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オリンピックを2度、サッカーW杯を3度撮ったフォトグラファーが感じる、写真はとても「密である」。そして「蜜である。」📷🌸

 どうも、晴れ男☀️フリーランスフォトグラファーの花井亨(@toruhanai)です。東スポ-ロイター通信と報道業界の対角線を歩んで25年。2019年フリーランス独立1年目でナショジオ表紙撮りました。

 ニュースフォトグラファーの仕事は’密’です!!

 ロイター通信の社カメ時代に2度のオリンピック(ロンドン2012、リオ2016)と3度のサッカーW杯(南ア、ブラジル、ロシア)の取材をしました。そのほかにもこれまでの25年のキャリアの中で様々な取材=撮影をして来ました。いまさらで、どなたも知っているかとは思いますが、ハッキリと言います。ニュースフォトグラファーの仕事は’密’です!!

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 ニュースの現場はまさに3密の見本のような場所です。わざわざ情報を集めて、他社に先駆けて、我先にとハイヤー、タクシー、社用車、中には自転車でニュース現場に報道関係者が大集合するからです。中でもカメラマン(写真も動画も両方の)はその最前線、その事象を最もよく見える、捉えることができる場所にいる事がとても大事です。必然的にとても狭い場所に大勢が’密集’することになります。そこはテキスト・ジャーナリスト(記者)とは少し違います。
 記者はニュースの対象者を取り囲む人の輪の2列目3列目からチラリと目撃して、聞こえた話を書いても、迫真の現場レポートになるでしょう。ところがカメラマンは2列目3列目からではよほど運が良くない限り、「現場で負けた」撮影者になってしまします。一定の流れで前後の状況を見せる事ができる動画(ビデオジャーナリスト)は、その状況もアリかもしれませんが、写真は違います。自分のレンズと被写体との間には何モノも入れてはならないのです。そのため、良いと思える場所に複数のフォトグラファーが重複するとすぐに接近戦になってしまします。これは3密をはるかに超える密度です。

      密とメディアスクラム

メディアスクラムという言葉をご存知でしょうか?
”大事件や大事故の取材にあたって多数の報道機関・取材陣が被害者宅や容疑者宅など特定の場所や関係者に殺到し、関係者のプライバシーを侵害したり社会生活を妨げ、大きな苦痛を与える状況。”(出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」)

  メディアの多様化によって、メディアスクラムになる状況は悪化の一方です。適度な競争は業界の健全化には必要不可欠ですが、過度の競争は業界の共倒れを引き起こしかねないと危惧します。私もメディアに関わる一人として、最近SNS等で目にする、マスコミ批判はこれまで声をあげていた人たちとは違うところから声が上がっているように感じます。そして、その声もまた大きくなる一方だとも感じます。

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 2019年3月6日、日産自動車元会長、カルロス・ゴーン氏が東京拘置所から保釈の際に作業員姿に変装してメディアを煙に巻いたことは記憶に新しいところです。ゴーン氏が拘置所から移動した先の弁護士事務所周辺には瞬く間にメディアが大集結しました。
 その後ワゴン車に乗り込んだゴーン氏をメディアが取り囲み、車は動き出せず、あたりはクラクションと窓越しにインタビューを取ろうとする声や怒号が響きました。15分いや20分、その状態が続いたでしょうか。その間、何度も「もう撮っただろ。道を開けよう」という声を複数の人があげました。私も同様にもう撮影をやめて車を通そうと声を出しました。なぜなら、騒ぎを聞きつけた一般の人がその様子を撮影し始めたからです。中には笑いながら、「マスゴミが!」と言って携帯電話からインターネット中継していた人もいました。

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 さすがにたとえ人数が多くてもそれだけの時間があれば、その場にいたカメラマンでゴーン氏の姿を撮れていない人はいなかったでしょう。ゴーン氏も右手で頬杖をした体勢から微動だにせず、声がけにも反応しませんでした。中には数時間前の作業員姿を撮れなかったメディアもかなりいたので、ヒートアップする気持ちは分かりますが、それはあまりにも長い「スクラム」でした
 結局、通報により出動した警察官によってワゴン車は道に出る事が出来ましたが、私にとっては当事者でありながら、あまりにも酷い「メディアスクラム」にこの仕事の正当性をも考えてしまいました

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 フォトグラファーは仕事が写真撮影であることから、被写体の最も近くに常にいます。サッカーではピッチ上で撮影します。2度のオリンピックで私は柔道・レスリングを担当させていただきましたが、どちらも日本期待の種目。常に日本で生中継されており、競技に最中に’視聴者’の知人に「TV映ってるよ〜」と嬉しいご連絡いただきます。スマホにリアルタイムでメッセージをもらい、凄い時代になったと感じました。

「禁断の蜜の味」 

 被写体のすぐ近くにいるということは、そこでしか経験できないことも多くあります。ラグビーの試合では激しいプレーの際には、骨がぶつかり合うような音がします。野球ではファールボールがレンズを直撃したこともありました。ボクシングのリングサイドでは激しい流血戦で体じゅうに’返り血’を浴びたこともあります。
 アスリートの息遣い、飛び散る汗、とんでもない集中力、躍動、そして歓喜。その全てを間近で感じ、それを撮影する。こんな素晴らしい仕事はないと思える瞬間です。それは例えるなら、「禁断の蜜の味」がします。

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 メディア嫌いで有名な取材対象者であればあるほど「フォトグラファーは別」と言います。その取材対象者が自身が言ったことと、書かれた記事の内容にギャップを感じ、メディア嫌いになるケースが多いからです。そして、フォトグラファーが口が硬いのを知っている取材対象者も多いです。
 至近距離で撮影する私たちは、彼らの思わぬ言葉を聞く事があります。本音であったり、時には人間臭い悪口や、愚痴だったりもします。しかし私たちは、よほどのことがない限り、それを公にはしません。逆に言うとそうだからこそ取材対象者はフォトグラファーに心を開いてくれるのかもしれません。そして、それがいい写真が撮れる信頼関係につながる事ができれば、なんとも win-winの関係ではないでしょうか。
 みなさんが知っているスーパースターで、すごくいい写真がある人はもしかしたら、そんなエピソードがあるかもしれません。
(その話は回を改めてたっぷりとお届けしたいと思っています)

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 1年後に延期された東京オリンピックがこのまま本当に開催する事が出来るのか?そんな心配が日増しに募ります。しかし、1年後に「4年に一度の蜜」を味わえるかどうかは、今現在の私たちの「密」をどれだけ回避出来るか、に関わっています。そのために、出来る限り出来ることをします。

stay at home うちで過ごそう



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