見出し画像

夢のまにまに

 あまり熟睡していないのか、最近は以前よりもしばしば夢を見るようになった。ある日の夢はこんなだった。

 自分は船団のような集まりの指揮を取る、どうやら艦長的な立場にあるらしかった。何か大きな意志に反して、全ての船を撤収させなければならないという苦悩に直面しているようで、前艦長らしいベテランや副官らしい女性に、本当に撤収していいのかということを何度も確認された。その理由も状況も具体的でないのだが、なんとしても撤退しなければならないと自分の中では決めていた。根拠なく重要な決定を下してしまうところは自分らしい。
 そして、予定通り撤収の命令を下したあと、どういった経緯かわからないが(おおかた上官からこってりしぼられたかなにかだろう)、自分は地下道のような所をとぼとぼ歩いているのだった。

 喉が痛くて目覚めたらちょうど午前3時33分だった。まだ夢を見て、起きるだけの余裕があるらしい。じっと宵闇に目を凝らしながら、夢のほうが自分の本来の人生で、現実だと思っている長い長い無為な時間が、実は夢であるとすればどうだろうかと考えた。夢と現実がひっくり返っているとしたら、いまこれを書き記している自分もまた夢で、真実の自分は眠りの無意識にいるということになる。だとすればのんきなものだ。

 最近母が、自分は夜眠ったまま死んでいるかもしれないと思うことが多いと縁起でもないことを言う。そう言ったあとで、お前はまだ若いのだからそんなことを思うなよと注文をつけてくるが、正直布団の中で目を瞑っていると、自分もまったく同じ気持ちになることがある。瞼の中が白く明るくなったときに、ああなるほど、あの世とは白いモヤモヤした光だというのが正解なのかもと思ってしまう。

 曰く、自分の果たすべき役割は無くなってきているという気分がそういう気持ちにさせるらしい。自分もそのような気分があるような気がする。これからの目標ができたばかりだというのに、不安が先に立ってしようがない。結局は自信がないということだろうか。自分の才能と頭脳と体力に自信がないのだ。あるいは自信がないという名目で逃げを打っているのだ。臆病こそは人間を先に進ませない最大のものである。夢の中でも自分は逃げようというのだろうか。




この記事が参加している募集

新生活をたのしく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?