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「切り絵で世界旅」慈恩寺大鴈塔(西安/中国)玄奘三蔵が教典を翻訳した塔に登る

 西安といえば唐代の長安のことであり、それだけで、遣唐使、玄宗皇帝、楊貴妃といった単語が世界の歴史教科書とともに思いだされる。孫悟空が活躍する西遊記のモデルである玄奘三蔵も唐代の人である。その玄奘三蔵がインドから持ち帰った600部あまりの仏教教典の保存と翻訳のために652年、慈恩寺境内に建てられたのが大鴈塔である。日本の仏教は中国語で翻訳された仏典をもとに広められたわけで、大いに感謝する他ない。

すり減った階段を踏みしめながら最上階まで上がる


 7層の煉瓦造りの高さは約64.5m。日本の仏塔には見られない形で、空に突き指す姿が美しい。塔内には螺旋階段があり、空海や阿倍仲麻呂も登ったであろう、すり減った階段を感慨深く踏みしめながら最上階まで上がる。小さく穿たれた窓から西安市内の街並を一望する。平城京も平安京もこの街をモデルにして都市計画がなされたのだ。通り名には朱雀大街もある。
 西安には他にも見所は多い。
 大鴈塔の北東には804年に長安に到着した空海が修行した青竜寺がある。ここを訪れ時には、高松から来ていた真言宗の女性信者が感激にうち震えながら手を合わせていた姿が印象的であった。
 またかつての唐代長安城の西門あたりに古代キャラバンの像があり、西安がシルクロードの東の起点であったことを教えてくれる。市内にはイスラム街があり、店頭で若い男の子たちが一生懸命シシカバブを焼いていた。当時から国際都市としてさまざまな人種の人々が行き交っていたシーンを想像するのも楽しい。

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