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プログレを聴こう!Caravan編

はじめに

こんにちは。今日は久しぶりに音楽に関するnoteを書いていこうと思います。
今回はバンド紹介系の記事です。半世紀前が全盛期であるプログレは高齢化が著しいジャンルであり、ネット上で調べても(人によるけど)気難しい印象を受けがちです。Twitterでもそういう雰囲気を感じてわたしもネットだとなかなか詳しくは語れない…

この記事ではそんな難しいこと考えずに、気楽にサブスクで聞いてみよう!というシリーズです。記事の形としては以前にQueenのアルバムレビューで書いた広く浅くの形式を少し狭くした記事です。

第1回となる今回は私が昨年の来日公演に参加したイギリスはカンタベリーを代表するバンド、Caravanについて触れていこうと思います。
カンタベリーとかプログレって何ですか?って方は以下の過去記事の冒頭を読んでみてください。そこそこ丁寧に説明したつもりなのである程度は理解できると思います。


Caravanについて

くわしくは上の記事で説明してますので一部内容が被ります。

Caravanというバンドはカンタベリーの開祖であるThe Wilde Flowersを起源とするバンドになります。
厳密にいうとThe Wilde Flowersから脱退したメンバーがSoft Machineを結成し、続いて残ったメンバーがCaravanを結成しました。
キャリア初期はプログレとジャズを混合させた路線で活動し、プログレの勢いが陰りを見せ始めた1970年代後半にはポップへ路線変更。
いったん1978年に活動停止するもその後何度か再結成・活動停止を繰り返し現在も活動を続けています。

wikiでは「デビュー時の想定より商業的には成功できなかった」と言われているように、商業的には苦戦したバンドです。メンバーも活動停止中は労働して生計を立てていました。
ジョジョのスタンド名にもなった兄弟バンドのSoft Machineに比べるとブート音源も少なく、どちらかというとリアタイよりも後世で評価されているのかもしれません。
雑に野球でいうと普通のレギュラーとして成長した元トッププロスペクトという立ち位置です。
期待値と現在の立ち位置をMLBでいうとJurickson Profarあたりをイメージしていただければ悪くはないんだけどこんなはずでは…という感覚がわかりやすいと思います。

笑顔が素敵なProfarさん

オリジナルメンバー

メンバーの入れ替えが激しいバンドですが、とりあえずオリジナルメンバーの4人について説明します。

オリメン4人、左からRichard、Dave、Coughlan、Hastings

Pye Hastings 担当:ボーカル/ギター

4人で唯一、設立から現在まで在籍しているメンバー。兄のJimmyも多くというかほとんどのアルバムにサポートメンバーとして参加しています。
Caravanが弦楽器など通常の4ピースのバンド編成であまり見ない楽器を多用する+Caravanにおいてのギターはサブ寄りの立ち位置のため、ギタリストというよりはボーカリスト+作曲者としての存在を実感することが多いです。
Richardの脱退以降は彼が実質的なリーダーとなり、複数回の解散や度重なるメンバーの入れ替わりを経つつバンドを2024年現在まで存続させています。

Richard Sinclair 担当:ボーカル/ベース

初期作品でのボーカルは不安げといった感じで芯がなく(個人の感想です)
、どちらかというとベーシストとしての活動が目立ちます。
3rdアルバムの”In the Land of Grey and Pink”にてボーカリスト+作曲者としての才能を開花させます。Caravan脱退後のCamelHatfield & the Northでの活躍も有名です。彼の歌声が気に入ったらCamelのBreathlessとか聞いてみることをおすすめします。これCaravanじゃんって言いたくなる曲があるので。
脱退後も何度かCaravanに復帰するも92年を最後に戻らず。wikiによると現在はイタリアで余生を過ごしているようで、演奏している様子もYouTubeにアップされています。
彼が参加した作品の多くはbandcampで聴くことができます。公認のブート音源なんかもあるのでライブ音源を聴きたい方にはお勧め。

Dave Sinclair 担当:キーボード

Richardとは従兄弟。The Buggles/yes/AsiaのJeff Downsが影響を受けたオルガニストとしても知られます。
演奏面だけでなく、作曲者としてもCaravanに貢献しました。バンドの代表曲”Nine Feet Underground”を作曲したのも彼です。
こちらも何度かCaravanに復帰するも2002年を最後に戻らず。ちなみにオリジナルメンバーで最初に脱退した人です。
現在は愛媛県の弓削島にて余生を過ごしており、時々イベントに参加しているようです。
並行してソロアルバムもリリースしており、現在でも精力的に音楽活動を続けています。

また、日本人のファンの方がインタビューをしており、その詳細は下記のツイート一覧にまとめられています。
詳しいインタビューだけでなく、Daveのこれまでの経歴についてもまとめてあります。
日本語のwikiを読むよりこちらの記事に一通り目を通すことをおすすめします。

Richard Coughlan 担当:ドラム

ほかの3人とは違い全盛期においては作曲者としての貢献はあまり見られず(初期作品では共同クレジットだったので書かれています。が後年作の作曲者クレジットを見る限りメインでは作ってなさそう)、堅実なリズム感でバンドを基礎から支えた縁の下の力持ちです。
Pyeと共にメンバーの入れ替えが激しいバンドの中で脱退することなく結成からずっと残っていましたが、2013年に惜しまれつつ逝去しました。

どんなバンド?

現在まで活動しているバンドですが、今回は全盛期と言われるDeramレコード在籍時の特徴について語っていきたいと思います。
雑に言うと、メンバーの入れ替えが多くアルバムによって大きく特徴が変化すること+その中でもポップで親しみやすい曲は欠かさないことが特徴です。メンバーによって雰囲気が変わることは分かりやすく言うと"Drama"までのyesみたいな感じです。
歴代で作曲できるメンバーが複数いることも様々な曲の存在につながっています。なのでアルバムが変わると特徴も変わり、軸はあれど様々な方向性のアルバムを楽しむことができます。

また、わたし個人としてはプログレにしてはポップで親しみやすい曲が多いことがこのバンドの現代で聞いてもらうための強みだと思っています。
またプログレで割とある演者の超絶技巧に依存した曲も少ないため聴く際の心理的ハードルも低いと思います。
”A面で親しみやすい曲/B面では大作を持ってくる”という構成のアルバムが多いのですが、A面でアルバムの雰囲気を感じつつバンドに親しみ、B面の大曲は少しずつ聞いていってプログレ特有の長尺曲への抵抗を減らす。という意味でもCaravanは現代でプログレに入門するのに適しているのではないかと思ってます。

聴けるアルバムは?

ここではスタジオアルバムと(一部)ライブアルバムについてまとめます。コンピレーションとかのディスコグラフィー全部が知りたい方はwikiとかdiscogsでも見てください。
サブスクでは分裂してたり(Line musicって言ってたら執筆中にAppleでも分裂した)同名別バンドのアルバムが混ざってたりしますので注意!(AppleとかSpotifyでも)


Caravan *(1969)

本記事でおもに触れるのは↓から

If I Could Do It All Over Again, I'd Do It All Over You (1970)
In the Land of Grey and Pink (1971)
Waterloo Lily (1972)
For Girls Who Grow Plump in the Night (1973)
Live at the Fairfield Halls, 1974 *(1980/2002リリース)
Caravan and the New Symphonia (1974)
Cunning Stunts *(1975)
↑ここまでの範囲です

Blind Dog at St. Dunstans (1976)
Better by Far (1977)

活動休止(1978-1980)

The Album (1980)
Back to Front (1982)

活動休止(1985-1990/1992-1995)
Live 1990 (1992)

Cool Water (1994) 1977年に録音
The Battle of Hastings (1995)

The Unauthorized Breakfast Item (2003)
Paradise Filter (2013)
It’s None of Your Business (2021)

太字はサブスクで収録されています。*がついているのは各項目で触れます。

どの作品を聴けばいいの?

70年代のCaravanは良くも悪くもアルバムごとで音色が大きく変わるので、とりあえずこの作品を聴け!!と言いにくいところがあります。
とりあえず簡潔にそれぞれのアピールポイントをあげます。

1st:Line Musicに入ってる方は聴こう
2nd:ちょっと曇りを見せるUKロックを聴きたい方に
Grey&Pink:プログレってどんな音楽?名盤から学ぶ
Waterloo:ジャズ系や唸るベースを聴きたいあなたに
夜ごと:聞きやすくて統一された雰囲気のアルバムを聴きたい方に
Cunnning:背景を気にせずCaravanというバンドを知りたい方に

リリース順に聞くのももちろんありです


現メンバー、オリジナルメンバーはPyeのみですが老いてなお楽しそう

アルバムレビュー

1.Caravan *(1969)

これ以降もジャケット画像は公式サイトから

1."Place of My Own"
2."Ride"
3."Policeman"
4."Love Song with Flute"
5."Cecil Rons"

ここからB面
6."Magic Man"
7."Grandma's Lawn"
8."Where but for Caravan Would I?"

これ以降も曲名表記は基本的に英語wikiを参考にしてます

1stアルバムですが、なんと多くのサブスクではアルバムが収録されていません。発売時のレーベルがリリース直後にイギリスから撤退した権利関係が面倒だからでしょうか。
AppleやSpotifyで聞けるのは”The World Is Yours - The Anthology (1968-1976)”に収録されている太字の6曲のみです。(Rideは演奏音源がありますけど)
過半数の曲は聞けるのですが、全曲収録されてない以上アルバムとしては語ることができないと思うのでわたしからはこのアルバムについてはノーコメントということにします。
noteにてアルバムをきちんと聞いている方のレビューがあるので以下にリンクを乗せておきます。Caravanに限らずカンタベリーを聞くのであればこの方のnoteを一読することをおすすめします。
カンタベリーは人間の繋がりで定義されがちなジャンルなので他のバンドを見ると関係者がちらほら見かけます。

大手サブスクでアルバムの全曲を聞けるのはLine Musicです。ステレオ音源の黎明期だったからかモノラル/ステレオ音源の両方が聞けます。なんで?

ちなみにdiscogsを見てもらえば分かるのですが、売り上げが振るわなかったことによる希少価値+後年作の良質さからリリース当時のレコード(美品)は5~6桁円に到達するプレミア品となっています。日本でどれくらいの人が持っているんでしょうね。

2.If I Could Do It All Over Again, I'd Do It All Over You (1970) 

-昔懐かしUKロックに見える覚醒の兆し-

1."If I Could Do It All Over Again, I'd Do It All Over You"
2."And I Wish I Were Stoned" / "Don't Worry"
3."As I Feel I Die"
4."With an Ear to the Ground You Can Make It" / "Martinian" / "Only Cox" / "Reprise"

以下B面
5."Hello Hello"
6."Asforteri"
7."Can't Be Long Now" / "Françoise" / "For Richard" / "Warlock"
8."Limits"

邦題:2作目なのにキャラヴァン登場

概要

前作で爆死したバンドがレーベルを移籍し(というか在籍してたレーベルがUKから撤退した)、気持ちを新たに制作されました。
昔懐かしいUKロックという雰囲気がする作品で、最初に書いた通りUKロックを楽しめる作品が聞きたいなという方にはこちらをおすすめします。

A面1曲目"If I Could Do It All Over Again, I'd Do It All Over You"はわたしが観に行ったライブのアンコールとなった印象が強いです。手拍子する観客を困惑させて行く変拍子の作品でした。アルバム後半の曲とは合わない明るさの曲ではありますが曲単品で見ればその評価も気にしなくていいのかなと。
今作はRichardの声が少し頼りなさげに聞こえるところがあり、あまりツインボーカル活かせてないのかな?と個人的には感じるところが。
長尺曲枠の”For Richard”はこれからのCaravanで見られるようになるB面大曲枠が固まったと言っていい作品です。
70年代から今までずっとライブの定番曲の枠をほしいままにしています。

おすすめトラック

この項目、プログレを聴く方にとってはあまりいい気分がしない項目だとは思ってます。プログレは基本的にアルバムを通して聴くものなので。
ただ今回は親しみを持ってもらうため、あえて一つ選ぶならということで書きます。
5曲目の"Hello Hello"が個人的な一押しです。ちょっと不安げに聞こえるRichardのボーカルが曲調にあっており、後年作ではあまり見れない曇りっぽさが味の曲です。ライブ音源として高齢者となったPyeも歌ってますが、そちらも加齢がいい味を出してこれもありだなと思わされました。

3.In the Land of Grey and Pink (1971)

Daveと覚醒したRichardが主導の最高傑作は異色作

A面
1."Golf Girl"
2."Winter Wine"
3."Love to Love You (And Tonight Pigs Will Fly)"
4."In the Land of Grey and Pink"

B面
5."Nine Feet Underground"
 a. "Nigel Blows a Tune"
 b. "Love's a Friend"
 c. "Make It 76"
 d. "Dance of the Seven Paper Hankies"
 e. "Hold Grandad by the Nose"
 f. "Honest I Did!"
 g. "Disassociation"
 h. "100% Proof"

邦題:ピンクとグレイの地

概要

現在では彼らの代表作にして最高傑作の呼び声が高い作品であり、カンタベリー・ロック、そしてプログレというジャンルを代表する名盤です。
マイナー寄りのバンドでこのジャンルにしては売り上げもよく、ゴールドディスク(イギリスだと10万枚)にも認定されました。発売から30年経った2001年に。
本作のリリース時に評論家にも出来の良さが絶賛されたらしいですが、それとは裏腹に(リリース当時の)売り上げは振るいませんでした。
それをレーベルの宣伝不足のせいだとバンド側がみなしたことなどがあり、本作のリリース後にDaveが脱退します。
70年代からじわじわと売れ、後年で名盤と紹介されるようになってようやくゴールドディスクを達成したようです。
詳細は先述のnoteで単独記事としているのでそちらも読んでください。

今作のリリース後にDave、次作のリリース時にRichardが相次いで脱退したこともあり今作の音作りの基盤が瓦解しました。
そのため最高傑作と評されることが多いアルバムでありながら結果的に異色作という立ち位置を築くことになります。現代からするとこのメンバーのままもう1作品くらい見てみたかったのですが…。

おすすめトラック

A面からは2曲目の"Winter Wine"を推します。スタジオ版だけではあまりしっくりこなかったのですが、2022年の来日公演でバンド演奏を聴いてすっかり好きな曲となりました。しっくりこない方は一度演奏の動画を見てみるといいかもしれません。

B面を占める大曲、"Nine Feet Underground"はバンドだけでなくプログレッシブロックというジャンルを代表とする白眉の1曲です。
PyeとRichardのツインボーカルが見事に役割分担されており、Daveのキーボードが盛り上げる。
後年Daveがやりたい演奏をたくさん入れたと語るように、イントロ(5分以上ある)でノリノリの演奏が聴けます。オリジナルメンバーのCaravanの魅力が全てつぎ込まれた作品と言ってしまっていいでしょう。

4.Waterloo Lily (1972)

ジャズに大幅チェンジ、ここから始まるメンバーチェンジ

ジャケットには元になったイラストがあるようです

1."Waterloo Lily"
2."Nothing at All" / "It's Coming Soon" / "Nothing at All(Reprise)"
3."Songs and Signs"→Miller単独作

以下B面
4."Aristocracy"→前作の録音時に作曲されている
5."The Love in Your Eye" / "To Catch Me a Brother" / "Subsultus" / "Debouchement" / "Tilbury Kecks”→邦題は”瞳の中の愛”
6."The World Is Yours"

"It's Coming Soon"、"Songs and Signs"はMiller作、その他はオリメン3人で作曲

メンバーチェンジ

先述の通りにDaveが脱退し、そっくりモグラ(Matching Mole)に加入しました。
後任のSteve Millerは結果的に今作だけの参加となります。

概要

過渡期的な扱いをされがちで、全盛期の中ではイマイチ影の薄い印象がある本作。1st->3rdで順調に成長していた今までより音楽が大幅に変わった作品なので、結構好みが分かれるのかなと思います。
Millerがジャズよりの演奏家だったこと、Pyeが後年「MillerはDaveのようなプレイが出来なかった」と発言してることからこの方向転換はMillerの影響なのかなとも思われます。
実際はMillerを連れてきたのはRichardの人脈であること、Millerが作曲した"Songs and Signs"がどちらかというと従来のCaravan作品のA面でありそうな小品であること、この後の"夜ごと"でまたガラリと方向転換されていることからRichardの影響が濃ゆい作品なのかなと。”瞳の中の愛”以外はRichardの抜けたCaravanであまり演奏されないというのも理由にはあるけど
一見ボーカルが1曲しかないので影響は薄いのかなとも見えますが、ベースを楽しそうに演奏していることもありそちらに注力したと思われます。

おすすめトラック

今作のジャズ要素を満喫できる曲は2曲目の"Nothing at All"でしょう。
他作品から今作を聴くと「こういう一面もあったんだな」となり、今作から入った方はジャズっぽい音楽の入門になりそうないいインスト曲だと思います。
このメンバーでの公演の音源が残っており、下記の動画から見ることができます。”瞳の中の愛”以外の本作収録曲はあまりライブで日の目を浴びることが少ないので一見の価値ありです。


5.For Girls Who Grow Plump in the Night (1973)

解散の危機を乗り越えたPyeが主導するCaravanの最高傑作

邦題:夜ごとに太る女のために

1."Memory Lain, Hugh" / "Headloss"
2."Hoedown"
3."Surprise, Surprise"
4."C'thlu Thlu"

以下B面
5."The Dog, The Dog, He's at It Again"
6."Be All Right" / "Chance of a Lifetime"
7."L'Auberge du Sanglier" / "A Hunting We Shall Go" / "Pengola" / "Backwards" / "A Hunting We Shall Go (reprise)"

Pyeがほぼ全曲を作曲

メンバーチェンジ

out
Richard Sinclair(ベース、ボーカル)
Steve Miller(キーボード)
in
John G. Perry(ベース、ボーカル)
Dave Sinclair(キーボード)
Geoffrey Richardson(ビオラ、ギター、フルートetc)

Millerとボーカルの片翼であり、創立から今まで中心の一人だったRichardがついに離脱し、Hatfield And The Northを結成します。
4人のうち2人も抜けてしまったバンドは機能不全となり、一時解散します。
が新たに3人をその年のうちに補強し見事復活、2人のSinclairが引っ張っていったバンドがPyeを中心にしたバンドへと生まれ変わります。
ここで獲得したGeoffrey RichardsonCaravan途中獲得の歴史の中で最高の補強となります。

Caravanというバンドはこれまでのスタジオアルバムでは管楽器を多用していたのですが(Pyeの兄Jimmyがサポートとしてほぼ全作品に参加しているので)、メンバーとしてはいなかったためこれまでライブバンドとしては物足りない側面が否めませんでした。
ここにGeoffreyを獲得したことでライブでもビオラやフルートといったこれまでのライブバンドCaravanが持っていなかった飛び道具が編成に加わります。スタジオ音源の再現とまではいかずとも、管弦楽器のメンバーが定住することである程度の穴埋めができるようになりました。
また入れ替えが多いCaravanにおいてほとんど抜けることなく現在まで活動を共にしています。加入で得たバンドとしてのクオリティアップが現代まで続いていること、また全盛期のメンバーが現在も在籍しているということはわたしのような後年から追い始めたファンには嬉しいことこの上ありません。

概要

世間では次回作からポップ路線に入ったと言われてますが、個人的には今作もかなり初見の人でも優しい親しみやすい音になってないか?と思ってる今作。むしろPyeがほぼ全曲を1人で書き上げている分、後年のCaravanがプログレッシブロックからポップ路線に歩みを変えている過程を強く感じられます。
音は親しみやすくなっていますが、ほとんどの作曲をPyeが担っているためプログレらしいアルバムの統一感は健在です。
プログレッシブロックを聴きたい、けど18分や22分もする曲は聴けないよ…という方には今作を進めます。
今回の大作枠である"A Hunting We Shall Go"はジョジョ4部のエピソードに名前が使われてることで有名だと思ってます。承太郎がネズミに一本取られるネズミを仗助が狙撃する回です。
"Backwards"は兄弟バンドのSoft Machineから拝借された曲です。彼らの3rdアルバムに収録されている曲の一部です。

おすすめトラック

これは1曲目の"Memory Lain, Hugh" / "Headloss"でしょう。ライブの定番曲をほしいままにしているこの曲は生まれ変わったCaravan、そして新加入したメンバーが大いに躍動しています。

6.Cunning Stunts *(1975)

躍動するツインボーカル、Caravanが至ったもう一つの頂点

ヒプノシスのジャケット

1."The Show of Our Lives"
2."Stuck in a Hole"
3."Lover"
4."No Backstage Pass"
5."Welcome the Day"

以下B面
6. "The Dabsong Conshirtoe"
 a. "The Mad Dabsong"
 b. "Ben Karratt Rides Again"
 c. "Pro's and Con's"
 d. "Wraiks and Ladders"
 e. "Sneaking out the Bare Quare"
 f. "All Sorts of Unmentionable Things"
7."Fear and Loathing in Tollington Park Rag"

このアルバムはSpotifyでは収録されていますが、日本版Appleには”The Decca / Deram Years (An Anthology) 1970 - 1975"の一部としてのみ収録されていますのでお気を付けください。(イギリス版Appleにはアルバム単独もある)

メンバーチェンジ

out
John G. Perry(ベース、ボーカル)
in
Mike Wedgwood(ベース、ボーカル)

Wedgwoodは陶器関係の一族として有名らしい

新加入のWedgwoodですが、Richardとは別方向で個性のあるボーカルです。そのため従来のCaravanファンからは否定的にみられることもあるのですが、個人的にはツインボーカルを構えるならこれくらい変えてくれた方がいいよなと思ってるので肯定的に思っています。Caravanの音楽性からかけ離れているって方の主張も分かるんですけどね。

前作と違って3人のメインライターがいるのでメリハリが効き、それを合わせて聴いてても楽しめます。
そのため次回作でほとんどのボーカルがPyeになったことをいまいちに思うんですよね。それならボーカル1人でいいじゃんと思ってしまうので。

概要

プログレを聴かない方or得意でない方にCaravanの作品を勧めろと言われたらわたしはこの作品を選びます。リリース当時の売り上げも一番よく、リアタイで一番リスナーに受けたアルバムです。
賛否両論的な意見を見ることもありますが、売れてるとは言えないバンドだったCaravanが生き残るためには仕方ない変更だったのかなと考えてます。

今作ではいつものPyeと新加入のWedgwoodによるツインボーカル体制ですが、Wedgwoodがかなりファンクに向いてそうな声をしているため、かなり2人で差別化されています。
"Welcome the Day"で顕著ですが、今までのCaravanとはだいぶ毛色が異なる音も多いので、作品を順に聴いた人だとかなり違和感が大きいかもしれません。
作曲がPye、Dave、Wedgwoodが中心と複数人が行っているためよく言えばバラエティ豊か、悪くいうと前作のような統一感には欠けるアルバムです。
"The Dabsong Conshirtoe"はDaveが"Nine Feet Underground"を踏まえたのかなと個人的には思ってます。ただの素人の考えですけどね。

おすすめトラック

1曲目の"The Show of Our Lives"をおすすめします。前作で帰ってきたDaveが奏でる美しい旋律に新加入のWedgwoodがいい味出してるんですよね。
普段はあまり歌詞とか考えずに聴いてるんですけど”And yet we feel the glory
The show still goes on”って歌詞、人生のショーって楽曲からしてもすごくいいなって。成功をおさめなくても人生って続くんですよね。弱ってる時期に聞いたのですごく刺さりました。

おわりに

いかがでしたか?コンパクトに纏めようとしたけど長くなってしまいました。どれかアルバム1つ、1曲でもいいなと思える曲に出会えたら幸いです。

次回のnoteは何にするか迷っています。頭の中では色々ネタがあるんですけどなかなか形にならないんですよね。また喫茶店でも書こうかしらと考えてます。

以前からこの記事は書きつつビジョンが見えないと数ヶ月放置していましたが、本日長年順メンバーとしてバンドに貢献していたJimmy Hastings氏の訃報を受け書き上げました。

素晴らしい音楽の数々をありがとうございました。どうか安らかに。


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