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写真日記/忘れたいのは――

 日々の生活のなかで、ふと思いついたことを下書きにしている。これなら記事を書けるかな、書きたいなって思えるようなテーマを、忘れないうちに保存するのだけど――。見返してみると「何を書きたかったのか」自分でも思い出せないことがあったりする。


 もともと記憶力のいい方ではなくて、特に人の顔は、全然覚えられない。とりわけ女性は、髪型を変えたり、お化粧を変えたりすると、すれ違っても認識できなくなってしまう。そのくせ電話越しの声だけで、相手が誰かだかすぐにわかってしまうものだから。ちょっと偏っているのかもしれない。

 ――ずっと昔の、それこそ相手だってもう、覚えていないようなことを。何かのきっかけで思い出してしまう。後悔や羞恥で、胸が締め付けられる。そして思い出す度に、より深く、自分自身に刻み込まれていく。楽しかった思い出なんかは、簡単に忘れてしまうというのに。


 「思い出したいのに、思い出せない」
 「忘れたいのに、忘れられない」

 どっちなんだろう、苦しいのは。ぼんやりと、そんなことを考えていた。もっとも、比べるような話ではなくて。どっちも苦しいに決まってるよね。それでも、どちらかと言えば後者の「忘れられない」方じゃないかと思う。


 「――昨日はどこに?」
 「そんな昔のことは覚えていない」

 なんて、映画みたいなセリフを。吐けたらいいのにね。

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