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あのパン、やめちゃったんですか?_210116

ブリオッシュに硬めのクリームが挟まったパンが好きで、そこのパン屋さんにはよく行っていた。引越し当初、近所の歩いて行ける範囲にこんなにおしゃれなパン屋さんがあるなんて!と喜んでいたお店。

件のパンはブリオッシュ。コッペパンのような形で、真ん中にクリームが絞ってある。クリームの種類はミルクとピスタチオ。私はピスタチオが特段好きではないのでめったに注文しないのだが、その店のピスタチオパンはクリームにふた粒ほど散らされたピスタチオが絵になっていて、ミルク味ではなく試しにピスタチオを買ってみたのが出会いのきっかけだった。

そして食べてびっくり、ピスタチオの味が濃い。ピスタチオの味ってこうだったんだ、と初めて知る(私はそもそも味を知らなかったことにこの時気がついた)。そしてブリオッシュのパンの甘さと調和が取れている。溶けるようなクリームではなく、形を保つタイプの硬めのクリームがしっかり味を出している。パン生地も硬すぎない。

これは…人生で1番おいしいパンでは…?

何気ない見た目に気を引かれたら、奥底の魅力に気付いてしまい、ハマっていく。しかも今まで全然興味のなかった相手に運命すら感じる。

そこから足繁く通っていたのたが、ふと春ごろに行った時にそのパンがないことに気づいた。売り切れのこともよくあったので、あまり気にしていなかった。ところがしばらくして行っても値札すら置いていない。半年経った今も、出会えていない。パン職人が辞めたのかもしれないし、コロナで来店客が減って作るパンの種類を減らしているのかもしれない。別れはいつだって突然にやってくる。

まだ『あのパン、やめちゃったんですか』と聞けていないが、勇気を出して聞かなくてはいけない。自然消滅でもいいけど、なんとなく思い出すのは辛い。行方を確認すること、これは私の使命かもしれない、とパン屋の前を通る度に震えている。

#日記 #パン

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