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寺田和代「本と歩く アラ還ヨーロッパひとり旅」 第2回 ジョージア篇(18)最終回!

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ジョージア篇(18)
薄暮の街に星座のように浮かぶトビリシの灯


 帰路は2時間ほどしかかからなかった。
 リバティスクエア駅でバスを降り、ふと空を見上げるとオレンジの残照がまだ残っていた。
明日は離れるこの街の姿をまぶたに焼きつけようと、すっかりなじみになったソロラキの丘へ。ロープウェイ駅まで歩いて15分ほどの道のりをもう自分の街の散歩道のように感ずる。

 丘の上に着くと、昼間以上に人であふれる小径の手すりに体をすべりこませ、うす闇の街に少しずつ灯り始めた光の点を見おろした。集中しているところもあれば、ぽつんぽつんと散らばっているところもある。
薄暮の街に星座のように浮かぶトビリシの灯。その一つひとつがこの国と人々の長い歴史の痕跡を表しているように感じた。
自分がいまジョージアの平和で豊かな尊い時代に生き合わせ、その象徴のような光景を眺めている幸運が胸に沁みた。

ナリカラ要塞から見るたそがれのトビリシ

 背後では、地元ストリートミュージシャンがギターをかき鳴らし、大勢の外国人旅行者、散歩を楽しむグループやカップルが次から次へとやってきては夕景を眺め、その美しさに感嘆の声をあげ、夏の終わりの黄昏を楽しんでいた。
平凡で幸せそうな気配、数種類の何語かもわからない人々のおしゃべり、笑い声…そのすべてをトビリシの街が光の絨毯で抱擁している。

コーカサス山麓までバスに揺られた長い一日が、10日間のジョージアの旅が、終わろうとしていたけど不思議と疲れを感じなかった。
すみれ色の空にすっかり夜のとばりが降り、ロープウェイの係員が帰り支度を始めるまで手すりにもたれたままま、キラキラ輝くトビリシの灯を目に焼きつけた。

街の中心を流れるムトゥクヴァリ川の橋から、
ソロラキの丘方面(ライトアップされたナリカラ要塞)を望む

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後編、第2回 ジョージア篇ここまででございます~
(お名残惜しい……)
「ジョージア篇」全22章((0)~(18)+ブックガイドコラム3本)を、
3回に分けてお届けいたしました! 
思い出したとき、どうぞ何度でもご訪問くださいませ!

次回は、来年の初夏でございます! お楽しみに~

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このページの文章・写真の著作権は著者(寺田和代)に、版権は「編集工房けいこう舎」にございます。無断転載はご遠慮くださいませ。
もちろん、リンクやご紹介は大歓迎です!!(けいこう舎編集部)


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