第3回公開討論会まとめ.001

第3回大統領選挙ディベートまとめ

皆さん、やっと最後のディベートが昨日終わりましたね。
今回が投票前の最後の討論会であり、劣勢に立つトランプ氏がどのような挽回を見せるのか(特に誰も期待していませんが)、これまでに語られていない論点が出てくるのか(これもそんなにですが)など色々と見どころはあったのかもしれませんが、正直に申し上げますと、とにかく視聴者としては最後まで国をこれ以上分断させないでくれ、吐き気の催す言動は控えてくれと願うばかりでした。

以下、さらにスライド形式で掲載させていただきます。がその前に、今回の質問ははじめに「最高裁判所」という少し専門的なお話が出てきます。事前に簡単な解説をしておきますので、もし不要な方は以下の文章は飛ばしてください。スライドの最後に今回も所感を載せております。

【大統領と最高裁判所について】
最初の質問で聞かれる「最高裁判事の指名」についてですが、アメリカは大統領が最高裁判事を指名します。といっても、9名全員を指名するわけではなく、判事が任期を満了し、あるいは死亡や重病で欠員が出た場合に、その都度その時の大統領が新たに判事を指名し、議会がそれを承認します。そして、日本とは違って最高裁判事がどのような政治的立場を持った方なのかが非常に重視されます。司法府による行政府、立法府への監視が強く機能しているアメリカでは、判事がリベラル派多数か、保守派多数かで判決に大きな影響を及ぼすのです。今年初頭に保守派のスカリア判事が亡くなったことで、現在の勢力図としてはリベラル派3名、保守派4名、中道派1名となっており、オバマ大統領が穏健派リベラルの判事を指名したのですが、議会多数を握る共和党がこれを承認せず、1年近くもの間最高裁判所が8名で運用されるという異例の事態になっています。そこで、次の大統領が指名する最高裁判事が注目されているのです。 

※このあと、最後の質問として「国家の負債」の話が出てくるのですが、ファクトチェック(事実確認)が少し複雑で、まだ手が回っておりませんので、後ほどスライドを2枚追記させていただきます。

全体を通しての所感

最後まで、トランプさんはトランプさん、ヒラリーさんはヒラリーさんだったなという印象でした。トランプさんは1回目よりも2回目がましに、さらに2回目よりも3回目がマシになっていたのかなという印象ですが、ヒラリーさんはいつもと変わらず、あえて言うなら今回が一番厳しい指摘などをされたこともあってカッとなる場面も少しあったかなぁという程度でした。
おそらく支持率にそれほど大きな変動もありません。

その上で、いくつか気になった点を列挙いたします。

1)司会へのファクトチェック?

今回は司会も相当突っ込んだ質問をしていました。そして司会の質問にもファクトチェックの入る機会がありました。たとえば、「ヒラリーが自由貿易、自由な越境を夢見ている」という発言を切り取ったのは、「エネルギー政策において」という文脈を無視しているだとか、あるいは「オバマ政権の2009年の経済・金融政策は1949年以降最も低い経済成長率を導いた」との指摘も、これは多くの経済学者が「経済危機によって経済成長が低レベルになることは予想されたものであり、これはオバマ政権の政策に導かれたものではなく、低成長がオバマ政権の政策を導いたという因果の流れである」という指摘をしていました。司会の質問へのファクトチェックは初めてだったので、大変興味深く拝見しました。

管見の限りに予想すると、これはトランプが最近の集会で、「メディアはコントロールされており、選挙は不正がはびこっている。こんな選挙は到底認められない」と言い始めたので、あえて司会もかなり厳しくヒラリーに対してトランプの主張をもとにした指摘をしたのではないかと考えます。

2)初めてトランプがスペイン語を喋った

さて、今回のキーワードは2つの言葉、"nasty woman"と"bad hombre"でしょう。前者はヒラリーさんに対する言葉(汚い女)、後者はラテン系の方々に対する言葉(悪い奴ら)ですが、会場や識者らはこれにかなり憤っていました。初めて使ったスペイン語が、その言葉を話す人々をけなす言葉だったからです。まぁもはやラティーノからの集票は難しいと感じてのことなのかもしれません。

3)選挙の結果を受け止めるのか

さてさて、大きな話題になっている「選挙の結果を受け止めるのか」という問へのトランプさんの「その時に考える」という答え。
これは民主主義に対する冒涜だとディベート終了直後からかなりの波紋を呼んでいます。アメリカには、Good Loser=勝負に負けた者はきっちりと勝者を称えるという価値観があります。民主主義という競争を行っている中では余計にです。トランプ支持者の中には、彼の発言を真に受け、もはや国家への懐疑に歯止めがかからなくなる方もいらっしゃるかもしれません。
トランプさんが本当に愛国者であれば、その国が根ざす民主主義と自由主義をきちんと受け止めてくださり、そして11月8日どんな結果が出ようとも、それ相応の弁をもって対応してくださることを願うばかりです。

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