商社マンの転職市場における市場価値の実態について⑥ ~自らの経験を基に~

若干話がそれますが、自分が大手商社をアッサリと辞める決断が出来たもう1つの理由は、投資です。10年間コツコツと長期投資に励み、少しずつ資産基盤を強化してきたことで、同僚と比べて圧倒的な心の余裕がありました。
経済的基盤もそうですが、これから先も資産を増やしていけるという自信があることは大きな励みでした。

しかも高給を前提にした生活スタイルを組んでいなかったので、高額な住宅ローンもありませんでした。振り返ると、こうしたFactorが全て揃っていたことは本当にラッキーなことであったと実感しています。

社内で退職の情報が伝わり始めた瞬間から、多くの同僚から連絡をもらいました。その内、後輩の多数はお悩み相談です。
給料には満足しているが、仕事がとにかくツマらない

例外なく全員がこれを言います。しかし他人の人生を左右する局面で調子がイイことは言えません。全ての後輩に厳しい現実を言い伝えました。彼らの中に外で戦える武器を持った人材は殆どおらず、資格と言ってもせいぜいTOEICと簿記検定を持っているぐらいです。

さしたる人脈もありません。証券口座を開いたことすらなく、投資のやり方も分からず、金融資産は90%以上が現預金です。
戦う武器がなく、資産も少ない
その事実を受け止め、「今の会社で如何にハッピーにやり切れるかを優先して戦略を立てるべきだ」と忠告してきました。

大手商社が従業員に提供する給与体系や福利厚生には素晴らしいものがあります。休業補償・各種保険・企業年金などの厚遇は群を抜いています。何より、あの程度の仕事で年収にして2,000万円近くも貰えることは現代の奇跡と言えます。マッキンゼーやBCGで2,000万円稼ぐには、昼夜関係なく馬車馬のごとく働かされます。

一時の威勢にかられて大手商社を辞めることは、間違いなく後で後悔の原因となります。実際に、そうした先輩を沢山見てきました。遣り甲斐や生き甲斐と引き換えに失うものを的確に把握した上で、それでも総体としてのリターンが上回る確信が得られて、初めて退職を決断すべきだと後輩には言い残してきました。

この話は次回で終わりにします。

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