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編集工房けいこう舎マガジン
2017年2月7日 23:45
【第1話】死の声――古河為子のこと (その1) 栗林佐知明治34(1901)年11月30日、朝のこと。東京は神田橋の下で、電信地下線の工事(一説には、船荷の荷揚げ作業)をしていた作業員が、上げ潮に乗って川を上流へ押し上げられてゆく人を発見した。巡査を呼び、引き上げてみると、それは六十歳ほどの婦人で、すでに亡くなっていた。着物の品の良さや、小さな丸髷につけた櫛や笄(よく抜け落ちなか