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Story: One Team! ~ グローバル経営は幻想じゃない ~ ②

長年日本を離れていたせいで本社でのお作法という面では浦島太郎状態であるのは確かだが、そういうことにあまりくよくよしたり頓着しないのもアメリカ生活の経験からくるものだろう。
ところで、日本本社での新しいポジションでの仕事。
先ずは良く現状を表と裏ともに分かっている人からいろいろなことを聞くべきだろう考えた。と言うのは、前任者からの引継ぎがったのだが、と言っても通り一遍な説明だけで全社の舵取りをしている部署にも関わらず全社の今の課題に対する見立ても緩くてホントに今まで真面目に仕事をしていたのか?と思える程度の引継ぎ内容であったので相当不安を覚えていた。あとになって考えればその状態は致し方ないことであったのだが、当時は大いに憤慨したものだ。
そこで、僕が思い出したのが、先輩で社長室長を長年務めてこられたクリシマさん。僕がクロッカス電機に入社した時の海外マーケティング部門の先輩で、当時はよく一緒に飲みにつれていったもらった仲だ。僕が帰国する半年前に役職定年である55歳になったのを機に退社し独立して今は経営コンサルタントをしている。社内の誰よりも会社の内情に詳しく、本社で仕事をどう進めていけばよいかを一番わかっているのはクリシマさんだろう。そこで早速退職した時の挨拶メールにあったアドレスに連絡を入れてみた。週末に会って話を聞かせてもらうことになった。

クリシマ先輩は蒲田の中華料理店で明るく出迎えてくれた。すでに席についていた先輩は僕を見ると手を大きく振って合図してくれていた。
10年ぶりに会った先輩は昔と全然変わっていなくて再会を喜んでくれた。
「おぉ、トニコバ、久しぶりやな。元気そうだな。今度は経営企画部長だって?偉くなったなぁ。これからのクロッカス電機の舵取りは大変だと思うけど頑張れよ。」
「いやぁ。参りました。今の会社の再び事業成長のための構造を創るという大変な任務を受けちゃいました。」 まぁ、僕の偽らざる心境だった。
「あらら、トニコバよ。事業構造の転換なんて何年もかかる話だよな。5年かひょとしたら10年かかる話かもしれんぞ。でも大事なのは、この3年、いや2年かな、今の事業構造の中でどう利益を稼ぐかだと思う。中でも今相当下手っている海外事業をどう立て直すかが課題だよ。特にな、お前のいたアメリカだ。」
「クリシマさん、なぜアメリカですか?僕がいたときもそこそこやってきていますよ。」
「ちがう、ちがう。うまくやっているかどうかではなくて、ポテンシャルの割には事業が伸びていないということや。」
「先輩にお言葉を返すようですが、アメリカでの販売台数シェアは良い線言っていますし、毎年順調の売り上げも伸ばしてきていますよ。」
「表向きは、な。それは帳尻合わせっていうやつだな。トニコバよ、クロッカス電機はグローバルカンパニーと巷では言われているけど、中身はライバルのWISEやブレイカエーとは天と地ほど違うっているよ。それは分かっているか?」
「う~ん、それは何とも言えませんが・・・」
「お前もわかっているけど敢えて口に出さんと思うけど。売り上げが伸びているのはちょこちょこ小口の買収をしているから見かけは売り上げが膨らんでいるように見える。台数シェアがほぼほぼ横ばいで高いシェアをキープしていると言っても、クロッカス電機の販売単価はぐんぐん下がって金額換算した場合の推定シェアでは大幅にプレゼンスを落としているのは間違いない」
「クリシマさん。そう否定的な見方をされると僕ら立つ瀬がないです。」
「それもこれも、マネジメントチームが悪いからだ。」
「どういうことですか?」
「日本本社幹部社員と現地幹部社員が一枚岩になってない。一つになっていない。つまり、グローバル経営を実現できていない、ということだ。」
「いえいえ、そんなことないですよ。僕たちは現地化、グローバル化を実現するために精一杯やってきましたよ。」

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