見出し画像

【轍】 鎧〜the lonely soldier〜

■はじめに

轍のコーナーでは過去の自作品についてお話します。今回は『鎧〜the lonely soldier〜』についてです。

本作は大学の卒業制作です。僕の居たコースは卒業に際して作品と論文、両方をやるカリキュラムでした。たしか論文はスーツアクターについて書いた気がします。それに紐づく形で、映像作品も主人公は戦闘時に仮面を被る(スーツアクターの出番がある)ことにしました。

【あらすじ】
人類の変異体「ソム」。彼らは人ならざる姿を現し、驚異の身体能力を発揮する。しかし、人類は彼らを蔑み、迫害した。そんな人類に対抗すべく、ソムのコミュニティ《3S》が組織された。これは人類にも3Sにも与しない、1人の男の物語である。

本作で私は、監督・脚本・アクションをやりました。

【2021年11月22日 追記】

当時の企画書が見つかったので一部抜粋して掲載します。

1、企画意図 

昨今、3DCG やモーションキャプチャーなどの技術の発達が目覚ましく、架空のキャラクター(人間でないものを中心に)を映像にする際に、それらの技術が用いられるケースが 飛躍的に増加した。それに伴い、特撮(この言葉を使うと語弊があるため、ここではミニチュアセットなどの特殊造形を用いるものに限定した形で使用する。)の出番は減少して いる。巨大特撮に顕著かも知れないが、等身大の変身ヒーローものにも、その波は押し寄 せている。
特撮やスーツを用いたヒーローアクションは過去の産物と化してしまうのか。
着ぐるみで演じられていたキャラクターが、CGによって表現された場合、少なからず否定的な評価がついて回る。
CGIでは表現出来ない空気や外連味があり、それが大きな魅力なのだ。
そう考え今年度私は「スーツアクションは生き残れるのか」というテーマについて研究していきたい。
映像作品は、演出をクラシカルなものをベースに、アクションのテンポを早め、ヒーローものにおけるオールドファンからライトユーザーまで受け入れられるような作品を目指す。 それによって、スーツアクションの魅力の再確認と、その今後のあり方を模索して行きたいと考える。尺 10~15。


2、設定資料

◦世界観
謎のエネルギー体の影響を受けた人間達は怪人への変身能力を獲得していた。しかし、そのエネルギー体も怪人の存在も、一般には認知されていなかった。
一部の怪人は、その正体が明らかになり、疎まれた。やがて怪人同士のみのコミュニティが形成される。彼らは怪人の存在が表沙汰になることを否とした。だが、力の顕示のために人間を襲うものも現れた。コミュニティーは表立って暴れたり、コミュニティの理念に賛同しない怪人(ロストナンバーズ)、あるいは怪人の存在を知ってしまった人間を殺害していった。
一方、ロストナンバーの中から、殺戮に対抗すべく一人の戦士が立ち上がる。彼も謎のエネルギー体の影響を受けており、その力を行使し、犯罪者や怪人を独断で処分していた。

◦用語
・エネルギー体…謎の存在。粘菌のような見た目で、人間に寄生して形質を変化させる力を持つ。
・ソム…怪人の総称。soldier of mutantの略。謎のエネルギー体の影響で怪人に変態することができるが、普段は人間の姿をとる。人間態でも超人的な身体能力を見せるが、怪人態でベストパフォーマンスを発揮する。
・コミュニティ…ソムの組織。ソムの存在を公表する、表立って暴れたり、怪人態に変態するといった行為は禁止されている。統率者であるダミアン以外は加盟順にナンバリングされ、普段もナンバーで呼び合う。
・ロストナンバーズ…コミュニティに参加していない怪人達の呼称。

◦登場人物 
・ガイ...本作の主人公。20歳。謎のエネルギー体の影響を受けて怪人への変異能力を有しているが、コミュニティに参加せず、むしろ敵対している。(怪人の能力を利用して怪人を殺害する。怪人態の醜い姿を厭い、戦闘時は覆面を被っている。) つまりは、彼もロストナンバーであり、コミュニティに狙われている。家族を理不尽に惨殺された過去故に、極度に「正義」に固執する。自分の判断基準のみで善悪を決めつけ、「悪人」を処刑する、(正義のヒーローというよりは、寧ろたちの悪い殺人鬼とすらいえる人物であった。)

・ユウリ...本作のヒロイン。18歳。幼くして母親を亡くし、片親に育てられる。大学の帰りにロストナンバーズと遭遇。ガイと怪人達との戦いに巻き込まれた。彼女との出会いで、頑として 変わらなかったガイの「正義」が変わってゆく。 

・ユウリの父…怪人であり、コミュニティに所属する。

・ダミアン…コミュニティの統率者にして、ロストナンバーの処刑人。

・コミュニティ所属のソム

・ロストナンバーズ…コミュニティを裏切った、または反発して参加していないソム。コミュニティの人間による処刑の対象。今回はユウリを襲う。

3、あらすじ

大学からの帰り道、ロストナンバー(3人)に襲われるユウリ。袋小路に追いつめられるが、ガイが駆けつけ、ロストナンバーを殺害(うち一人逃走)する。(主人公、腕を負傷。)
ユウリは混乱するが、(理由はどうあれ)助けてくれたガイの傷口にハンカチを宛てがい、止血する。(その中でユウリはガイが怪人であることに気づくが、助けてくれたという理由から手助けする。)
一方、逃走したロストナンバーは、ダミアンに瞬殺される。
帰宅したガイは、座り込み、腕を見ながら、ユウリのことを考える。怪人を倒した証拠や戦利品などで異様な部屋。華やかなハンカチと血塗れの戦利品のコントラストが空虚感を誘う。ふて寝するガイ。
翌日。
コミュニティの描写。カフェテリアでスマートフォンを片手に談笑するソム達。コミュニティ所属者共通の連絡用アプリケーションから、ロストナンバーズがダミアンに処分されたというニュースが入る。ロストナンバーズに嫌悪的な表情。
コミュニティのソムと戦闘するガイ。
ユウリが帰宅すると父親の様子がおかしい。父親が出て行ったので、不審に思ったユウリは後をつけるが、そこは怪人達の集会場だった。彼らの正体を知ってしまった(集会を目撃した)ユウリは、コミュニティの怪人に狙われるが、父親に手を引かれ、逃走する。
ガイはソムを殺害する。死体のスマートフォンにユウリのニュースが。
ユウリの父親は裏切り者とされ、コミュニティの怪人に殺害される。ユウリも追いつめられる。
駆けつけたガイは、怪人はすべからく嫌いなはずなのに、ユウリの父が殺害されたことに憤りを覚えた。コミュニティの怪人と戦いになるが、勝てない。
なぜ怒りが湧くのか?罪人を裁くのではなく、誰かを守ることが正義だと気づいた主人公は、人間を守る為に、コミュニティから差し向けられた刺客と戦い勝利する。

企画はこんな感じで提出しました。粘菌状のエネルギー体どうこうという設定は最終的にオミットされています。

【追記以上】

■まとめ

めっちゃ正直な話、学生の時の作品なので「今の力量が当時あれば…」と思うこともあります。でも、誰かに見てもらってこそ作品。この度、全編公開してしまいます。

厳しいご意見もあるでしょうが、当時の僕が作りたいものを精一杯作りました。大好きな作品です。実は続編の準備があります。ですので、ぜひ楽しんで頂ければと思います。

最後に、その度の作品公開に快く応じてくださったキャスト・スタッフの皆様、本当にありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?