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パッケージを変えるだけで、売上は伸びるのか?

久しぶりの投稿となります。

少し前となりますが、2021年8月26日に第5回ブランディング事例共有会を開催しました。1人目の発表者を紹介します。
発表者は株式会社パッケージ松浦 代表取締役社長 松浦陽司さんです。
松浦さんは、ブランド・マネージャー認定協会のトレーナーでもあります。

株式会社パッケージ松浦の代表の松浦陽司氏は、“パッケージマーケッター®”を自称しているわけだが、「パッケージマーケッター」とは、パッケージデザインを通じて広くマーケティングを支援する仕事のこと。いろいろな袋、箱、シールの企画、デザイン、製造、納品までを一貫して行うのが特徴。

“パケマツ”の仕事の流れ…

最初にパッケージを作る商品の3C分析を行う。3C分析を行う上で注意しなければならないことは、「自社の強みを、競合と同じものに設定してしまう」こと。ここで重要なのは、たとえばケーキ店であれば、「ケーキにイラストを描く技術がある」といったように“本当に自社だけの強み”を発見することだと松浦氏は強調する。そして、対象商品について縦軸と横軸の2軸で競合との違いを明確にすることで、その商品の独自性を発見する。また、ブランド・アイデンティティ関しては、実際の表現との齟齬がないことが重要。パケマツではブランド・マネージャー認定協会の定める8ステップのうち1~6を主に担当している。

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事例紹介①:ひらお豆腐店の「鳥取代表 ひらお豆腐」他

課題:
クライアントは鳥取県にあるひらお豆腐店で、相談内容は、「現状のパッケージデザインに魅力がない」というもの。クライアントの豆腐屋は現代表の祖父母が創業したが、当主は自動車関連の仕事をしていたが、二代目にあたる両親が継がなかったため、自らが継ぐことを決意。地元にUターンして家業を継いだ。豆腐作りの知識や技術はなかったが熱い思いはあった。松尾氏は、クライアントの「じいちゃん、ばあちゃんの味(豆腐、油揚げ)を消したくない!」という思いに共感したという。

■Before

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■A案

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■B案

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提案:
A案「鳥取県代表」。B案「鳥取代表平尾揚げ」(=鳥取県のカタチのロゴマーク)の2案を提案した結果、B案が選ばれた。
“代表”を名乗ったのは、「No.1は知っているが、No.2は思いつかない」というマーケティングの法則に基づくもの。たとえば日本でいちばん高い山は富士山だが、「二番目に高い山は?」と聞くとほとんどの人が答えられない。つまり、商品名に「1番」や「トップ」と書いてあることは、極めてインパクトがある。このようなパッケージデザインの完成を受けて、ブランド・アイデンティティは「鳥取代表」と定めた。(本来ブランディングの流れとは逆行するが)
また、ブランディングに際しては、チープな印象を与えてしまうポリ袋容器の見直しにも着手した。ブランディングに成功したクラフトビール「コエドビール」がまさにそうだが、高級感は「びん>缶」(調査では41円びんが高い)。
そこで、揚げ物の容器にはタートルパックを採用した。商品は三角と四角の2種類があったため、四角揚げはパッケージの色を白にして差をつけた。お店に陳列すると「鳥取代表」のインパクトが評判になり、豆腐にもシールを貼ることにした。

結果:
パッケージを一新した結果、取扱店舗が2→5店舗へ増加。また、油揚げ販売単会200円→280円へ、豆腐の販売単価も200円→240円へそれぞれアップした。一方、値段を上げたのに売上個数も増加。
とはいうものの、当初は豆腐作りの技術が完全ではなく、まだまだ味もおいしくなかった。しかし「“鳥取代表”を名乗る以上おいしくしなければ」と修業を積んで、2018年全国豆腐品評会(全49商品が出品)で金賞を獲るまでにレベルアップ。
2021年現在はオンライン店舗でも販売するほか、取扱店舗は12店まで拡大。売上は事業継承時と比べて10倍になった。

事例紹介②:株式会社ふじやの「冷凍大学芋」

課題:
クライアントは徳島県にある食品会社、株式会社ふじや。対象商品は、地元の名産品である鳴門金時を使った大学芋。「シンプルなパッケージをリニューアルしたい」とクライアントの副社長からの依頼があった。
そこで、詳しいヒアリングを行ったところ、「手作り」、「自然解凍」、「パリっ、カリッとした食感」、「ブランドの鳴門金時使用」、「無添加」といったいくつかの特徴が浮き彫りになった。ところが、いざ市場調査をしてみたところ、「手作り」や「自然解凍」を売りにしている商品は競合がすでに複数あり、強みにはならないことが判明した。

写真1-6

提案:
このような状況を受けてパッケージ松浦では、数ある特徴の中から競合の見当たらない「鳴門金時」と「無添加」をフィーチャーすることに決定した。
「無添加押し」は、競合商品には「還元パラチノース」など健康に悪そうな原材料が入っている商品もあったため、ターゲットである主婦層は「子どもには無添加のものを食べさせたい」と思うだろうから必然。
また、競合商品はカラフルなパッケージが多かったため、あえて一色にすることで売り場でのアテンションを強化した。商品をポジショニングすると…「無添加」「鳴門金時」、「黒パッケージ」、「一括表示」。一括表示をあえて表面に表示して、無添加感を強調した。

結果:
2021年4月の発売からわずか3か月で2万個を販売に成功。また、売上はパッケージ改善前と比べて10倍に増加した。

松浦さん。発表ありがとうございました。
豆腐屋さんと、大学芋の2つのパッケージの事例をご紹介いただいたわけですが、実際に売上を伸ばしたパッケージ変更時の秘策は、ユニークでかつ意表をついたものでしたが、3C分析とポジションニングの活用方法に大きな鍵がありました。

※この内容は、第5回ブランディング事例共有会の発表の一部をまとめたものです。ブランディング事例共有会では、チャレンジし、試行錯誤し、奮闘している実践事例の発表より、このプロセスから受け取る気づきやアイデアはもとより、元気と勇気をもらえます。

ブランディング事例共有会のアーカイブ映像は、会員制コンテンツサイト「Me:iku」にて公開しています。

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https://www.brand-mgr.org/meiku_lp/


また、久しぶりにブランディング事例共有会を開催します。
次回の第6回の開催が決定しました。
4月28日(木) 15時~にて開催ですので、お知り合いの方をお誘い合わせの上、ご参加ください。※参加費無料

■第6回 ブランディング事例共有会 ※参加費無料
https://form.k3r.jp/brand_manager/kyoyukai06

ぜひ、ご参加ください。お目にかかれれば、うれしいです!


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