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[読書感想] 経営、人間に対する分析と行動力「ノーサイドゲーム」(池井戸潤)

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池井戸節が唸ります。
さすがの爽快感です。
あのお馴染み日曜9時のテレビドラマ枠で放送されていたので、とても有名なお話ですが、私は当時それを見逃していました。

それでいつか読んでみたいと思っていて今年の小説一冊目に選びました。
結果的にとてもよい一冊目でした。
主人公の君嶋は正しい分析力と行動力があり、信じたことは貫く心の底から気持ちの良い人でした。

社会人スポーツの経営はとても難しいということが理解できました。
それと同時にとても面白いな、と思いました。
君嶋が才覚を最大限に発揮して、問題点を洗い出し、それに対する解決策を提案、行動に移して行くのは読んでいてとてもわくわくします。

この物語にある、社会人のスポーツチームの経営に関しては、プロの世界でもある程度同じではないかな、と思いました。

弱いラグビーチームを地域に根づかせてファンを獲得したり、選手のモチベーションを上げるべく奔走したりする君嶋と、徐々にそれが根付き、芽を出し、実を結ぶのは見ていて大変気持ちが良かったです。

半分過ぎたあたりで、天敵の意外な一面が見えるのも、そこから風向きがガラッと変わるのも面白いし、意外なところに意外な敵がまた現れたりして、人はとても多面的で、そういった多面的であるがゆえの心理描写や、のっぺりとした登場人物がいないことがすごい、と心が震えました。

それから、スター性のある登場人物が途中で彗星のように登場して、そばにいた教育係の女の子が翻弄され、魅了されていくのも最後は涙が出るほどの素晴らしさでした。

問題は山積しているのに、すっきりする要素があちこちに散りばめられていて、ワクワクせずにいられません。
どんどん出て来て、どんどん解決していきます。

人物の多面性だけではなく、物語の進み方も、反対や敵対という側面だけでなく、フェアに問題提起できるというような良心的な人物がいたり、生まれてから苦労知らずで生きてきた人物が、その生活環境と性格ゆえに時間をおいて苦労していったり。
自分の欲にしがみついて、それを隠そうともしない人物もたくさん出てきます。
人物も舞台も多面的というか、グラデーション的にリアリティを持って描かれていて、深く考えさせられます。

私が1番好きな場面は、里村が最後の挨拶をした後、佐々が悔しさを滲ませながら、必死で遅くまで練習していたシーンです。
監督の柴門と、ゼネラルマネージャーである君嶋が陰からそっと見守るところ。
読んでいる私自身の体温が上がる感じがして、涙が出ました。
そこで本当の真実を君嶋は知るのですが、それでまた「そうだったのか…」と読んでいるこちらも納得して膝を打ちました。

余談なのですが。
私はプロ野球が好きなので、最初の方のチーム改革のいろんな場面を通して、大好きなドラゴンズのことを思い浮かべました。
昨シーズンが終わった後の大改革のこと。
昨年の名古屋市の小学校卒業式に卒業生にドラゴンズのファイルが送られたこと。
ジュニアのチームにも力をとても入れていて、ファンにも紹介したり、裾野を広げる努力をしていること。
そして選手一人一人が「バンテリンドームに来て応援して下さい」と常に言うこと。
どのチームもそうなのかもしれませんが。
それでも結局、ファンとしてなんとかドラゴンズの収入に貢献したい、と強く思いました。

大好きなスポーツチームのことを、違う側面から想像できたのもとても面白かったです。

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