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「モノ言う株主」と僕。

今日は株主総会。

僕は、株主から嫌味を言われる。
これは、経営者として仕方のないことだ。
そう言い聞かして、会場へ赴く。

会場には、もう株主がいた。
僕はこの株主を知っている。
少し、痛い人。

果たして、株主はその人しかいなかったので、
僕は仕方がなく、総会を始めた。

僕が話始めると、
その株主が僕の話の腰を折った。

ちょっといいかな、
と言って話し始めた。
いかにも
モノ言いたそうな表情で。

最初のうちは、
物腰柔らかな感じだったのが、
途中から、本性を出したのか、
やけに感情的になっていた。

それまで、ものすごい理性的だったのに。

僕は、胸をつかまれた錯覚に出合った。

それからというもの、
その場は、その株主の独壇場だった。

株主は僕の会社に見込みは
無いとみて、僕の株を
空売りしそうな気がした。

僕は、早くこの場から逃げたいって思ってた。
逃げたとしても、現実は何も
変わらないけれども、僕はただただ逃げたかった。

逃げたら現実は悪化するだけ。
臭いものにふたをすれば、
腐敗を促進させるだけ。
それを知っていたはずだったのに、
僕はその場を後にした。

その時、
僕の胸の中では、
理性と本能がどっち側に付くか
話し合いをしていた。

正直なところ、
この「モノ言う株主」は
お客様マインドだから、
この人に喜ばれることをしたほうがいいと、
理性が言った。

本能は、そうかと肯いたが、
でも嫌だと駄々をこねた。

俺は、いつでもこれで、
コイツのことを支配していたんだ。
だから…

でも、やっぱり株主あっての会社でしょ。
だから、株主の話はちゃんと聞いたほうが
いいんじゃないの?と理性が、
小さな体を震わせながら、
巨漢の本能に立ち向かう。 

続けて理性が言う。
そうやって、何にも我慢できてないから、
周囲の人から嫌味を言われるんだよ。
だから、我慢したほうがいいと思う。
そして、私たちは
株主の為に会社をやってるんだから、
ちゃんと株主に還元しないとでしょ。

本能は、不服そうな顔で、
腕組みをして虚空を見つめている。

その話し合いを傍から見ていた僕は、
この話し合いが、見たことのある光景に見えた。

僕は、その時に思った。
応援される人になりたいって。

そんな僕は今、とても死にたい。



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