遠い国のあねこ

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最近の記事

妹がきた!2023年2月19日

扉を出ると 馬がいた 荷物を背負って 主人を待っていた 馬の横を通りすぎると 馬の尻に隠れていた やんちゃ坊主が ナメシガワ! ナメシガワ! と叫び、 こっちこっちと、 執拗にとうせんぼする ナメシガワ なんていう名前の 有名な日本人を 知っているか!!! ときかれているのだろう。 ナメシガワ ヒロヒコ なんていう 80年代の テレビタレントかなにかだろうか ナメシガワ? と問い直すと メシガワ! メシガワ! とナを省略された メシガワ ヒロ

    • 妹がきた!2023年2月17日

      市場で食材を買うようになって 食品の相場がわかってきた 土産屋やなめし革の客引きに 何度となく声をかけられては 無視同然で逃げてきた姉妹にとって 市場の人々は 売り込みもしないし 交渉もしない 商売をしているだけだ 金曜日に歩いた市場は やや、閑散としていていた 妹は昨日の魚のフライで お腹の調子を崩したので 姉はひとりで市に行く 昨日卵を買った場所で 同じように卵を買い パスタを買ったところで 同じように米を買った あるいているだけなのに

      • 妹がきた!2023年2月16日

        妹のモロッコの印象は すごい なんで宗教はなくならないのか という大きなテーマに 発展している そんなことを 考えていると またお祈りの時間になったようだ 町のスピーカーから流れる 祈りの声が 響きはじめ 小さな家々の 中庭や 数千もの小道に こだまする 祈りだ なんて軽々しくはいえなくなりそうな 叫びが一斉に 町を震わせる 毎日毎日 正しく叫ぶ きっと 現実は毎回 祈りの中で 新しくなり よくもわるくも 今日が過ぎたことを

        • 妹がきた!2023年2月14日

          ボルドーから 2時間 モロッコのフェスに到着 妹はついに 3つ目の大陸に 辿り着いた 持ち金を計算し 旧市街の市場へ 買い出しに行く 街の地図を開くと Googleマップは 踊るように 現在地を変え もはや 正確な居場所は わからない 貸家のオーナーが 残した 紙の地図を頼りに 迷路を 彷徨う 新鮮食品の出店がつらなる SAGHA へ トマト1キロ10ディルハム たまご6こ70ディルハム 出店はどれも 畳一畳ほどで 売り手はきまって

        妹がきた!2023年2月19日

          妹がきた!2023年2月14日

          朝 5時14分発の 始発電車で 妹と、ボルドーに向かう 昨日 妹と スーツケースを分け合って ふたりでひとつの 小さな荷物を つくった 夜明け前の 駅舎に ほとんど凍りついたようになった 2車両の 短い電車が 始発の時間を じっと 待っている 清掃を終えた 係りの人が ホームから 静かに消えて 妹と一緒に 煙草に火をつけた 妹と分け合って買った ひと箱のたばこが まだ少し残っている 寒くて震えるほどの ホームの隅っこで 息と煙を吐き

          妹がきた!2023年2月14日

          妹がきた!2023年2月10日

          妹と走った 昼の時間に 静かになった教会で ひとやすみする 誰もいない 教会に 讃美歌の音色が かすかに 流れている 妹の姿を 階段をのぼった 踊り場から 見おろした ステンドグラスの 無数の子窓から 光が 淡い色を放って 輝いた 妹をじっと、 眺めて 妹のようなひとが いるな と思ってみる たしかに姉妹は姉妹だが 遠い国にいると ときどきそんなことを 不思議に思う 妹と教会を 一周して 教会を出ると 妹らしき人は

          妹がきた!2023年2月10日

          妹がきた!2023年2月7日

          大貧民という カード遊びを、 妹におしえてもらう 自分のカードを じっくり整理しながら 目が真剣に光っている妹は 大貧民の革命を 一番最初に 起こした 革命家だ 革命が起こると わたしたちは 新しいルールを 生きなければならない そこから、時がたって また誰かが革命返しを 起こしてもいい 妹が起こした革命によって 世界がひっくり返ったとき 妹は冷静に 次のカードを 整理しながら やっぱり目には みなぎるものを残して 戦いに挑むひとの

          妹がきた!2023年2月7日

          妹がきた!2023年2月6日

          妹と海に近い場所に行く 太陽が遠くにある浜辺で 犬や子供が 駆け回っている 冬の平日の暖かな午後に 人々がゆっくり 海沿いを散歩している 大西洋が すぐそこに 広がっている 妹が、 遠くの方で 子供の身体を持ち上げて ぐるぐるとまわしている 地球の裏側から やってきて 景色の一部になって はるか遠くで 跳ねている 跳ねていると 子供は いつの間にか 逃げ出していた おぉーい 妹の背中に 問いかける そんな声も もう届かないく

          妹がきた!2023年2月6日

          妹がきた!2023年1月31日

          今日はストライキのため 図書館は閉館です というお知らせで 午後の時間ができてしまった 妹はブーツをならしながら 石畳を歩いて 好きだねー ストライキ。 とこの国をちゃんと ちゃかしてくれた 所々で ストライキの歓声が こだまして いまにも夜になりそうな どんよりとした空と 行き場をなくした姉妹は 当てもなくふらついた そこで、 最後に残された場所は 以外にも というより ほとんど必然的に 美術館くらいなのだろう そして 美術館まで やってきたのだった ロ

          妹がきた!2023年1月31日

          妹がきた!2023年1月28日

          妹と一緒にタバコ屋にタバコを買いに行った。 タバコ屋の主人が、前回と同じ銘柄だね? と、背後からChéを抜きとった。 いえ、違うんです、巻きタバコにしたんです。 そうして買った巻きタバコを 妹は 馴染みの銘柄みたいに、 やさしく巻いて吸っている 寒くて暗い見知らぬ国の田舎の片隅で 妹が巻タバコを吸う姿は、なんともいえない情緒を誘うのだ 時間も場所も遠いところに置いてきた妹は、 巻きタバコを灰皿の淵に立てかけると、あやとりにとりかかる 毛糸に指をひっかけると 記憶

          妹がきた!2023年1月28日

          妹がきた!2023年1月22日

          妹がパンデミックの間 たくさん東京を歩いた という話をした パリのパンデミックと東京のパンデミック 景色がかわっていく こんなに時間をかけてパリを歩くのは 数年ぶりで、歩く速度が よくわからない 妹の速度で歩いている わたしの速度もたぶんこれでいい気がする 時々 ケイタイのナビが 道に迷う それほど、ジグザグ曲がったりのぼったり ナビと一緒に迷いそうになっていると 妹が自分のiPhoneをとりだしてくれる 妹は iPhoneでナビを起動すると 姉を連れて すいす

          妹がきた!2023年1月22日

          妹がきた!2023年1月11日

          モンパルナスから 公園に向かった 大きな噴水のまわりに 野外椅子が散りばめられ 日の光を浴びて 眠っているような人々が ところどころに座っている 妹が 公園の向こう側を指さした 向こう側には宮殿がみえた 本当に良く空が晴れわたっていた 宮殿が、輪郭をかたどったように 鮮明にみえた 妹が野外椅子に残った昨日の雨の雫を ティッシュで拭き取っていた

          妹がきた!2023年1月11日

          妹がきた!2023年1月11日

          7時19分 バス 十分に目が覚めず バスの中で眠気覚ましに、パンを食べた 妹はクロワッサンをひとつ食べて寝てしまった 新幹線に飛び乗って パリに着くと 快晴であった 妹は晴れ女であった 歩くために 運動靴を履き 新しく買った真っ黒なコートをはおった妹は 旅人、というよりも 住む人に見えなくもない 街に馴染むということはきっとこうゆうことだ 公共の 至る所に散りばめられた 人と人とのディスタンスを図る ドーナツマークが 剥げかかって ほとんど消えてなくなっていた

          妹がきた!2023年1月11日

          妹がきた!2023年1月5日

          食前酒ムスカビールはあまり飲まないけど、ムスカはおいしいという妹。 石油ストーブの前で、小さなコップ一杯のムスカを ちびちびと飲む。 ムスカのボトルには見慣れないブランドのマーク。 ウクライナでは戦争をしているのだということをふと思い出す。 それから妹が階段を駆け上がり、 手にもってきたのはこれだ。 完成したニット帽 裏編みと表編みを2目、交互に編んでいくと、 こうゆう模様になるんだそう ユーチューブの解説をたよりに、 わけもわからず編み始めたの そのひとが言った通り

          妹がきた!2023年1月5日

          妹がきた!2023年1月2日

          編み物をはじめる妹がきてから、 妹は編み物をはじめた。 編み物は、はじめてらしい。 輪針と毛糸を妹に差し出すと、数時間後には輪針も毛糸も自由自在に操っている。 そうして、妹は編み始めたのだった。 編み物、無心の友「編み物は優雅にやるもんだと思っていたけど、これ、無心でひたすらやるもんだね」 という妹は、こうして無心で手を動かし続けている。 猫がくるから編み物の最中に妹の膝の上に猫がのぼってくる 妹は猫を大事に撫でる。 そのうちに猫はよだれを垂らして寝てしまう。

          妹がきた!2023年1月2日

          妹がきた!!!元日

          妹がきた、ほんとにきた!!!妹に会うのは何年ぶりだろう。 わたしが住む遠い国の、地方都市の、生ぬるい駅舎で、わたしは、妹を待っていた。 雨が降っていた。一本の電車が駅舎に到着するたびに、妹が乗っている気がした。妹の電車がやってきた、長い2階建ての新幹線。 階段を駆け下り、屋根のないホームをうろうろしていると、 妹! 妹の背中をみて、すぐに確信したのは、妹が自分に似ているからだろう。 肩を叩くと、妹が飛び上がった。 駅舎に併設されたパーキングまで、大きなトランクを引き摺

          妹がきた!!!元日