マツダ3 1.5Lレンタカー試乗記

8月にタイムズレンタカーにて、マツダ3の1.5Lガソリンモデルを借りた際の備忘録を記す。

過去マツダ3は1.8Lディーゼルと、SPCCIのスカイアクティブX、しかも両者共に本革内装の最上級モデルしか乗ったことがなかった。
低出力かつ簡素な装備の1.5Lガソリンモデルの出来がどうなのか、興味深い。


1.マツダ3 15Cについて

タイムズレンタカーではマツダ3の15Cと言うグレードを用意している。
この15Cはレンタカーや法人向け廉価版グレードであり、一般向けカタログには無いものだ。

15Cはカタログに無いので詳細不明ながら、カタログモデルで最廉価の15Sとザッと比較すると、
ホイールの材質がアルミから鉄+ホイールキャップになる事、
ステアリング及びシフトノブが本革巻きからウレタンになる事、
Bピラーがピアノブラックからマットブラックになる事、
辺りの違いらしい。

エンジンやサスペンションなどは共通。
インテリアのマテリアルも、ほぼ変わらない。
LEDヘッドライトや安全装備、フロントウインドウに速度や情報を映すヘッドアップディスプレイ、マツダコネクトのApple CarPlayやAndroid Auto、リアカメラなども共通だ。マフラーも高級な左右二本出し。
エアコンは15Sと共通のマニュアルになる。

参考までにこの上、15Sツーリング以上は左右独立オートエアコンやドアタッチで開錠のアドバンスドキーが付く(15Cと15Sは電波式キーレス)。また、多くのモデルは18インチタイヤが標準だが、15Cと15Sは16インチとなる。

つまり、カタログモデルの15Sとの差は少なく、ほぼ同じクルマと言っても良い。

2.静止検分

早速だが乗り込む。
グレードは前述の15C。雪国仕様のAWD(4WD)になる。
2023年7月登録、走行距離5000キロほど、乗ったのは8月中旬なのでおろしたてだ。

内装は上級グレードとさほど変わらない。
ダッシュボードはソフトパッドが貼られ、人工皮革部分のステッチ(ステッチ風成型プラスチックではなく、ちゃんと縫っている)も上級モデルと同じ。オフブラックレザーに焦茶のステッチが入るそれは、廉価版どころか高級車の佇まいだ。
マツダ3やCX-30でお馴染み、シフト周りのエナメル風パネル(実はダーククリアパネルの裏側に模様を入れて、うっすら模様が見えると言う凝ったもの)も装着されており、上級グレードとの差は少ない。

シート調整は手動。高さ調整、座面角度調整、テレスコやチルトももちろんある。

ドラポジを合わせて改めて驚愕した。
エンジン横置き車として右ハンドルの出来は世界一だろう。

まず、ペダルオフセット、左編位は皆無。
そして、多くのエンジン横置き右ハンドル車でやられてるペダル位置の後退も無い。

よくテレスコの調整量を気にするヒョーロンカは多いが、実は調整量が多くてもほとんどのケースはテレスコを1番引っ張った所しか使えなかったりするのだ。
コレは右ハンドル化によってペダルの左編位を避けてペダルを後退させて手前にあるため、ステアリングも手前に調整しないとダメだからだ。使えるスイートスポットはピンポイントだ。

しかし、マツダ3はペダルが遠くにあり、テレスコでステアリングを手前に引く必要が無い。つまり、体型に合わせたドラポジのスイートスポットが広い。

シート高さを最低位でも最高位でもメーターの視認性に問題無い。どちらでも合わせられる。

今回敢えて低目のポジションにしてみたが、一発でポジションが決まる。気持ち良い位だ。

そしてシートは肩の横サポートも万全、面圧も均一で身体を全てシートに預けられる。

ステアリングホイールは真円、センターオフセット(ステアリングを上方にズラす)も無い。コレはマツダ各車共通の仕様だが、今時珍しい健全な仕立てだ。
最近の多くのクルマは楕円やD形状(下部を平らにする)でオフセットありなのだ。

運転環境は世界最良の部類と言って良いと思う。

3.走行検分

さて、走り出す。

ステアリングの感触がスムーズだ。
当たり前と思わないでほしい。今時の電動パワステ採用のクルマの多くは、様々な制御により、ステアリングの感触が線形になってないことの方が多いのだ。

タイヤはヨコハマブルーアースGTのマツダ専用(MA刻印)、サイズは205/60R16で速度レンジはV(最高250km/h)。銘柄こそエコタイヤの部類だが割と高性能なタイヤだ。

レンタカーだからか、恐らく指定空気圧より高めで、割と突き上げが多い。
とは言え、クセが無い。
ギャップやステアリング修正など外乱に強く、しっかりトレースする。
高速や山道にて冠水状態のヘビーウエットでも走ったが、全く問題ない。ビタっと安定してトレースする。

動力性能はさすがにキツい。
車検証を見ると、このマツダ3のAWDは車重1.4トンだ。
コレにノンターボの1.5Lガソリンなので、低回転でのトルクで走るわけには行かず、加速時は比較的高回転を使う事になる。
前車追従クルコンの緩い自動加速でも、高速で前車がいなくなると6速から4速まで派手にキックダウンする。
とは言え、ATもスムーズな事、エンジンは軽やかに回る為、ストレスは無い。排気音も勇ましくスポーティだ。
また、速度管理がしやすい。アクセルストローク量も大きく、一定速度の巡行が非常に楽。

そしてブレーキフィールだ。
最近珍しいほど、ストロークではなく踏力でコントロールするタイプ。
足を乗せた所から制動力が入り、極めてコントローラブルだ。昨今多い回生ブレーキミックス式ではこうはならず、ストローク依存になるケースが多いのだが、このクルマは違う。意のままに制動力を制御できる。

マツダ3は最近2Lガソリンモデルでマイルドハイブリッド化と共に回生ブレーキを採用したので、そっちが大丈夫なのか不安になった。

また、遮音性も良い。
豪雨の中でもルーフを叩く雨音はよく遮断されている。ルーフライニングは上級モデルと同等だろう。

オーディオも上級モデルと共通、パイオニア製8chマルチアンプ8スピーカー(フロントツイーター、スコーカー、ウーハー+リアスコーカー)を奢っており、この車格で標準装備のオーディオとしてはあり得ないほど奢っている。
レベル的にはメルセデスやBMWの標準HiFiオーディオ級位はある。

また、安全装備の1つでもある、レーンキープアシストも良い。
コレは車線を逸脱すると警告表示と共にステアリングに修正舵が入るのだが、そのインフォメーションが素晴らしい。

車線を踏むと、ステアリングに振動を発して警告し、修正舵が入る仕様。よく高速道路で車線を踏むと振動が出るのと同じフィールで修正舵を入れる。
あくまで車線逸脱防止だけなので、自動運転の様にレーントレースできるわけではない。余計な制御は無い。

例えばトヨタだとそうならず、急にステアリングが重くなりサクッと修正舵を入れるので、ステアリングフィールの違和感が出てしまう。先日乗ったアクアで、どうもステアリングフィールがおかしいと思ってレーンキープアシストを止めたら、なるほど、コイツが邪魔してるのかと気がついた。

ただ、トヨタはレーンセンターに向けて制御するので、割とトレースしてくれる。昨年乗ったアルファードは高速は手放しでもいいのでは?ってほどだった(当然警告が出続ける。良い子はマネしちゃだめ)。

あくまでドライバー主体のアシストなら、マツダ3の制御が正解かと思う。

今回雨天と言うこともあり、ウォッシャーを使ってビックリした。
マツダ3はワイパーにウォッシャー噴射口が内蔵されてるのだ。ワイパーからウォッシャー液出しながらガラスを拭くため、ウォッシャー液が出てからワイパーが払うまで視界が遮られる事がない。素晴らしい。
コストは高そうだが、他のクルマも採用して欲しい。

4.マツダ3を憂う

そして驚愕の事実、マツダ3のレンタカー版1.5C、前輪駆動車の価格は201万円らしいのだ(マツダは公表していないが、過去に一般売りしたディーラーがあり、その時の定価)。AWDだと20万円ほど上がる様だが、それでも安い。

レンタカーのアクアXグレードなんぞより安い。

アクアは初代より改善され、燃費良く動力性能高いしアシも柔らかいが、ステアリングもブレーキフィールも違和感のカタマリで、Xグレードのオーディオはショボい2スピーカーで、内装も安っぽい。更には操作ミスを誘発するクソATセレクター付き。

内装だけでなく、乗った質感も段違いでマツダ3が良い。

レンタカーでは同クラスであるマツダ3ではなくアクアが来たら、それはハズレを意味する。

マツダ3やスバルインプレッサ辺りは、評価が厳しくなる傾向があると思う。
例えばヤリスのレンタカーなら、クルマ好きから見て「意外によく走る」と言う高評価になったりするが、マツダやスバルは、「良くて当たり前」で、アラがあれば叩かれる。
期待値が高い分苦しい。

今回400kmほど走ったが、コレは真剣に欲しくなった。次も借りるならマツダ3を指名したい。

と同時に、ここまでコストを掛けてる車体を安価に売らなければならないマツダが心配になった。

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