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【英国LLM留学】英国法弁護士への道#2│受験日程/予備校選び

こんにちは。
お読みいただきありがとうございます。

ぼくは、イギリスに留学中の弁護士です。
2023年にロンドンのロースクール(LLM)を修了し、現在は、ロンドンの法律事務所に出向中です。

引き続き、ぼくが英国法弁護士に登録されるまでを振り返っていきます。もしかしたら、聞きなれない略語が出てくるかもしれません。よければ、前回の分からお読みいただけると分かりやすいかと思います。

なお、英国法弁護士で大変なのは、試験勉強ではなく事務手続です。各手続に関する要件等については、できるだけ確実な情報に基づいて話を進めていきますが、最終的には、ご自身で確認頂くようお願いします。


2020年秋頃:英国法弁護士のことをふんわり調べ始める

ぼくが英国法弁護士の登録を済ませたのは2024年2月のことなので、2020年秋頃から遡って書かれると、「こいつは、3年半も前から準備をしていたのか!」と驚かれるかもしれません。

ただ、実際には、準備の開始と言えるようなものではありません。

ちょうどこの頃、今後の弁護士のキャリアを考えて留学をしようと思って色々調べており、その中で英国法弁護士のことを知ったのです。

ニューヨーク州弁護士の肩書を持つ弁護士は、それなりに見かける(というか、大手事務所のパートナーはだいたい持っている)一方で、イギリスの資格を持っている日本の弁護士には直接お会いしたことがありませんでした。そのため、てっきり、英国法弁護士は、1~2年留学する程度の外国人が取得できるような制度ではないと思っていました。

実際、10数年前まではそうだったのですが、2011年に、The Qualified Lawyers Transfer Scheme(通称、QLTS)という、外国法の資格を有する弁護士が英国法弁護士を取得する際のファストトラックが導入されました。詳しいことは省きますが、日本の旧司法試験みたく、所定の試験をパスすれば、資格を取得できるようになっていたのです。

イギリスに留学しても資格がとれる!

QLTSを知る前から、留学先はイギリスにしようと95%ぐらい決意を固めていました。しかし、残り5%のところで、イギリスのLL.M.と現地での限られた期間の研修経験のみで、「イギリス法に注力しています!」と言えるほどのお客さんへのアピールになるかなという迷いがありました。

でも、イギリスへの留学に際して英国法弁護士の資格の取得が可能であるならば、米国の弁護士資格に比べて珍しいこともあり、(あまり大きな声では言えませんが)お客さんにもハッタリが効くだろうと思ったのです。

残り5%の懸念が消えたぼくは、その翌日に留学コンサルタントに連絡して面談のアポイントを取りました。その意味で、QLTSの存在は、ぼくのイギリス留学への決断の最後の一押しをしてくれたものかもしれません。

QLTSは終了してもうすぐ新しい制度が始まるらしい

ただ、もう少し調べてみると、どうやらQLTSはもうすぐ終了して、SQEという新たな試験制度に統一されるらしいということを知りました。

SQEは、外国法の有資格者のみならず、英国法弁護士を目指すイギリス人のトレイニーなども含めた全ての者を対象としたテストであり、外国人は、相対的に合格が難しくなる可能性が指摘されていました。

とはいえ、SQEにさえ受かれば英国法弁護士になれることは、QLTSから変更ないとのことだったので、当時は気楽に「頑張って勉強して受かればいいや」程度に思っていました。

補足:当時参考にしていたブログ

東町法律事務所の山下和哉先生が、イギリス留学中にQLTSに合格されたときのことを書かれています。

留学前に英国法弁護士のことを調べたときに、大変参考にさせて頂きました。ぼくのnoteも、英国法弁護士に興味を持った人にとって、同じく役に立つものになれば良いなと思っています。

2022年4月:試験スケジュールの確認と予備校との契約

2020年末から、かなり期間が飛びますね。ぼくが、英国法弁護士に関して準備を再開したのは、2022年の4月に入ってからです。

というのも、2021年1月から本格的に留学の準備(=英語の勉強)を始めて、しばらくはIELTSに付きっきりとなり、その途中にロースクールへの出願手続を挟んで、またIELTSの勉強に戻り、ようやく入学に必要なスコアが揃ったのが、2022年3月の半ばになってからのことだったからです。

※ そのときの記録はこちらです!

この間、英国法弁護士のことは頭の片隅にありつつも、IELTSのWritingが6.0を超えないことに焦りまくっていたため、準備どころではなかったです。

そういう事情もあり、ようやくスコアが取れて心配事がなくなったぼくは、英国法弁護士について再び調べ始めます。

SQE合格のための必要期間は?

この頃には、2022年の夏に渡英することと、留学の終期(つまり日本に帰国して事務所に復帰する時期)も決まっていたので、そのスケジュールに沿って、SQEに合格する必要がありました。

そして、欲を言えば、英国弁護士の資格を持った状態で現地での研修を行いたかったので、出来るだけ早く合格したいと考えていました。

当時、ぼくが実際に以下のサイトを見たのか記憶は定かではありませんが、SQEの合格に必要な期間に関して、このサイトに書いてあるのと同じような認識でいました。

上記のサイトでは、次のように紹介されています。

SQE1とSQE2に合格するために、合計9~12か月必要である:
・ SQE1については、毎週15~20時間の学習を5~6か月続けること
・ SQE2については、毎週15~20時間の学習を3~4か月続けること

受験スケジュールを決める

上記の通常の学習期間と、当時公表されていたSQEのスケジュール(*1)を見比べて、一旦、次のスケジュールでSQEを受験することにしました。

受験スケジュール(2022年4月時点)
・ 2023年1月末:SQE1
・ 2023年7月末:SQE2

この時はまだ2022年4月です。通常の受験生が5~6か月かかるならば、9か月あれば頑張って勉強すれば大丈夫だろうということで、2023年1月末のSQE1を受けることにしました。

SQE2を受ける時期は迷いましたが、ロースクールの修了して2023年10月から現地の法律事務所で研修をすることを考えると、それまでにSQE2はパスしておいた方がよいと考えて、少々無謀に感じつつも、目標として2023年7月末のSQE2にチャレンジすることにしました。

SQE2の免除は?

ここまで読まれて、ぼくがSQE2を受けることを前提にスケジュールを組んでいたことに違和感を覚えた方もいるかもしれません。なぜなら、ぼくは、日本法弁護士の有資格者として、SQE2の免除を受けているからです。

実は、このとき、ぼくはSQE2の免除について知りませんでした。

正確にはSQE2の免除の存在は認識していたのですが、シビルローの国の弁護士で、英国の法律事務所での実務経験もないぼくが、まさかSQE2の免除を申請したところで、免除が下りるとは思っていなかったのです。

SQE2の免除は、SQEを所管するSolicitor Regulation Authority (SRA)によれば、「SQE2の合格者に求める必要な技能を備えているか否かを申請者ごとに個別的に判断する」ものとのことで(*2)、例外的な措置だと考えていました。

この勘違いが、ぼくが英国法弁護士に登録するタイミングを大幅に遅らせることになります。

※ SQE2の免除は、SQE1をパスしていなくとも申請可能ですので、SQE1を受ける意思が固まっている弁護士の皆さまはさっさと申請をして免除を受けておいた方がよいです。ぼくの体験に沿っていくとSQE2の免除について書くのは少し先のことになりそうなので、もし、質問等ある方は、Twitter(X)のDM等を頂ければと思います。

独学での合格は不可能に近い

当時のぼくは、独学でSQEをパスするのは不可能に近いと感じていました。

その理由は二つあります。

まず、SQEは、日本の司法試験のように過去問が試験機関から公開されていたり、業者が販売されていたりしませんでした。あるのは、SRAが公開した僅かなサンプル問題だけです。これでは、問題演習が出来ません。

次に、ニューヨーク州弁護士試験などとは異なり、日本人ノートのようなアイテムもありません。調べたところ、独学用のテキストは無くもないですが、テキストを読んで、試験用の知識をまとめて体系化することをやろうとすると、時間がかかりすぎてしまいます。

なお、第一の点について、現在、ネットで検索してみたところ、いくつか有料で問題集を提供しているWEBサイトを見つけました。ただ、これらのWEBサイトが信頼を置けるものなのか、自身に知識が無い段階では判断できません。そのため、依然として、ちゃんとした問題演習ができないという懸念は払しょくされていないように思います。

予備校選び

というわけで、ぼくは、予備校を利用してSQEの勉強をしました。

当時のぼくが色々と調べてみた感触や、SQEを勉強している日本人・外国人の方々の状況を聞いても、選択肢は、事実上次の2校に絞られるのではないかと思います。

QLTSchool

QLTSchoolは、その名の通り、QLTSの時代から予備校を営んでいる業者であり、SQEは、QLTSの形式を参考にしていることもあって、多くの受験生がここを使っています。

なお、QLTSchoolに通塾コース的なものはなく、専用のポータル上で講義ビデオを見たり、問題演習を行うスタイルです。

Barbri

米国の弁護士試験を勉強されている方だとBarbriは聞いたことがあるはずです。この種の予備校の超大手ですね。ぼくの通っていたロースクールにも熱心に営業に来ていました。

その際にBarbriから話を聞いたときのおぼろげな記憶だと、基本的には、QLTSchoolと同じようなスタイルですが、通塾コースも準備していたと言っていたような、、。

QLTSchoolと契約

結論として、ぼくは、QLTSchoolを選びました。

実は、ぼくが予備校を検討していたときは、おそらくBarbriがきちんとサービスを立ち上げておらず、事実上、QLTSchoolの一択でした。

そのため、両者を比較した情報をお伝え出来ずに恐縮ですが、気になる方は上記のサイトの情報を見比べて検討されたらいいと思います。とはいえ、SQEは、予備校の違いが合否を左右するようなアクロバティックな難易度の試験ではないため、慎重に時間をかけて選ぶよりは、さっさと勉強を始める方が有益だと思います。

なお、QLTSchoolは、SQE1とSQE2でコースと分けており、ぼくは、まずSQE1のコースのみを契約しました。

どのプランが良いか?

QLTSchoolのサイトを訪れられると分かるように、SQE1のコースはBasic, Advantage, Premiumの3つがあるところ、ぼくは、Advantageを選びました。正確な値段は覚えていませんが、現在の値段は£2490です、、!

ただ、改めて3つのプランの比較表を見直すと、Advantageではなく、Basic(£1990)を契約して、£390を支払ってmock testをアンロックする(つまり、合計£2380)ことで良いかなと思っています。

また後続の回で、ぼくがどんな感じでSQE1の勉強を進めたのか書こうとは思うのですが、SQE1で重要なのは、問題演習だと思っています。

その意味で、提供されるmock testの数が限定的なBasicよりも、Advantageの方が良いですが、Basicを選んでmock testをアンロックしたとしてもBasicの方がまだ安いです。また、Premiumに関しては、附帯しているチューターサポートなどのサービスは、正直に言って、あっても無くても試験に受かるので不要だと思っています。

というわけで、「QLTSchoolかBarbriのどっちが良い?」という質問には答えられないものの、「QLTSchoolのSQE1のコースはどれが良い?」という質問については、Basicを選んで、mock testをアンロックすることをおススメしたいと思います。

教材が届くが、、

テキスト類は専用のポータルからアクセスして電子上で読むことができますし(ダウンロードは不可)、冊子の形でも郵送されてきます。

決済からしばらくして、当時住んでいた住所に大きな段ボールが届きました。中を開けるとものすごい数のテキストが入っています。

「IELTSのスコアも取れたことだし、しばらくはゆっくりしよう」

ぼくは、そっと段ボールを閉じました。
ここから、しばらく、教材は放置されることになります、、。

小括

ここまでお読み頂きありがとうございました。

できるだけ分かりやすく、かつ、細かめに書くことを心がけているものの、ぼくが当然の前提にしていることが皆さんにとってそうでなかったり、また、重要なポイントが意図せず欠落しているために分かりづらかったりするかもしれません。

そんなときは、コメント欄等でご遠慮なくおっしゃってください。

次回は、SQE1の試験の中身についてご紹介できればと思っています。

追記:こちらが次回です!

このエントリーがどなたかのお役に立てば、嬉しいです。
また次回もよろしくお願いします!


【注釈】
*1 SQEの最新の試験スケジュールはこちら
*2 もどかしいことに、このような記載を現在のSRAのサイトで見つけることが出来ません、、。それどころか、ぼくのときは無かった"SQE2 exemption finder"なる便利ツールまで提供されています。


免責事項:
このnoteは、ぼくの個人的な意見を述べるものであり、ぼくの所属先の意見を代表するものではありません。また、法律上その他のアドバイスを目的としたものでもありません。noteの作成・管理には配慮をしていますが、その内容に関する正確性および完全性については、保証いたしかねます。あらかじめご了承ください。


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