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ハンサムじゃないとダメですか? ──かたすみの女性史

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歴史ドラマの主人公が女性なのは、もちろんうれしいけれど、 エンターティメントの悲しさ、ドラマの女主人公は、みな有能で勇ましく、美人で自信満々の“勝者”です。 来年のNHK大河ドラ… もっと読む
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#近代史

【第1話】死の声――古河為子のこと (その1)

【第1話】死の声――古河為子のこと (その1)

【第1話】死の声――古河為子のこと (その1)    栗林佐知

明治34(1901)年11月30日、朝のこと。

東京は神田橋の下で、電信地下線の工事(一説には、船荷の荷揚げ作業)をしていた作業員が、上げ潮に乗って川を上流へ押し上げられてゆく人を発見した。

巡査を呼び、引き上げてみると、それは六十歳ほどの婦人で、すでに亡くなっていた。着物の品の良さや、小さな丸髷につけた櫛や笄(よく抜け落ちなか

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【第1話】死の声――古河為子のこと (その2)

【第1話】死の声――古河為子のこと (その2)

【第1話】死の声――古河為子のこと (その2)   栗林佐知

ひきつづき、足尾鉱毒事件について。

明治34年11月16日。

潮田千勢子たち(この人と日本基督教婦人矯風会のことは後で述べよう)篤志の女性5、6人が、被災地を視察に訪れる。案内したのは、議会と政府に失望し、議員を辞めた田中正造だった。

潮田らは、朝一番の汽車で上野を発ち、古河(こが)の駅から人力車で思川と利根川の合流する地点ま

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ハンサムじゃないとだめですか   【第1話】死の声――古河為子のこと (その5)

ハンサムじゃないとだめですか   【第1話】死の声――古河為子のこと (その5)

【第1話】死の声――古河為子のこと            栗林佐知 

 為子の来歴、“人となり”を伝えてくれるのは、今のところ、どこまで本当かわからない、当時の新聞記事だけのようだ。
 為子の死から2、3日後の、明治34(1901)年12月1日、2日の萬朝報、時事新報、読売新聞、朝日新聞、東京日々新聞、二六新報、、報知新聞が、争うように、少しずつ詳細の違う「為子の来歴」と、その死の理由を伝えてい

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