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制約を楽しむ/ゲーム実況とレンズ選び

 ゲームの「プレイ動画」を観るのが好きです。プレイ動画とは言っても、初めて遊ぶ様子を実況したものから、ゲームの攻略法や解説付きのものまで様々なジャンルがあります。なかでも僕が好きなのは、制限/制約を課して楽しむプレイ、いわゆる「縛りプレイ」というやつです。

 たとえば、4人のパーティで魔王を倒すところを、勇者一人で挑むとか。銃でゾンビを倒すゲームなのに、ナイフしか使わないだとか。当然ながら、難易度は跳ね上がります。それでも、自分で決めたルールに従い、工夫して壁を乗り越える。そういうプロセスの中に、楽しさや面白さがあるのです。

 僕も昔はよく、シミュレーションゲームなどで、少ない資源で始めるとか弱い勢力を使うといったことをしました。当然めちゃくちゃ難しいですし、失敗ばかりしたけれど。それでも試行錯誤を繰り返し、クリアできたとき、普通では味わえない大きな喜びがありました。

 縛りというからには、自由や快適さとは真逆なわけで、不便極まり無い。でもそれもまた一興というか、制約があるからこそ気づける楽しさがある。そんな風にも思えるわけです。もしかしたら、普通と違う自分に酔っているだけかもしれませんが。

 カメラの「レンズ選び」も、これとちょっと似ているような気がします。レンズにはズームレンズと単焦点レンズの2種類あり、僕が持っているのは単焦点レンズばかり。ズームレンズがあれば便利だろうなとよく思います。

 ズームレンズだったら、被写体との距離をそこまで気にしなくていいし、撮りたいものによって、いちいちレンズを交換しなくていい。遠くの猫から近くの猫まで撮れる。要するに、シャッターチャンスを逃しにくいわけで。

 それでも僕は単焦点レンズを使います。被写体に近づいたり離れたりと、自分の足で稼ぐこと。レンズ交換手順を考えること。猫を驚かさないようにすること。そうやってあれこれ工夫しても、失敗ばかりするけれど。それでシャッターチャンスを逃しても、それさえ楽しみたいと思うのです。

 「不自由さを楽しむ」なんて言うとまた偉そうですが。工夫して考え抜くプロセスは、苦しいけれど、楽しい。そんな風にも感じられます。なんでも思いどおりに行ったら、ストレスはないのかもしれない。ずっと心穏やかに過ごせるのかもしれない。そういうものに憧れる気持ちもあるけれど。

 でもビールがおいしいのは、苦みがあるからでしょう。甘いジュースだけ飲んでいたら気づけないものがある。人生の醍醐味って多分そういうこと。別に、高級なズームレンズが買えないわけじゃないよ。本当だよ。


撮影ワールド:District Roboto/Fins さん

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