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ドトールでテレビ会議はできるのか?

 流行病によりテレビ会議はもはや一般的なものとなった。私が辛うじて仕事をしてた頃も、自宅で仕事をして必要な会議はテレビ会議、というスタイルがまあまあ定着していた。

 でも何もそこそこ混んでるドトールでテレビ会議しなくてもよくない?

 先日買い物帰り、あまりに強い日差しに敗北した私は一時撤退のためにドトールへと入店を余儀なくされた。注文したアイスコーヒーを片手に2階席へ向かう。考えることはみな同じなのか、8割程度の席は埋まっていた。勉強をする学生や、散歩がてらと思われる年配の方、ノートパソコンを広げて資料をまとめている様子の女性など様々だ。ドトールはWiFiもあるので、確かにメールチェックなどもできる。
 空いている席を探すと奥の方のテーブルのうち、少し狭い所が空いていた。席に向かう途中、スーツ姿の男性のノートパソコンが目に入る。

 10人ぐらいのZOOM会議やってるぅ…。

 人のパソコンを除く趣味があるわけではない。たまたま目に入ったのである。たまたま。喫茶店で席までの通り道に、フルスクリーンでZOOMの画面が映し出されていたら嫌でも目に入りますよね?
 そして私の座る予定の席はその男性の斜向かいだった。私はイヤホンをしていたため、そこまで丸聞こえというわけではなかったが、時々発言をしている様子もみられた。マジか…。スゴイ大きな声で話し続けているというわけでもないから、気になって退店とかはありませんでしたが、コンプライアンスの問題とかないのかな?

 しかしこうなると何故彼はココでテレビ会議をしているのだろうか。しかも参加人数からして、急遽ちょっとお話ししましょうってレベルではない。そうだったらせいぜい1:1とか2,3人であるはずだ。ということは予定されていた会議であろう。いくつか可能性を考えてみる

 可能性1:スーツ姿であったことから、もともと近辺に所用がありドトールにWiFiがあることを知ったうえで会議の時間がきたから入店し会議を始めた。満席だったらどうするつもりなのか。計画性があるようでない。

 可能性2:ドトールをオフィスとして利用している。朝1からもうドトールにいて悠々と仕事をして時間がきたから堂々と会議を始めている。1よりも計画性はあるかもしれないが別な方向で怪しい。朝昼コーヒー全部ドトールでとっていてもお店に怒られそう。

 可能性3:もともと出先で会議の予定などなかったが、部下からトラブルの連絡があり緊急の会議が必要に。オフィスに戻っているのでは間に合わないためWiFiがあるドトールに入店して緊急参戦。部下の危機を救う。これだと突然いい人に見えてきた。10人規模となると大規模なトラブルだったのかもしれない。部下は上司の参戦に涙を禁じ得ない。

 可能性4:テレビ会議がダミー。彼は先日会社を解雇されているが家族に言い出せずにスーツ姿で今日も家を出る。長年勤めていた会社からのあまりの仕打ちによる衝撃と、彼の中の仕事人としての誇りが何もせずに公園に佇むことをよしとしなかった。せめて、せめて仮初の姿でも皆と熱く語り合ったあの日を…。彼がとった手段が動画を利用したエアテレビ会議だった。いつか彼が家族に真実を話し、再び活躍の機会が訪れることを願う。
 …いやこれは普通にホラーだわ。

 真相は不明である。

 仕事を辞めてから平日の真昼間やド深夜に出歩くようになったが、人を見ながら妄想をするのはとても楽しい。不思議な人の組み合わせ、この時間になぜこんな格好の人が歩いているのか、どうしてこの人はこの本のコーナーにいるのか、そこにしかないストーリーがある。真実はわからない。だからきっと本人たちには本人たちの、見る人には見る人の、それぞれのストーリーがある。我が道をずんずん進むのも悪くないが、たまには他の人の行動に目を向けてみると少し世界が違って見えるかもしれない。

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