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娯楽映画研究所ダイアリー2021 5月1日(土)〜9日(日)

5月1日(土)

今宵の娯楽映画研究所シアターは、70ミリ大作、三隅研次監督「釈迦」(1961年)を「亀戸有楽座」の100インチスクリーンで^_^

大映の「釈迦」は
日本の「イントレランス」!
日本初の70ミリスーパーテクニラマ!
勝新太郎さんのダイバダッダの悪党ぶり!
ダースベイダー級!
「レインボーマン」を観る目が変わってしまうほど!
クライマックスの大スペクタクルは、IMAXで観たい!

続いて、京マチ子さん「彼女の特ダネ」(1952年・大映)。若尾文子さんの可愛さ!なんといっても浅草松屋屋上のスカイクルーザー! 屋上遊具の最高峰!

5月2日(日)

  今宵の娯楽映画研究所シアターは、昨夜の「釈迦」と並ぶ、大映特撮スペクタクル、渡辺邦男監督「日蓮と蒙古大襲来」(1958年)

けんらん豪華な宗教映画。長谷川一夫さんの日蓮上人。市川雷蔵さんの北条時宗。オーバーで過剰な大芝居の憂国時代劇。チャンバラふんだん、国難、法難、大ピンチ。クライマックスまで大映京都の底力を感じつつ、南無妙法蓮華経のオンパレードは、ノンケのワタシには「釈迦」に「説法」でありました^_^

 続いては、田中重雄監督「東京おにぎり娘」(1961年・大映)

 新橋烏森神社近くのテーラーを営む中村鴈治郎さんの娘・若尾文子さんが可愛い! おばさん・沢村貞子さんのお店のある新宿風景が良い。東口は尾津建設が開発中。川崎敬三さんの後ろには「光る眼」上映中の映画看板! で、新橋のテーラーを閉めて、若尾文子さんがおにぎり屋をオープン。「東京おにぎり娘」と相成る、という風俗喜劇。

5月3日(月)

 今宵の娯楽映画研究所シアターは、伊丹万作脚本、稲垣浩監督「無法松の一生」(1943年・大映)。

 KADOKAWAさんによる4K修復版をBlu-rayでプロジェクター上映。堪能した。何度も何度も観てきたが、まったく別の映画を観る思い。阪東妻三郎さんの松五郎、沢村アキヲさんの敏雄、園井恵子さんの吉岡夫人。月形龍之介さんの結城重蔵親分。内務省検閲でカットを余儀なくされての80分だが、のちの三船敏郎さん版、勝新太郎さん版などで観ている場面を脳内補完。「市民ケーン」と同じく「映画の中の映画」、つまりマスターピース。最後のモンタージュに圧倒され、預金通帳の五百円に泣かされる。技巧と情熱、情緒と映画技術。やっぱり、素晴らしい! 宮川一夫さんのキャメラの凄味! 修復版で何よりなのは、音声の聞き取りやすさ。ヘッドフォンで視聴したが、何を言っているかが判るのは、本当にありがたい!

 続いての娯楽映画シアターは、井上梅次監督「銀座っ子物語」(1961年1月3日・大映)。

 銀座の老舗呉服店の長男・川崎敬三さん、次男・川口浩さん、三男・本郷功次郎さんが、若尾文子さんのホテル令嬢をめぐる恋の鞘当てを繰り広げる。笠原良三さんの脚本だけに、この年の7月公開「大学の若大将」に始まる若大将シリーズの原型になっている。中村鴈治郎さんのお父さんが芸者遊びやナイトクラブ通い、三男の本郷功次郎さんの若大将ぶり.
・長男はレスリング選手で、オリンピック準備委員つまりJOC。
・次男はアメフト選手のサラリーマン。
・三男は大学のボクシング選手。
 銀座の若大将三兄弟。銀座ロケはトップシーンの銀座で三兄弟の早朝ランニング場面ぐらいだが、懐かしの銀座全線座がチラリと映る。で、井上梅次流の三姉妹モノを三兄弟に置き換えているので、シャワーを浴びながら、ミュージカル場面が、すこし酸っぱい^_^ 中村鴈治郎さんと十朱久雄さんの入浴シーンも含めて、今では別な意味のサービスカットがある。
若尾文子さんの美しさ!これが最大の魅力!

昨夜の「東京おにぎり娘」の新橋のテーラー、「銀座っ子物語」の銀座の呉服店主、中村鴈治郎さんはバリバリの関西弁。それが返って、上京してきた浪花っ子が、東京で成功した感じを出している。佇まいだけでも可笑しい、まさに天才俳優!

5月4日(火)

 今宵の娯楽映画研究所シアターは、ピーター・ジャクソン監督「キング・コング」(2005年)を15年ぶりに。

 エクステンド版の3時間20分。1933年世界恐慌の影響で不況のニューヨーク、ブロードウェイの再現が見事。アル・ジョルソンの歌に始まり、ボードビルの舞台に立つヒロイン、アンをナオミ・ワッツがキュートに好演。ジャック・ブラックのエネルギッシュな山師的キャラ。髑髏島で次々と出てくる、恐竜、怪獣、巨大昆虫、これでもかのてんこ盛り。粗野でロマンチストのコングのキャラも素晴らしく、クライマックスのニューヨークのシークエンスには詩情すら漂う。コングにトドメを刺す空軍パイロットには、1976年版コングのリック・ベイカー。お腹いっぱいの傑作怪獣映画!

 続いての娯楽映画研究所シアターは、斉藤寅次郎監督「お父さんはお人好し」(1955年・大映)。

長沖一原作のラジオドラマを、かなり自由脚色した斎藤寅次郎喜劇。とにかく面白いのなんの^_^

 話の筋はあるものの、各シーンに破壊的ギャグ、ナンセンスな笑いが次々と、笑ってるうちに大団円。ラジオと同じ果物屋の設定は、第一作のみで、2作目から食堂に商売替え、大映だけで5作作られた。

 サブキャラの堺駿二さんが、藤本家に問題を持ち込むトラブルメーカー。第一作ではアイスキャンディー製造機を発明して、機械が大爆発、エライことになります^_^

 益田喜頓さん、トニー谷さんがコメディリリーフとして登場^_^

5月5日(水)

 今宵の娯楽映画研究所シアターは、芝木好子原作、枝川弘監督「薔薇の木にバラの花咲く」(1959年・大映)。

 戦争で両親を亡くし苦学しながら育英資金で大学で学んでいる若尾文子さんが、大学院の川崎敬三さんに惹かれながら、エネルギッシュな新人建築家・田宮二郎(新人)さんと結ばれて、結婚を意識する。彼女には新宿の特飲街で働く姉・角梨枝子さん(役名は矢野銀子^_^)がいて、その存在が足を引っ張って… 昭和34年の女の子のセックスに対するモラルとアンモラル。浜田ゆう子(新人)さんも初々しい!

 吉永小百合さんの日活青春映画と違うのは、田宮二郎さんと若尾文子さんが肉体関係を結んでしまうこと。しかし、田宮二郎さんとは何か違う?と思って川崎敬三さんにまた会いに行く。しかも正直に、セックスしたことを告白する。小百合映画では接吻止まりだが、これが大映クオリティ。

 告白された川崎敬三さんの苦悩は、この時代に限らず、男なら誰しもの悩みでもあり^_^

 いまでは当たり前の感覚だけど、性のモラルが違う時代、センセーショナルな題材に。

 最後は、川崎敬三さんの誠意が全てを乗り越えていく。それが作品の爽快さになっている。このあと口の良さが、青春映画の醍醐味❗️

 続いての娯楽映画研究所シアターは、「おちょやん」連動鑑賞、斎藤寅次郎監督の第二作「お父さんはお人好し かくし子騒動」(1956年・大映)。

 長沖一さん原作を笠原良三さんが脚色。今回から藤本家は、大衆食堂へ商売替え^_^ 堺駿二さんの清やんが、怪しい薬・オネストジョンへの投資話を持ち込んでワヤなことに。子役の中に、幼き日の中山千夏さんも! 最高なのは、髭剃り中に子供たちが邪魔して、アチャコさんの鼻がモゲてしまうギャグ。ナンセンスの連続で、ペーソスはどこえやら^_^ ああ、面白い! トニー谷さんが金持ちのバカ旦那を破壊的に好演❗️

 果物屋から大衆食堂に鞍替えしたということは、ラジオの「お父さんはお人好し」とは別世界、パラレルワールドに分岐していったということ。ギャグとナンセンスの宇宙へ^_^

5月6日(木)

 今宵の娯楽映画研究所シアターは、有吉佐和子さん原作、井上梅次監督「閉店時間」(1962年・大映)。舞台は丸高デパート。日本橋高島屋でロケ。高校の同窓生の三人娘、呉服売り場の若尾文子さん、地下食品売り場の野添ひとみさん、エレベーターガールの江波杏子さん。三人三様、素敵な男性をゲットしようとする。井上監督が好きな「ボーイング・ボーイング」タイプの風俗喜劇。ネオンきらめく不二越ビルの森永地球儀。ラーメンをやけ食いする若尾文子さん! 昭和37年の女の子の感覚が楽しめる!

 植木等さんのCMソングでお馴染みの「ヘルスロング」を買わされる潮万太郎さん^_^中村八大さん作曲、井上梅次監督作詞、ペギー葉山さんが歌う主題歌、イカします!野添ひとみさんが立っているのは、泰明小学校前の数寄屋橋公園。大映撮影所に作られたセットです!

 続いて、Netflix「銀座カンカン娘」(1949年・新東宝・島耕二)。

 ニューマスターであまりの綺麗さに驚く! 今まで20回は観てきたお気に入り映画だけど、ピカピカ! 配信で観る、動く古今亭志ん生師匠、笠置シヅ子さんを観る悦び。昭和24年の青空、空気、のどかな風景。ややチープなセット。服部メロディ、アレンジに時代の息吹と希望を感じて、心軽やかに!

 もしかしたら、島耕二監督作品のなかで一番好きかもしれない。志ん生師匠が「疝気の虫」の稽古をするし、「風呂敷」を演じてくれるし!

 伸びやかに歌う、灰田勝彦さん、岸井明さんを観ていると、戦時下というトンネルを抜けてきた嬉しさを感じるのです。

 あ、笠置シヅ子さんが「ラッパと娘」を歌ってる!さらに、ワンフレーズだけど笠置シヅ子さんが「ジャングルブキ」を!

 続きましては、深夜の「おちょやん」斎藤寅次郎監督のシリーズ第3作「お父さんはお人好し 産児無制限」(1956年・大映)。

 堺駿二さん扮する清やんの持ち込んだ「豚ホルモン株式会社」に100万円投資してパー。破産して長屋住まいの藤本一家。やることなすこと裏目に出て、屋台からやり直し。ギャグまたギャグの連続^_^ 特に長屋で屋台を作るも、ドアから出すのに一苦労。無理矢理出したら、家が崩れてしまう。さすが「大魔神」の大映京都! 笠原良三脚本も快調! ミヤコ蝶々・南都雄二さんも登場!

 アイロン失敗して一張羅に穴が空いて「ええ、景色が見えるやないか!」。アチャコさんのセルフ・ボケ!最高!

5月7日(金)

 今宵の娯楽映画研究所シアターは、久松静児監督「浅草紅団」(1952年・大映)。

 川端康成原作を成沢昌茂さんが脚色。常盤座の女剣劇・京マチ子さんの紅龍子のカッコ良さ! 乙羽信子さんの踊り子の百万ドルのえくぼ!映る風景、どれもこれも、楽しくて仕方ない! 仲見世、花やしきの飛行塔! たいやきのあんこみたいに、浅草、上野界隈が活写されている!

 興行を仕切るボス・岡譲司さんの子分を傷つけ逃亡した根上淳さんが暫くぶりにエンコに戻ってきて、手下たちに狙われて逃げ惑い、出口なしとなる。昭和27年の浅草風景がロケでタップリ。河村黎吉さんの人情刑事もいい味。

 続いては、夜の「おちょやん」劇場、斎藤寅次郎監督「お父さんはお人好し 優等落第生」(1956年・大映)。

 シリーズ第4作。藤本食堂の隣に、山茶花究さんが愛人のために食堂を開店。客を取ってしまい、藤本食堂は閑古鳥が鳴く。斎藤寅次郎だから、店には蜘蛛の巣が張り、テーブルにはニワトリ! 本当に鳥が鳴くのがおかしい。で清やん(堺駿二)の発案で、世界一のテレビを設置^_^ とにかく両者が張り合うおかしさ。

ナンセンスとしょうもなさに、ますます磨きがかかった笑いのパラダイス!

5月8日(土)

 今宵の娯楽映画研究所シアターは、岡本喜八監督「ダイナマイトどんどん」(1978年)。

 森繁久彌さん、小林旭さんに続いて、菅原文太さんによる、火野葦平原作「新遊侠伝」3度目の映画化。昭和25年、北九州市のやくざの組合が民主主義の名の下に、チャカをボールに、ドスをバットに持ち替えて野球に挑む、傑作喜劇。「仁義なき戦い」後の実録やくざ野球コメディ。やっぱり、面白いなぁ。特に田中邦衛さんが、酒が入るとメタメタになる豪腕ピッチャー芦刈の作蔵が最高! これぞ娯楽映画!

♪四千余万の同胞のためにゃ 赤い囚衣も苦にゃならぬ

国利民福増進して民力休養せ もしも成らなきゃ

ダイナマイト、どん!

 続いては、シリーズ第2作「トラック野郎 爆走一番星」(1975年・鈴木則文)。

 アンチ「男はつらいよ」として盆暮の定番だった菅原文太さんのパワフル喜劇。今回のマドンナあべ静江さんが、太宰治が好きと聞いて、一番星桃次郎が学生服のインテリになる馬鹿馬鹿しさ。ナンセンスというより、下品を極めてスノッブなインテリを嘲笑。粗野だけどなかなかハイブロウなアプローチ。鈴木則文監督のエネルギッシュな演出は、70年代そのもの。観客の小学生がトルコ風呂のなんたるかを知ってしまう、とんでもない通過儀礼。今回のライバルは、田中邦衛さんのボルサリーノ2。これがバツグンにイカす! 改めて観ると、やもめのジョナサン・愛川欽也さんと春川ますみさんの夫婦が子沢山なのは、「お父さんはお人好し」だったんだね!

 田中邦衛さんの「市民?市民なんていねえよ。この日本にいるのは金持ちと貧乏人の2つだ」というセリフに、この映画の意義がある!

5月9日(日)

 今宵の娯楽映画研究所シアターは、市川崑監督「あの手この手」(1952年・大映)。冴えない恐妻家の大学助教授・森雅之さんと、売れっ子の人生相談回答者で心理学者・水戸光子さん夫妻に、妻の姪・アコちゃん(久我美子さん)が家出してきて、さまざまな波紋を呼ぶ。やはり恐妻家の医師・伊藤雄之助さん、県会議員を目指す女性上位の活動家・望月優子さん夫妻も加わり、あれよあれよの狂騒曲。で、みんながシアワセになる!

 水戸光子さんが姪のアコを「キツネが馬に乗って走っているみたい」と例えるおかしさ、そのココロは「得体のしれない娘」だから^_^

 森雅之のダンディなダメ男、久我美子さんがキュートで可愛いのなんの!テンポ、ウイット、風刺、才気の塊のような市川崑監督の傑作コメディ!

 続きましては、深夜の「おちょやん」斎藤寅次郎監督、シリーズ第5作「お父さんはお人好し 迷い子拾い子」(1956年・大映)。

 前作のラストで子供たちから白浜旅行をプレゼントされた藤本夫妻。旅先で子宝貧次(益田キートン)なる子沢山の貧乏親父と遭遇。天下茶屋の食堂に帰ってきたら空き巣に入られ、末っ子の留太(富松千代志)が行方不明。誘拐犯(山茶花究)に五万円取られて渡されたのは黒人の浮浪児(富松千代志二役)。肝心の留太は、食いつめた子宝貧次の一家心中の巻き添えに? 益田キートンさんが最高におかしい^_^ 葬送行進曲のメロディにのせて「♪わたしの人生初のメチャメチャだ…」と歌う。斎藤寅次郎監督畢生の「この子捨てざれば」と「お父さんはお人好し」のミックス! 富松千代志がうたう、インチキな黒人霊歌は抱腹絶倒。ナンセンスの極北! シリーズ最高にして最終作。おそらく原作ラジオとかけ離れ過ぎが終了の原因かも? 暫く後に、宝塚映画でリブートされることになりにけり^_^


よろしければ、娯楽映画研究への支援、是非ともよろしくお願いします。これからも娯楽映画の素晴らしさを、皆さんにお伝えしていきたいと思います。