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読書感想文1

突然だがこれまでとはガラッと雰囲気を変えて本の感想でも綴っていこうと思う。この題からもわかるように今後も続けいていこうと考えている。

教養のない、たかが学生の感想文なので優しく見守ってください。

「この闇と光」 服部まゆみ

この本は友人からオススメされた本でパケ買いした本だそう。確かに表紙は不気味でありながら美しさも感じることができる。なんというか芸大生が好き好んで描きそうな絵である。タイトルにも違和感。光が最初ではなく闇が最初にくるのだ。私はこれまで闇が先で光が後の文章にあったことがない。よくあるような1周目、2周目とでそれぞれ見方や捉え方が変化するどんでん返し系の内容だ。しかし、1周目を終えると人間関係だけでなく世界観そのものが変化する。同じ内容でありながら全く別の作品を読んでいるかのようだ。私の浅はかな予想は前哨戦として簡単に回収され、ラスボスは姿も見えなかった。

作品の全体像や世界観をはじめは「約束のネバーランド」のようなものだと読み進めていた。全くの別世界というわけではなく、しかし現実の世界と言わけでもない。根幹は私たちが生きる世界観でそこからフィクションに派生したようなそんな創作物だと。その決めつけがよりこの作品を面白くした。今思えばすべてが現実の世界での内容でありながら、なぜそのように思うことができなかったのか。私ははじめから作者の思う壺でありカモだ。どことなく理解できる根幹となる現実的な世界観と少し言葉選び。それらが私を狂わせたのだと考える。

この作品には多くの美術作品や文学作品、音楽が登場する。私にもそれらを嗜んでいるほどの教養があれば、この作品をより面白く、深く味わうことができたのかもしれない。全ての登場する作品や名前、言葉に意味のある「名探偵コナン」との親和性のようなものを勝手に感じた。

作中を通して一貫して見えたお父さんの優しさの中の胡散臭さ。私はそこに狂気的でロリコン的な少し歪な父親像を、あるいは子供と父の共依存関係のような近親相姦的な危なさを孕んだ愛が見えた。一方、お世話役のダフネからは恐怖の中にある母性のような優しさが見えた。正確には見えたというよりそう見せるような書き方をしていた場面があったと思う。これは伏線だ!と思っていたが違う形で回収されることをその時の私は知らない。

最後の方には子供が15歳辺りになり、周りの人間を自分より愚かと見下しているような描写があった。多くの芸術的知識を蓄え、その知識は大人に匹敵し、時には大人をも凌駕するようなそんな大人びた主人公だが私はその中に子供らしい部分が見えた。15歳・周りを卑下してしまう。つまり1番痛いタイプの拗れてしまった思春期の子供だ。こうなっては手が付けられない。治療はなかなか容易でなく、余程のことがない限り今後の人格形成に大きな影響を与えてしまう可能性が高い。ソースはおれ。ロッカーの引き出し探ったら巧みな語彙力と文章力を余すことなく発揮した黒マッキーで書かれた黒歴史的なものが見つかりそうではある。

最後に小説にしては読みやすい量で300頁ほどと小説復帰勢には優しく読みごたえもあってよかった。題にもしっかり意味が込められているタイプの小説でミーハーや小説を読み始めてみたい、久しぶりに読もうと思っている人なんかにもオススメかもしれない。いいものを紹介してもらった。


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