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三次以降の置換群は巡回群でないことの証明

2,3日前に群について勉強をしだして、昨日、ほぼ丸一日使って、三次以降のすべての置換群が巡回群でないことを示したんですよ。証明ができて、ほくほく気分でお風呂を上がったところで、そもそも巡回群ならそれは可換な群になるはずで、3次以降では置換群は可換でないから、ずっと考えてたことは明らかじゃないか…って気づいて、ものすごく悲しい気分になってました。(ここまで愚痴)

このまま考えたことをなしにするのも悲しいので、対偶を使わない証明の仕方として置いときますね。


n$${\geqq}$$ 3 として、
$${n次の置換群S_n \coloneqq \{ f : \{1, 2, \cdots n\}  \rightarrow  \{1, 2, \cdots n\} | f は全単射\} }$$ 
が巡回群でないことを示します。


$${S_n}$$はn!個の要素を持ちますから、$${S_n}$$ の任意の元fについて、n!よりも真に小さい自然数mが存在して、$${f^m = Id_n}$$ となることを示せば十分です。($${Id_n}$$ は{1, 2, $${\cdots}$$ n} の恒等写像)
これを帰納法で示します。


$${\fbox{1}}$$  n = 3の時

三次の置換は、以下の6つです。

  • (1  2  3) $${\xrightarrow{1乗}}$$ (1  2  3)

  • (1  3  2)$${\xrightarrow{2乗}}$$  (1  2   3)

  • (2  1  3)$${\xrightarrow{2乗}}$$  (1  2   3)

  • (2  3  1)$${\xrightarrow{3乗}}$$  (1  2   3)

  • (3  1  2)$${\xrightarrow{3乗}}$$  (1  2   3)

  • (3  2  1)$${\xrightarrow{2乗}}$$  (1  2   3)

これで、三次のとき、どの置換も6乗する前に単位元となることがわかりました。

$${\fbox{2}}$$  n $${\geqq}$$ 4 で、n-1 まで主張を満たしていると仮定します。この時、任意のn次の置換がn!までにべき乗で単位元となることを示します。

任意にn次の置換fをとります。、
$${Id_n, f, f^2 \cdots f^{n-1}, f^n}$$を考えると、これらはn+1個で、それぞれの1に対応する値としてとりうるのは1からnのn個ですから、これらのうち
$${f^i(1) = f^j(1)}$$をみたすi, j ($${0 \leqq i< j \leqq n}$$)が存在します(ただし$${f^0 = Id_n}$$)
ここで、$${l \coloneqq j - i}$$ とすると、
$${1 \leq l \leq n}$$ で、$${p \coloneqq f^i(1) }$$ として、$${f^l(p) = p}$$が成り立ちます。$${g \coloneqq f^l}$$とすると、gは(n-1)次の置換としてみることができます。
細かくいうと、$${S_n^p \coloneqq \{f \in S_n | f(p) = p\} からS_{n-1} への群同型写像t}$$が存在して、$${g \in S_n^p}$$だから、t(g)が定義でき、これは(n-1)次置換群の要素、ということです。
帰納法の仮定から、$${(t(g))^m = Id_{n-1}}$$となるm < (n-1)! が存在します。t は群同型写像ですから、$${(t(g))^m = t(g^m)}$$が成り立ちます。よって、
$${t(g^m) = Id_{n-1}}$$となって、tの単射性と$${t(Id_n) = Id_{n-1}}$$から、
$${f^{l \times m} = g^m = Id_n}$$となります。
$${l \leq n かつ m < (n-1)! より、 l \times m < n!}$$がわかります。

$${\fbox{1}, \fbox{2}}$$から、n ≧3のとき、n次の置換群のそれぞれの要素は、n!回掛け合わされるよりも前に恒等写像になることがわかりました。
$${f^s = Id_n(s < n!)}$$とすると、任意の自然数aに対して、$${q、r \in \mathbb{N}}$$が存在して、a = sq + r かつr < sとなります。これを用いて、
$${f^a = f^{sq+r} = (f^s)^q \circ f^r = Id_n^q \circ f^r = f^r}$$とあらわせるから、fの自然数乗で表せるのは、s通りまでなので、n!個すべてを表すことは不可能だとわかりました。
ということで、3次以降の置換群が巡回群でないことを示すことができましたね…

こんな証明を書いておいて、実は5,6行で証明できることに気づいた時の悲しさ、虚しさでしばらく数学のモチベーションが下がりそうです。
これを読んでかわいそうだなと思ったら、スキ!で僕を元気づけてください。よろしくお願いします。



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