【阪急バス】三田線の旅
九鬼氏の城下町・三田と名湯・有馬温泉を結ぶ交通は神戸電鉄さまやかつての国鉄有馬線(三田~有馬間)といった鉄道が中心でしたが、古くからバス路線も運行されていました。現在は神鉄バスさまの事業を引き継いだ阪急バスさまが「三田線」としてバスを運行しています。しかし、鉄道という圧倒的に利便性の高い競合交通の存在や、地域の環境の変化のせいか利用は低迷していたようで、2015年には有馬~三田駅間の1系統が休止されて有馬への乗り入れが事実上廃止され、山口営業所に近い金仙寺口停留所と三田駅との間を結ぶ17系統が辛うじて残されるのみです。しかし、この17系統も2023年3月17日をもって廃止されることとなり、歴史ある三田~有馬間のバス路線はひっそりと姿を消すこととなりました。早春のある日、三田線の最後を訪ねてきました。
有馬川の畔に佇む金仙寺口停留所。岡場駅や有馬温泉駅へ向かうバスや、六甲山地の船坂峠を越えて西宮北口駅へ向かう「さくらやまなみバス」が数多く発着していますが、三田駅へ向かうバスはわずか2本のみです。
上山口交差点を曲がってきたバスは停留所で待っていた乗客を乗せると慌ただしく発車しました。ここ金仙寺口停留所はもともと有馬と三田を結ぶ路線の途中停にすぎず、始発停留所の風情はありません。
バスは有馬川に沿って走っていきます。この辺りは西宮市が大きく神戸市側に張り出した飛び地のような山口町。道路沿いには住宅やロードサイド商店が建ち並んでいます。
市境がはっきりわからないままに神戸市に入り、国道を離れて神鉄道場駅近くにある新道場停留所に停車しました。もともとこの近く(といっても少し離れていますが)には国鉄有馬線の新道場駅がありました。停留所名はこの新道場駅に因んでいるのでしょうか。
こんもりと丸い形が特徴の羽束山が車窓を彩ります。やがて、バスは三田市へ入りました。三田盆地の中に広がる市街地を走ります。
平成大橋で武庫川を渡ると間もなく三田駅です。
終点の三田駅は南口バスターミナルの一角にあります。神姫バスさまのオレンジ色のバスの中に青とクリーム色の阪急バスさまのバスが佇んでいます。
到着したバスはわずかな時間で折り返し、金仙寺口行きとして発車します。
三田駅を発車する金仙寺口行き
三田駅北口へ乗り入れていた東部三田線(三田駅北口~波豆間)は既に2021年3月31日をもって廃止されていて、この三田線の廃止で三田へ乗り入れる阪急バスさまの路線は消滅します。
有馬や西宮山口には阪急バスさま、三田周辺には神姫バスさまの路線が引き続き運行され、この地域からバスがなくなるわけではありません。しかし、三田と有馬を結んでいた路線が跡形もなく消滅することに、一つの時代の終わりを感じました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?