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地域について、低体温で語り合う/tomad・瀬下翔太・さのかずや

地域のことを情熱的に語り合う記事は多い。けれども、必ずそうしなければいけないってわけじゃない。自分の地元や、しばらく住んだ場所、そこでの暮らし方や働き方について、低い温度で、ぼそぼそ話したっていいはずだ。

そこで今回は、インターネットレーベル「Maltine Records」主宰のtomadを迎え、もともと都市や場所に深い関心を寄せる彼とともに、身近な地域の話をダラダラと語り合った。

昨年1年間密かに(?)新潟県新発田市に暮らし、現在は茨城県つくば市を拠点とするtomad。郊外から郊外へ移った彼とともに、身近な生活シーンから、低体温で地域のことを考えてみよう。

(書き手:瀬下翔太)

tomad:インターネットレーベル「Maltine Records」主宰。
瀬下翔太:埼玉県出身。メディア・プロジェクト「Rhetorica」企画・編集。
さのかずや:北海道遠軽町出身。株式会社トーチ代表。


コロナと引っ越し

さの:今日はトマド氏の新潟での日々や現在の動きなど、いろいろ聞けたらなと思ってお招きしました。ふたりで話すのもアレなんで、ずっと島根県で活動していて、最近東京に引っ越したRhetoricaの瀬下氏にも来てもらいました。よろしくお願いします。

tomad:どうもどうも。

瀬下:よろしくです。

さの:そもそもですけど、トマド氏はどうして新潟に移住したんですか。

tomad:コロナウイルスの影響ですね。というのも、去年の3月に子どもが生まれまして。ちょうど感染症が広がっていくタイミングでどういうウイルスなのかもわからないから、家族も関東にいることが不安だったっていう。

さの:そのときは埼玉にいたんですよね。

tomad:そうっすね。埼玉の戸田に住んでたんですけど、新潟にある親戚の家がたまたま空き家になって、落ち着くまでそこにいようと。そういうわけで、去年の7月のはじめに新潟県新発田市に引っ越しました。


新発田でのくらし

さの:新潟での様子はツイッターとかでときどき垣間見えましたけど、実際どうでしたか。

tomad:おもしろかったですよ。ポコラヂでも話したけど、特に新発田は楽しかった。チャリで移動できる範囲にスーパーがいくつもあるし、郊外らしくイオンもある。マクドナルドもネカフェも、蔦屋書店も。そのうえ城下町だから古い文化を感じさせる店や観光資源もあって、飲食店も沢山ありました。1年いても飽きなかったですね、もうこの街でやれることは全部やったみたいな全クリしたような感覚にならなかったのでよかったです。とはいえ、もう少しでいけそうって感じはするんだけど。

さの:東京とか、ほかの街は全クリしてる感じしますか?

tomad:もちろんそんなことはないっすよ。東京は小さい街というより、いくつもの街があって、広大なマップを探索するゲームみたいじゃないですか。新発田はひとつの街なんだけど、結構大きいなって印象です。もっと小さい街だと、そういう全クリ感が出るところもあるんだけど。

瀬下:知り合いとか、友達とかはできましたか?

tomad:そういう感じではないっすね(笑)。会ったのは親戚のおじちゃんくらいで、新潟の人とあんまり関わっていないから。いろいろ調べてはいましたけどね。たとえば、新発田発の企業・ハードオフが新発田駅前にスタートアップ育成のビルを建てているとか。周りにビルとかないし、すごい目立つんですよ(笑)。あと、さのさんがツイッターでときどきリツイートしているフラーっていう会社もいろいろやってる。

さの:フラーは新潟に拠点もありますし、いろいろ事業をやっていますね。

tomad:いわゆるカルチャーっぽい動きがいっぱいあるわけではないけど、新潟出身トラックメイカーの~離さんが出した「幽霊を見た」という地方都市(新潟)の物語性をテーマにしたEPは印象的でしたね。南魚沼にはeditionnordっていうハーコーなデザイン事務所もあったり。

瀬下:南魚沼つながりだと、雑誌『自遊人』もありますね。新潟全体にはどういう印象ですか?

tomad:新潟はどの地域もキャラが強い感じがしますね。長岡、上越、燕三条、村上……それぞれ個性があって、住んでる人も誇りを持ってる。対照的に、新潟駅付近はぼんやりした印象を受けましたね。東京でいうと三鷹みたいな雰囲気っていうか。

さの:とはいえ、トマドさんがそれぞれの地域に積極的に関わっていくって感じではないですよね。

tomad:ですねえ。自分がコミットできそうな場所やコミュニティはなかったかな。地域活性的な取り組みもいろいろ調べましたけどね。月岡温泉で地ビールをつくるクラウドファンディングをやっていたり、地域に無料で配られるコミュニティ誌があったり。ただ自分はずっと住むわけではないから、あんまり関わるのも違うかなって。


地域との距離感

tomad:コンビニに行くと、どこでも県内のニュースを扱う週刊誌が置いてあるんですよ。県内企業の年収ランキングとかが掲載されてて、コメリやスノーピーク、第四銀行あたりが上位にランクインしてます。どの書店にも田中角栄の本があって、地元の政治や経済への関心が東京より高いし、自治体との距離も近そう。

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瀬下:島根もそうでしたね。ぼくが暮らしていた津和野町は、町内で一番大きい組織が役場になるので、自治体の動きに対する注目度が高かった。政治や行政の権力に対して、経済と同じくらい関心が持たれている。

さの:北海道もたまにありますね。釧路あたりは鈴木宗男のお膝元で、ムネオロードと呼ばれているやたら広い片道三車線の道路が走っているし(笑)、否が応でも興味が出ますよね。北海道との違いとしては、新発田も津和野も城下町だってことですかね。こっちにはお城がないから、歴史的な権威や伝統があんまりない感じがする。道内でも函館は古くからある街だけれど、ほかの街はせいぜい100年くらいの歴史で、街の商店とかも二代か三代ほど。だからかな、どこか虚無的なんですよ。

瀬下:その虚無とどうやって向き合ってるんだろう。

さの:どうかな、向き合ってないんじゃない。この前九州の友達に「いらない実家の農地をどうしようか悩んでる」って言われて驚いたんですよね。北海道では、地元のお店や農家の跡継ぎでも、あっさり会社や土地を売って都会に出てくる人が多い。だから土地に対する思いの強さにびっくりしましたね。

瀬下:そうなんだ。北海道の人はわりと地元への思い入れが強いイメージがありました。

さの:北海道って単位に関して言えば、気候に対する親しみはみんなあるかもしれない。本州の梅雨も、暑い夏も嫌いだし、ピリッとしない冬も嫌い(笑)。そういう人間は多いと思う。

tomad:気候は重要ですよね。新潟の場合は日本海側だからかずっと曇ってたので、ダウナーになったり、うちにこもりがちになったりしました。雪もありますし。大雪が降ると本当に大変で、消雪パイプのあるところとないところで地域が分けられている。ないところはもう街はずれですね。関東にいるときは、天気に行動を制限される経験があまりなかったから新鮮な感じがしましたね。

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さの:たしかに。北海道で生まれ育つと大雪で学校が休みになる経験を小学校のときからしますけど、東京にいたらあんまりなさそうっすね。


場所ではなくバイブス

瀬下:さのさんは東京から北海道に戻りましたよね。去年でしたっけ。

さの:生まれ育った道東ではなく、札幌ですけどね。まあ、ぼくがしぶとく道東にかかわっているのは、両親が遠軽町から出たことがないような人だからかな。

瀬下:札幌は好きなんですか?

さの:いや、あんまりピンときていない(笑)。トマド氏が新潟駅付近が三鷹に似てぼんやりしているって言っていたけど、ぼくは札幌に対して同じような印象を持ってる感じ。たとえばiPhoneが壊れたらすぐ修理にいけるし(笑)、快適ではあるんだけど、それは自分が札幌にいなくちゃいけない理由にはならないっていうか。メディアアート系の仕事とか、ぼくにしかできないと思えることもいくつかあるからいいけど。

tomad:札幌ってのんびりしちゃいますよね。昔ALTEMA Recordsというネットレーベルからもリリースしていたよしえくんの家に2週間くらい泊まらせてもらったことがあったけど、そのときもまったりしてた。特に何かするわけでもなくチャリンコであちこちウロウロして。

さの:たしかに、町外れから中心市街地まで自転車あれば行けるサイズ感ですからね。日本全国みても有数の暮らしやすさだと思う。

瀬下:道東についてはどうですか?

さの:うーん……。半周くらい回って、いまは場所へのこだわりが弱くなったかも。これまで結構いろんな人とやろうとしてきてたんですけど、最近は札幌でも道東でも東京でもどこでもいいから、バイブスが合って話の通じる人と仕事をしたほうがいい気がしてきてて。だからできるだけ合いそうな人と話そうとしてますね。

tomad:その点は同じかもしれないですね。トラックメイカーは全国各所にいるから、音源をつくってリリースするという意味ではどこにいたってネットを使って連絡さえとれればいいし。


東京とインターネット

トマド:ただ、まあ集まるとなるとやっぱり東京になってくるんですよね。新潟に行ってみて、自分は東京から離れられないという自覚が深まった……。

瀬下:もともと東京なんでしたっけ。

tomad:地元は横浜の郊外っすね。横浜の郊外の方はちょっと閉塞感があるんですよ。それなりに歴史があるからか、モラトリアムっていうか、ぬるま湯につかっているっていうか。遊ぶにも地元で完結するので東京に行く気持ちにもなりづらい。同じような郊外でも、移住する前まで住んでいた埼玉の戸田はぜんぜん違いますね。東京に直結している感覚がある。みんな駅に向かって自転車で走っていくんすよ。そして、そのまま埼京線に吸い込まれていく……。

瀬下:わかるなあ。

さの:そういえば瀬下さんは島根から東京に引っ越したんですよね。埼玉には帰らなかったんですか。

瀬下:そうっすね、いろいろありまして、いまは東中野に住んでます。地元の大宮に戻るか、埼玉の山の方に住むかどっちかかなと思ってたんですけど、どうしても決め手がなくて。結果的に、前に住んでいた東中野にまた住んじゃってるっていう。

tomad:東京生活どうっすか。

瀬下:うーん、まだ慣れないですね。東京って、ニッチな関心でも話の通じる相手がたくさんいるじゃないですか。島根にいるときはインターネットの話なんてリアルでしなかったのに、こっちだと話せるみたいな。それが不自然っていうか。ちょっとした知り合いとの距離がやたら近い感じがして、ヘンな気持ちになる。

tomad:ぼくがいた頃の渋家はそういう感じでしたよ。マジで村をつくろうとしてたから。知り合いの知り合いがどんどん集まってくる、みたいな。それはそれで居心地良かったけど。

瀬下:なるほどなあ。うまく馴染めていないので、「東京」にこだわらず「関東平野」くらいの単位で考えて、あちこち見てみようかなと思ってます。ああ、そういえば物件を探していて感じたんですけど、いまって結構部屋が空いてますね。コロナがあるからみんな上京しないのかな。

tomad:なんとなく、東京は減速しているような気がしますね。

瀬下:ええ、そうなの。ぼく来たばっかりなのに(笑)。まあ、たしかにネットのコンテンツを見ていると、東京っぽい雰囲気のものが減っている感じします。逆に郊外っぽいものや地方っぽいものが増えているような。

tomad:特に音楽はそうかな。いまTikTok発のアーティストが増えてますけど、地方出身の人が多いんですよ。BLOOM VASEっていうMステに出たアーティストは滋賀と大阪の若者だし、change my lifeって曲がバズった韻マンも大阪。彼らはTikTok的な素直なバイブスがつかめてる感じがある。ああいう若者が使うプラットフォームで機能し、生活のなかでもBGMとして聴けるような音楽をしっかり追求できている。これはほかのアーティストとの差別化を図る意識が強い東京的なアーティストにはない感覚じゃないかな。ケータイ小説的というか、マイルドヤンキー的というか、そういう感性っすよね。

瀬下:なるほどね。そういう差別化の意識って、家にいるとなくなりませんか。上京してからウーバーイーツめっちゃ頼んじゃうんですけど、画面で見るとどこがうまい店なのかとかってよくわかんないし、食べても差異を感じづらい。似たようなプラスチックの容器で届くし、フードコートみたい。

tomad:ファッション的な感覚というか、ズラしていこうみたいな意識はどうしても減りますよね。全体的にフラットになっていって、そうなると東京の強さはなくなってしまう。ぼくも居心地の良さで言えば、新発田のほうがいいし。


新発田からつくばへ

さの:そういえばトマド氏は新潟から戻って、どこに住むんでしたっけ。埼玉?

tomad:つくば市っすね。

さの:そうなの!? 全然知らなかった。

tomad:中古マンションをローンで買いまして。都内はクソ高くて買えないからあちこち見てたんですけど、つくば市は教育環境もいいし値段も都内に比べたらぜんぜん安い。自然も適度にあるし。いま実家が横浜から引っ越してつくばエクスプレスの沿線上にあるから、そういう意味でもいいかなと。

さの:めちゃくちゃやってるってイメージ勝手にありましたけど、すごいちゃんと生きてる……。

tomad:家族いますからね(笑)。もしひとりだったら、いまも渋谷かどっかでフラフラしてるかも。

瀬下:つくばだったら、新潟より近いですね。

tomad:うん、いままでなら遠いなって思っていたかもしれないけど、新発田を経由したから感覚が変わった。上越新幹線は片道1万円で、つくばエクスプレスは片道1000円っすよ。高いといえば高いけど、比べたら安いなって。そういう感じで考えたこともあって、決断が早かった。

瀬下:家の周辺とかって、どういう感じなんですか?

tomad:なんもないっすよ。つくばエクスプレスは宇宙船みたいなものというか、駅付近にちょっと人が住めるような宇宙ステーションがあるけど、ほかは真空というか畑と雑木林。どこも土地があまりに広くて、開発予定地ばかりなので。まだ出来て15年ぐらいだから畑の真ん中にポツンとある駅の近くには全然文脈がなくて、古くからある飲食店みたいなものは見当たらなかったり。

さの:ぼくが知っているところだと、柏の葉みたいな感じですかね。三井不動産のシムシティみたいな街で、成長を見守る楽しみがある。完全に人工的につくられた横丁のような場所があって面白いですよ。ちょっと離れた柏駅には歴史があるんだけど。

tomad:なるほどっす。つくばの場合も、さっき話したつくばエクスプレス沿線とは別に、街道沿いにはいろいろ歴史がありますね。


仕事と場所

さの:それにしても、家を買う決断したのすごくないですか。

tomad:そうですねえ。いまとある会社で正社員やってて、こんなに長く正社員でいる時期は今後ないかもしれないと。それでこのタイミングで買おうかなって。いろいろ知り合いと話してても、フリーランスだったり年齢が上がったりするとローン借りられなくなるっていうし、賃貸より買ったほうが月々の金額も安くなるから。

さの:え、正社員だったんですか!? でもCANTEENもありますよね、いまどういう働き方してるんですか。

tomad:普通にその会社で働きつつ、てぃーやまのやってるCANTEENでも仕事してる感じですね。色々な意味でバランスがとれていいっすよ。大学卒業してからほぼマルチネしかやってない時期とか、DJでの収入がほとんどの時期とかもあったけど、やっぱりあまりにも博打なのでどんどん狂っていって精神に悪いですね(笑)。

さの:なるほど。じゃあ、マルチネとCANTEENはどうやって切り分けてるんですか?

tomad:マルチネはシンプルにいままでのレーベルの文脈に合いそうだったり、レーベルをこうしたらより良くなるだろうなという基準だけでリリースを重ねていくって感じですけど、CANTEENは会社だしトータルの収益性や組織の将来性を考えたりしていますね。でもマルチネでリリースした人と今度はCANTEENで関わるみたいなこともありますよ、PARKGOLFの『Totem』とか。

瀬下:話を聴いてると、普通に忙しそうっすね。

tomad:会社員とCANTEENと、イベントの類だとロスディケを遠隔でオーガナイズしたり、結果的にコロナで実施できなかったけれど栃木の洞窟でのレイヴも準備したり、まあまあいろいろありましたね。昼間は子供が好き放題しているので寝てからじゃないとなんだか落ち着かないし。あとはマルチネのトラックメイカーと通話して近況を聞いてみたり、正月はオンライン対戦で桃鉄やりまくったり。地味にいろいろやってましたね。

さの:ずっと家で仕事してたんですか?

tomad:そうっすね、会社もリモートOKだし。ただ、音楽の仕事って思った以上に現場に行かないといけないものなんですよね。ライブに行ったり、レコーディングに同席したり。アーティストとタイミングやノリを合わせようとすると、会ったほうがラクっていう。

さの:自分の場合、あちこちの会社と仕事をしてますが、東京の大企業は意外とリモートでも平気だなって感じです。みんなリモートだから、ぼくが札幌からミーティングに参加していても誰も気がつかないし。逆に、札幌も普通に都会だけど、札幌の仕事はオンライン化されていないというか、顔合わせたり現地に行ったりしてなんぼみたいなところが意外とある。地方都市と東京でも違いがあるなって。

tomad:そういえば、バーチャルキャラクターのオンラインライブ制作みたいな仕事があったんですけど。バーチャルだし、しかもオンラインだし、リモートでいけるかと思ったら全然認識が甘くて。映像制作でスタジオに何日も入らないといけないし、めっちゃ東京に行く必要があったっていう(笑)。

さの:リアルをバーチャルにする作業は、リアルでしかできないわけだ。


出張カルチャー

瀬下:実際、どれくらい東京に出張してたんですか?

tomad:2週間に1回くらいかな、家庭もあるのでだいたいは一泊二日で。

さの:自分は三泊四日とか一週間とか長めにいることが多くて、そうすると作業環境がなくて作業が滞ってきちゃうから、家に帰りたいと思いがちですね。

tomad:ああ、ぼくは出張は嫌じゃなかったっすね。高速バスだったらつらかったかもしれないけど、鉄オタ気質あるから新幹線楽しいし。出張のときは基本的に始発に乗るから、まず5時に起きて、始発の白新線に乗る。すると6時すぎの新幹線に乗れて、9時半に東京に着く。帰りは20時に東京駅を出れば、23時には新発田に着く。日帰りできるギリギリの距離って感じっすね。ただ、出張っていう要素が生活のなかにあるのはいいですよ。東京行くぞオラッて感じで気合いも入るし。家族は大変だったかもしれないけど。

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瀬下:出張っておもしろいですよね。時間が限られているからヘンなサービスを使うことになるっていうか。駅とかコンビニについてる公衆電話みたいな会議室とか結構便利だし。

tomad:あるっすね。朝に東京駅にあるステーションブースでアメリカ人とオンライン会議したり、不思議な感覚になりますね。あとは東京商業会館の1階にある皇居が見えるエクセルシオールが景色も良くてお気に入りで朝着くとよく行ってました。それにしても、こんなに東京駅に行ったことってなかったですね。帰りにグランスタのポップアップショップみたいなところで駅弁買うのが楽しくて、「お、今回は宮崎特集か〜」みたいな(笑)。あとはお土産にケーキ買ったりとか。新幹線から日が暮れる北関東をみながら新潟に帰るのはなかなかよかった。こういう日常と非日常の境目みたいな感覚が好きで無駄に出張する人とかいるかもなと思いましたね。初めて出張カルチャーに触れたかもしれない。

さの:東京への目線は変わりました?

tomad:どうかなあ。大きく変化するってことはないけど、渋谷に住んでいたら渋谷から出ないし、東京にいると意外とあちこち動かないんですよね。地方から来るとあちこちに予定を入れたくなるから、都内でもいろいろなルートを通るおもしろさはありましたね。


またリアルへ?

さの:そうはいっても毎回出てきてるわけでもないというか、東京のイベントに新潟からバーチャルDJで出演するってこともありましたよね。あれはやってみてどうでした?

tomad:身体性について考えさせられたかな。人間が踊る音楽と、バーチャルキャラクターが踊る音楽はかなり違う感じがする。バーチャルDJが四つ打ちかけてると、あまりにも人間の身体性に即しすぎてなんかヘンだし。

さの:逆にどういう音楽で踊りそう?

tomad:ハイパーポップ的なものかな……。あとはBPMとか急に変えてみたり、つながないようにしたり。ラジオのダイヤルが急に合うような感じがちょうどいいっすね。

さの:目の前にお客さんがいないことについてはどう感じました?

tomad:まあいたほうがいいこともあるけど、いないことによるおもしろさもありますよね。高校生の頃にインターネットラジオで音楽流すところから活動を始めてるから、自然ではあるし。ただリアルでのイベントをやりたくなってきてはいますね。去年のマルチネのリリースで『???』っていうハイパーポップをテーマにしたコンピレーションつくったり、 Kabanagu『泳ぐ真似』やquoree『鉛色の街』を出したりして、昨今のモードは掴めたかなと。だから、そこで生まれた新しい価値観やコンセプトを提示するようなイベントをやって、どういう人が来るか知りたい。いままでとリスナーも変わってきていると思う。

瀬下:なるほどなあ。

tomad:あと単純に他人が踊っている姿を生で見たいっすね。これは都市的な感覚だと思う。オンラインのイベントだと、演者は見れてもお客さんはよく見えないですし。

さの:去年の夏くらいまでで配信系のイベントはやりきっちゃった感じしますよね。

tomad:そうっすねえ。オンラインについては、自分はロスディケとラウンジネオ閉店のイベントでだいたいやったかなと。クラブには2020年のはじめにマルチネのイベントをサーカスでやってから、1年半くらいずっと行っていないんですよね。だからそろそろやりたい、と言いつつ、ちょっとリアルの終電が……。

瀬下:結構喋っちゃいましたね。このへんで終わりましょうか。

さの:とりとめもない感じですが、トマド氏の近況もわかったしよかったです。また話しましょう、ありがとうございました。

一同:ありがとうございました。

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ライター:瀬下翔太
編集:瀬下翔太さのかずや
カバー画像デザイン:キシリュウノスケ
デザインディレクション:鈴木美里

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