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なぜ旅をしているのか

僕は典型的な日本企業で12年働いた。
学生に人気の商社で且つ海外駐在もしてそれなりに偉くもなってきてて給料もそれなりに良かった。でもそれも全部捨てて色々経た結果、今は仕事もせずに家も持たずにフラフラ旅をしている。
なんで旅なんかしてるんだろう。。。と思うこともあるので今回はそれをnoteにまとめておこうと思う。

貧乏なわけでもないが取り立てて金持ちでもない普通の家庭で育った僕は、子供の頃から海外に連れて行ってもらえることなど当然なかった。
大学生にもなると海外旅行をする友人などがチラホラあらわれてそれに影響されて僕も20歳で初めて海外旅行に行った。
サッカーが好きなので当然ヨーロッパ。ただのサッカー観戦ではないサポーター的なこともしていたので普通の個人旅行よりかなりディープな旅をしていたと思う。
そしてその時初めてユースホステルに宿泊し、ホステル(ゲストハウス)の面白さを知ったのだった。
日本にこんな施設があればいいのにな、自分でやれたら面白いなと当時は薄っすらと考えていた程度だった。ヨーロッパで英語が全く話せなくてもどかしい思いをした僕は、その後頑張って英語を勉強しアメリカにも留学。そして周囲の学生がそうしていたように普通に就職活動をして、結果商社に入ることができた。海外でそんな経験をしたので商社に入って世界を相手に仕事したいと思うのは当然の流れだった。

が、しかし思っていたのと全然違った。日本の商社はあくまで日本の会社であり、少なくとも僕のいた会社は世界にでている「日本」企業を相手にした仕事がほとんどだった。もちろんそこで経験したものは非常に役立っているし得たものも多いが、海外にでても結局日本のフィールドを外に持ち出しているにすぎなかった。(サッカーで例えるならアルビレックス新潟シンガポールに移籍するようなもの?)

「誰も自分の肩書を知らない場所で戦いたい」
「初めてヨーロッパに行ったときのようにアウェーの環境で戦いたい」
会社にいたときからずっとそう思っていた。だから駐在に行けるとしても出来るだけ日本文化の影響の少ない辺鄙なところがいいと思っていた。(その結果インドだったので、よかったのか悪かったのか不明だが・・・)

働いている中で、次第にこのまま働いていても満足できないなと感じ始めたのもあり、入社後から少しずつ本気になりだしていたゲストハウス経営を10年越しで遂に始めるに至った。
ただそこには、給料がよくて安定していた生活、このままある程度まで偉くなってこんな風に歳をとっていくんだろうなと予想できる未来に嫌気がさしていたというのも正直あった。

会社を辞めるとき
・その仕事で食っていけるの?
・その仕事は家業なの?親がやっている仕事を継ぐの?(家業なら大丈夫だろうけど・・)
とは何度も聞かれた。
聞いた人たちは心配して言ってくれているのは重々承知しているが、今までのサラリーマン生活の方が『バイト』みたいなもので、あくまで本当にやりたいことをやるための『出稼ぎ』にすぎないと本気で思っていた。
タイミングを見極め高く跳ぶためにしゃがんでいる期間が長かっただけだ。

さらには、ゲストハウス経営を初めて1年ほどした頃、
「いつまで休んでるの?人生の休憩時間にもう飽きたでしょ?次何やるの?」
と聞かれたことがあった。
「いやいや、今までのサラリーマン時代が休憩(出稼ぎ)で、これが本来の姿だから」
と心の中では思っていた。

そこまでしてやりたかったゲストハウス経営も、個人的な事情で手放すことになった(これは本当に個人的な事情だから割愛する)。
だから結果として今は本当にブラブラ旅をしているだけ。
でもこれももちろん「休憩時間」なわけでもなく、本当にやりたいことの一つだ。

どこで読んだのかは忘れたがこんな話を覚えている。

あるドイツ人が職業は?と聞かれ、フォトグラファーだと答えた。
プロでもなくフォトグラファーとして生活費を稼げているわけでもない。副業で会社勤めをしていてそれでお金を稼いている。日本的に言えば本業会社員の趣味フォトグラファーだ。
ただし本人はフォトグラファーが本業だと思っている。だから職業は?と聞かれてフォトグラファーと答えている。

それで何も間違っていない。日本でも売れない芸人はみんなそうだ。


最初に言った「誰も自分の肩書を知らない場所で戦いたい」という思い。
旅っていうのはまさにこれだ。すごい人もすごくない人も偉い人も偉くない人もみんなゼロから戦わないといけない。
だから好きなのかもしれない。それぞれ個人個人で肩書に頼らず動いているから。。。

会社を辞めるときは当然親からも心配された。
良い大学に行かせて、良い会社に入れたから幸せだと思っている親世代からしたら理解不能だろう。
ただ僕からしたらそちらの方が理解不能だ。
良い会社に入ったのは良い収入を得るため。良い収入を得るのは良い生活を得るため。
では良い生活とは???

昔ホリエモンが「金持ちになる方法はあるけれど、金持ちになって君はどうするの? 」という本を出した。
具体的な中身は忘れたけど、タイトルの通りだったと思う。
みんなお金持ちになって何か成し遂げたいことがあるの?
お金を使って何をしたいの?

良い収入を得るのは良い生活(僕にとっては刺激のある楽しい生活)を送るための手段なのに良い収入を得るという手段が目的になってないか?だから上記のようなその仕事で食っていけるの?という質問になるのだろう。

一方でシンガポールで見てきたように、お金がないと幸せになれない現代社会を目の当たりにしてお金の大事さも痛感している。
お金は必要だ。お金がないと幸せにはなれない。
お金より大事なものがあるとかいう人は信用できない。
ただお金は必要条件であり十分条件ではない。
僕は今後もっと稼ぎたいと思うけれど、今の旅をしている生活もこれはこれでむちゃくちゃ幸せだ。

僕は本当に典型的な日本企業で働いていたから視野が狭かった。自分のゲストハウスをオープンしたり自分自身も旅をすることで、世の中にはこんなにも自由に働き自由に暮らしている人が大量にいるんだということを知った。
コロナ前ですらワーケーションというものをする人に多く会った。典型的な日本企業でさえリモートワークをするようになった今ならもっと増えているだろう。会社員をしていた当時の僕からしたら都市伝説のような話だ。
そして世の中にこんなにもフリーランスで仕事をしている人がいることも衝撃だった。どの町に旅してもフリーランスで仕事しながら旅している人がいた。そんな人たちとの出会いは僕の考え方をさらに変えていった。

未来のことなんてわからないし、今僕はこれで稼げているわけではない。今後また会社員に戻る可能性だって十分にある。
しかしさっきのドイツ人の例で言うならば、僕の職業は旅人なんだろう。

もう少し、いやまだまだ旅人を続けます。
今後が楽しみだ。

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