する。

は?って思いません?

この例だとXLタイヤは空気圧230kPaに上げないと通常タイヤと同等の耐荷重にならない。

ロードインデックスの規格が違うのだ。
通常タイヤはJATMA、XLタイヤはETRTO規格だ。
それに合わせて空気圧を変更しなければならない。

因みに多くのクルマで運転席ドア付近に記載されている適正空気圧は通常のJATMA規格での空気圧しか記載されてない。
出荷時のタイヤがそれだから当然。

XLタイヤ使用時の空気圧は自分で考える必要がある。

そろそろタイヤ選びに吐き気がしてきませんか?

扁平率についての誤解

前述した様に扁平率(例えばタイヤサイズ225/55R17の55って表記のとこ)とは、タイヤ幅に対してサイドの部分の割合(%)を示す。

タイヤ幅やホイール径が同一であると仮定すると。

扁平率が高ければ(60や70など)、サイドのタイヤ部分が大きくなり、空気量が増える。
扁平率が低ければ(35や45など)サイドのタイヤ部分が小さくなり、空気量が減る。

一般に、
扁平率の高い(60や70)タイヤの方が柔らかく乗り心地良い
扁平率の低い(35や45)タイヤの方が硬くなり乗り心地が悪い
と言われる。

ホントか?

タイヤは空気の入った袋、風船みたいなモノだ。

密閉した空間での圧力はどこでも一定。
局部的な圧力が同じなら、圧力が作用する面積が大きければ応力は高くなる。面の応力は圧力X面積だ。

内部の空気圧が同じなら作用する面積、つまり体積が大きい、空気量が多い方が風船は硬くなる。

中学理科で習うパスカルの定理だ。

ならば扁平率が高く空気量の多い(サイドの高さが高い60や70やそれ以上)タイヤが硬くなる事はわかるだろう。
相対的に扁平率が低く空気量の少ない35だの45タイヤは柔らかくなる。

あれ?

10tトラックのタイヤを見りゃわかる。見た目ペラペラのタイヤなんて履いてない。
タイヤの耐荷重の高さ、要は硬い必要がある。

空気を入れる事で初めてその性能を発揮するタイヤは、その荷重を支える為に空気量は重要なのだ。

しかし、なんでみんな盲目的に中学生に笑われる様な解釈をするのか。

それはタイヤ特性のチューニングにある。

元来タイヤのゴムは空気を入れる風船の様なモノだ。

しかし、路面に接してる部分とサイド部分はゴムの厚さや構造が異なる。

グリップやステアリングレスポンスを重視するなら路面に接してるトレッド面は硬くしたい。

更にレスポンスを重視するならサイドもかためておきたい。
乗り心地を犠牲にしても。

スポーツカーにはそう言ったタイヤが装着される。

スポーツカーにはそのカッコ良さ、高性能を連想させるホイール大きく扁平率の低いタイヤが装着される。

ファミリーカーはその逆だ。
穏やかな性能が求められる。

それらに合わせてタイヤはチューニングされている。

そう言うクルマに合うサイズのそう言う特性のタイヤが付いていた。

それだけの話なのだ。

本来扁平率云々ではない。

みんな過去乗った時の経験でしか喋らず、
論理的に考えることをせずに物事を語ろうとするからおかしくなるのだ。

では市販の一般交換用タイヤはどうだろうか。

車種専用ならそのクルマに合わせたサイズや特性に仕立てられるが、交換用タイヤは様々なサイズで様々なクルマに取り付けられる。

市販のタイヤは幅広いサイズがあり、全てに最適化というのは難しい。

恐らくだが、ターゲットとするモデルに合わせてチューニングされている。

当方、同一銘柄でたまたま複数のサイズを試した経験がある。

銘柄はミシュランパイロットスポーツ3。

昔BE5レガシィB4で215/45R17サイズを履いていた。
妹のSG5フォレスターで215/55R17サイズ、
以前の自家用車E39BMW525iツーリングで225/55R16サイズを履いていた。

製造時期は異なるが、どれも日本正規輸入のタイ生産品だ。速度レンジも同じY(300km/h)。

果たしてどれが1番柔らかく感じると思いますか?

この中で1番タイヤを柔らかく感じたのはレガシィB4の215/45R17だ。

フォレスターやBMWはゴツゴツ硬い。
こと硬さにおいてはこれら2台のサイズで良いタイヤと言う印象は無い。

BMWでその後に履いたトーヨープロクセスC1sはものすごく柔らかかった。サイズは同じ225/55R16だ。

もちろん現在シトロエンC5のミシュランプライマシー4の225/55R17も非常に柔らかい。

ここでわかるのは、パイロットスポーツ3はエアボリュームの少ない低扁平率サイズに合わせたチューニングが成されている事。

そりゃそうだ。

エアボリュームが少ないとタイヤは柔らかくなる。
するとステアリングレスポンスもグリップも悪化する訳で、それはスポーツタイヤ銘柄では致命的だ。
ならば空気が少なくても性能を確保する様にタイヤ構造を強化する訳だ。

そんな構造のタイヤで、エアボリュームが大きくなるサイズを選べば不自然な程硬くなるのは当然の事。

結論を言うと、タイヤは銘柄によってスイートスポットなサイズは決まっており、外れると不幸な結果になるという事だ。
銘柄だけ、サイズだけではダメだ。

ここまで読まれた方はもうお腹いっぱいですよね?


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