「滅びの前のシャングリラ」ブックカバーイラスト考察
更新:2021.8.19/画像追加。レイアウト変更。
2021.10.12/イラストを描いた方について追加。
本書カバーイラストについて、自分の主観による簡易説明文を以下に。
表表紙の上半分にイラストがあり、本の背側から上半身の赤ん坊が仰向けで顔をこちらに向いた状態、その両目を覆うように五輪の花と葉っぱと苺があり、その周りにニ匹の蜂が金粉を撒いている。
赤ん坊の左手にはリボン付きのスプーンが握られ、胸に乗っている。口元には握られた右手が添えられ、肘近くには金粉と光球のようなものが沢山浮かんでいる。
裏表紙のイラストは右下の位置に、ニ輪の花と葉っぱのみ。
これらのイラストから抽出されるキーワードは、『赤ん坊』『花と苺』『蜂』『スプーン』。
考察をスタートする前に、いきなり登場人物名を挙げてもピンとこない方のために本書の各章に出てくる登場人物名を軽くまとめてみました。
★各章(Contents)名と登場人物まとめ。
登場頻度多および重要度の高い人物(登場順)
以下、考察スタート。
keyword:『赤ん坊』
表表紙イラストで一番初めに目につくのが『赤ん坊』。これは何を意味しているのか?
本文中では、赤ん坊そのものは出てきていない。
Loco(山田路子)のバンド仲間ポチの奥さんである南実(なみ)が妊娠中なのだが、出産予定日は12月25日のクリスマスとなっている。しかし、その前に滅亡の日がやってくる。
生まれる前に滅亡の日を迎えるというのはやるせない。生まれてくるはずだった赤ん坊の生と死、それを象徴しているのかもしれない。
keyword:『花と苺』
それぞれの表紙の花は、苺の花。表表紙は五輪、裏表紙がニ輪。表表紙の五輪はおそらく本文中に出てくる登場人物の江那友樹、藤森雪絵、目力信士、江那静香、山田路子の五人だろう。
そして、表表紙には一個だけ苺が生っているが、これは藤森雪絵の妹、真実子の事だと思っている。苺の花言葉に「幸福な家庭」があり、その象徴としてあてはまりそうだからだ。
裏表紙にあるニ輪の花は、滅亡の日に生き残った一組の男女かもしれない。あるいは大きな意味で言えば、日本の学者が算出した「生き残れるかもしれない二割の人類」のことかもしれない。
その根拠は苺の花言葉に「先見の明」というのがあり、由来として西洋ではかつて水に苺の葉や根をつけたものが目に良いといわれていた。
そして、表表紙の赤ん坊の目が苺の花と葉っぱで覆われているということで、「希望」としての意味で捉えたい。
keyword:『蜂』
花の周りを飛んでいる二匹の蜂、よく見ると微妙に違っている。よく見ると色や縞々の幅が違う。
上は黒っぽいので日本蜜蜂、下は黄色っぽいので西洋蜜蜂でしょうか。花に金粉(花粉?)を撒いているので、苺(幸せ)になるようにしているのかもしれません。
keyword:『スプーン』
赤ん坊の左手に握られた青っぽい水色のリボンがついたスプーン。出産祝いとして贈られる、赤ちゃんの幸せを願う銀のスプーンの事だと思います。
本文中では、Loco(山田路子)が嘔吐用のスプーンとして、六万円もする「小さな小さなアンティークスプーン」を買って使用していました。
このリボンですが、本書の初回限定付録としてついているスピンオフ短篇(イスパハン)の表表紙の薔薇の絵にも付いているので、リボン繋がりですね。
こちらのリボンは水色で「サムシングブルー」として、西洋では幸せの象徴として有名だそうです。
金粉と光球のようなもの
最後にどうしてもわからなかったのは、赤ん坊の右肘辺りにある沢山の金粉と光球のようなものです。苺(幸せ)になろうとしている魂なのでしょうか。
おまけ
滅亡の日について
滅亡の日について、はっきりした記載が無かったのだが、本文中から推測するに高等学校三学期初日の次の日、正式にニュースとして発表された日から一ヶ月後の日本時間十五時。
つまり、三学期初日でいうと東京都の場合、一月八日の始業式と思われる。なので、ニ月九日もしくは十日後の十五時が滅亡の日と考えています。
スピンオフ短篇(イスパハン)について
初回限定付録としてついているスピンオフ短篇のイスパハン。
購読希望の方は、下記の画像のように本書の帯に「初回限定 今しか手に入らない スピンオフ短篇付き」という字があり、かつビニールカバーで覆われていれば確実に付いています。そうでない場合は、購入の際にご確認ください。
帯のイラスト、イスパハンの表紙イラストと同じになっているようです。海の中の泡か、夜空に浮かぶ生命のきらめきみたいなイメージを感じました。
ブックカバーイラストについて
ブックカバーのイラストを描いたのは、アーティストの榎本マリコ氏です。
肖像画の顔の部分に植物や静物モチーフなどを描いているのが特徴的です。
似ているなーと思っていた書籍『法廷遊戯/五十嵐律人』のブックカバーイラストも同氏でした。
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