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娯楽映画研究所ダイアリー 2022年6月6日(月)〜6月12日(日)

6月6日(月)更新!【佐藤利明の娯楽映画研究所】
祝・鈴木英夫作品リリース〜その場所に娯楽映画ありて

今回は、鈴木英夫監督作品リリースを記念して、その魅力について語りました

6月6日(月)『オフィサー・アンド・スパイ』(ロマン・ポランスキー)・『西部魂』(1941年・FOX・フリッツ・ラング)

『オフィサー・アンド・スパイ』。ロマン・ポランスキーの静謐な演出に大きな怒りを感じた。組織のメンツ、事勿れ主義。1800年代末のフランスでの反ユダヤ主義。市民レベルのレイシズムに歪んでしまう真実。それでも正義を貫こうと闘い続ける主人公。見事なヴィジュアル、これぞ映画!堪能しました!

娯楽映画研究所シアターは、テクニカラー西部劇の佳作”Western Union”『西部魂』(1941年・FOX・フリッツ・ラング)をアマプラからスクリーン投影。1861年、ネブラスカ州オマハ(フレッド・アステア生誕の地!)から、ユタ州ソルトレイクシティまで、電信網を確立するため電柱を建てていくウエスタンユニオン電信会社の技師長・エドワード・クレイトン(ディーン・ジャガー)。瀕死の彼を助けたことがある過去のある男・ヴァンス・ショウ(ランドルフ・スコット)と、ニューヨークの大学出の坊ちゃん出身の電信技手・リチャード・ブレイク(ロバート・ヤング)たちの闘いを描く。

6月7日(火)<庵野秀明セレクション「ウルトラマン」4K特別上映>・『ダラス』(1950年・ワーナー・スチュワート・ヘイスラー)

<庵野秀明セレクション「ウルトラマン」4K特別上映>。女性も多く、みんなで1966年〜1967年の「ウルトラマン」の奇跡を大スクリーンで堪能。作品セレクトもバランスが良く、ニセウルトラマン戦、ゴモラ戦、トリッキーなダダ戦。そして科特隊VSスカイドン!楽しかった。「シン・ウルトラマン」また観たくなり…

古谷敏さんの俊敏さ、桜井浩子さんのチャーミングさ、フレッシュな石井伊吉さん、二瓶正也さんのコミカルな味、頼もしき小林昭二さん。そして黒部進さんのヒーロー然とした余裕。幼き日の僕が、初めて俳優さんを意識したのも「ウルトラマン」でした。科特隊を演じた皆さんを、他の映画やドラマ作品で見つけて「あ!フジアキコ隊員だ!」「ムラマツキャップだ!」と。

また日曜夜7時の、幼き日の我が家の夕餉の時間とか、「てなもんや三度笠」→「シャボン玉ホリデー」→「ウルトラQ」「ウルトラマン」→「オバケのQ太郎」→「泣いてたまるか」の日曜夜のテレビ番組のフルコースが、現在の娯楽映画研究家の礎になっていたんだなぁとしみじみ(笑)

6月7日(火)の娯楽映画研究所シアターは、ゲイリー・クーパー主演の西部劇『ダラス』(1950年・ワーナー・スチュワート・ヘイスラー)をアマプラからスクリーン投影。やー、これは面白かった。戦後、ハリウッド映画はGHQのCIE管理下のセントラル・モーション・ピクチャーが配給していたが、昭和26(1951)年、講和条約を前に、各メジャー会社の日本支社へと配給が切り替わっていく。これはワーナー・ブラザース日本支社再開の第一回作品。

6月8日(水)『ジャンゴ繋がれざる者』(2012年・ソニー・クエンティン・タランティーノ)・「ABC殺人事件」(2018年・BBC・アレックス・ガバッジ)「オビ=ワン・ケノービ」(デボラ・チョウ)第4話・「ミズ・マーベル」第1話

娯楽映画研究所シアターは、夕方からスクリーンを吊るして、クエンティン・タランティーノ監督『ジャンゴ繋がれざる者』(2012年・ソニー)2時間45分をプロジェクター投影。初公開以来なのだけど、ここのところセルジオ・コルブッチ監督のマカロニ西部劇を見続けていたので、ハリウッド製スパゲティ・ウェスタンとして楽しんだ。

2018年にBBCが製作した、アガサ・クリスティー原作のドラマ「ABC殺人事件」(アレックス・ガバッジ)を三夜かけてアマプラで。ジョン・マルコヴィッチがエルキュール=ポワロ?と最初は思ったが、やー、素晴らしかった。

ディズニー+「オビ=ワン・ケノービ」(デボラ・チョウ)第4話。どこをどう斬っても「スターウォーズ」の王道展開。囚われとなった10歳のレイア姫を、帝国の基地に潜入して救い出すオビ=ワン(ユアン・マクレガー)の闘い。ジェダイを支える地下組織のメンバー。危機また危機。第4話は「エピソード4」のパターンを踏襲して濃密なアドベンチャーが展開。

「スターウォーズ」を観ている楽しさを味わっているのだけど、復活したダース・ベイダーとオビ=ワンの暗闘が物語の要なので、それ以上の驚きはない。むしろ「エピソード3」「エピソード4」の間を、きちんと補完してくれてスッキリするという感じ。でも、面白い。この可もなく不可もなしの感じも悪くない。

とにかくユアン・マクレガーが張り切って、ライトセイバーをぶんぶん振り回したり、フォースを駆使してる姿に感動すら覚える。しかもダース・ベイダーの声は、ジェームズ・R・ジョーンズだというだけで嬉しい。大平透さんが健在だったらなぁと思ったり。

チビ、レイアがかわいい。彼女がキャリー・フィッシャーになっていくんだなぁとしみじみ。

ディズニー+「ミズ・マーベル」第1話。ニュージャージーのジャージー・シティのパキスタン系アメリカ人の女子高校生・カマラ・カーン(イマン・ヴェラーニ)が、魔法の腕輪でスーパーパワーを得て…というマーベルの王道パターンの青春コメディ・ヒーローもの。

彼女はアベンジャーズの大ファンで、キャプテン・マーベルに憧れていて、いわゆるオタク女子。「空想の世界」の住人になられては困ると両親は、オタク活動に猛反対。みたいな感じで物語が始まる。

第一話はハイティーン向けの青春コメディのテイストで、これからどう展開していくのかは、予測できそうで出来ないが、きっと、アッと驚く仕掛けもあるのだろうと、毎週、水曜日の楽しみが増えた。

6月9日(木)『荒野のストレンジャー』(1973年・ユニバーサル・クリント・イーストウッド)・『警視庁物語 全国縦断捜査』(1963年・東映・飯塚増一)

娯楽映画研究所シアターでは、クリント・イーストウッド監督”High Plains Drifter”『荒野のストレンジャー』(1973年・ユニバーサル)を久しぶりにスクリーン投影。僕が持っているDVDは20年以上前のもので、4:3のレターボックス収録なので画質が悪く、16:9のスクリーン投影してもザラザラの映像なので、観そびれていた。アマプラで配信されていたマスターもさほど良くはないけど、1970年代のフィルムの質感が懐かしく堪能した。

続きましてはシリーズ第21作『警視庁物語 全国縦断捜査』(1963年・東映・飯塚増一)を2年ぶりにスクリーン投影。回を重ねてきたこのシリーズ。ついに沖縄→秋田→三重と、文字通りの全国縦断ロケを敢行。スケールが一気に大きくなっている。

6月10日(金)『怒りの河』(1952年・ユニバーサル・アンソニー・マン)・『妖星ゴラス』(1962年・東宝・本多猪四郎)

大手町へ立ち寄り、ぐらもくらぶ渾身の展示が「よみうり大手町ギャラリー」へ。本日よりスタートの「明治・大正・昭和 レコードと暮らし」を観覧。杉狂児さん、月光仮面、岸井明さんも!そして保利透さんの勇姿。
貴重な資料の数々で、戦前・戦中・戦後の庶民とレコード文化に触れることができます。

「明治・大正・昭和 レコードと暮らし」(読売新聞東京本社、「ぐらもくらぶ」共催)が6月10日から7月29日まで、東京・大手町の読売新聞ビル3階ギャラリー。

娯楽映画研究所シアターは、アンソニー・マン&ジェームズ・スチュワートコンビの西部劇『怒りの河』(1952年・ユニバーサル)をアマプラからスクリーン投影。

娯楽映画研究所シアター第二部は、東宝特撮映画の最高峰の一つ『妖星ゴラス』(1962年・本多猪四郎)をスクリーン投影。今回は4ch(オリジナル)サウンドでヘッドホンで爆音再生。石井歓さんの音楽が素晴らしく、ぐるぐる回る。特に「俺ら宇宙のパイロット」のヘリコプターによる東京空撮シーン。音楽とヴォーカルの分離の仕方が、いかにも1960年代初めのステレオ設計。分離しているのがかえって立体音響っぽい。長らくモノミックスで聞いていたので、余計に新鮮。

6月11日(土)『ウィンチェスター銃'73』(1950年・ユニバーサル・アンソニー・マン)・『宇宙大怪獣ドゴラ』(1964年・本多猪四郎)

来週で終了となる東京都現代美術館「井上泰幸展」再訪。10時のオープンからゆっくり展示を観ています。三十年来の知人、特撮研究の大先輩、熊本でしこたま呑んだ映画の友人、などなど、知り合いとの邂逅。東宝特撮美術を支えた偉大なマエストロが遺した「特撮遺産」の数々に心躍らせる。
午後からは、三池敏夫さんによる講演会もあり、今日は一日まるまる楽しみます!

東京都現代美術館「生誕100年 井上泰幸展」午後からは講演会、シンポジウム。島倉二千六さん、村瀬継蔵さん始め特撮レジェンドの皆さまも参加されてのプラチナトークに胸熱。随分と旧知の方々とも再会して、濃密な4時間を過ごしました。

井上泰幸展関連イベント特撮トーク
「井上泰幸展とアーカイブを語る」
2022年6月11日(土)13:30-16:30(受付13:00-)
第一部
本展の岩田屋再現ミニチュアセット(「空の大怪獣 ラドン」)を監修した特撮美術監督・三池敏夫氏を迎え、作家遺族代表の東郷登代美氏をゲストに、展示と作品、井上泰幸についてお話しいただきます。
登壇者
三池敏夫(特撮美術監督・本展展示監修者)
東郷登代美(作家遺族代表)
第二部
本展成立までの特撮領域保存の歩み、今回のアーカイブ作業を通して明らかになったこと、貴重な作品資料を活かし継承するために考えるべきことなどを、今後の展望も含めて関係者から紹介いただきます。
登壇者
三好寛[アニメ特撮アーカイブ機構(ATAC)事務局長]
島崎淳/馬場裕也/飛山拓也[バリュープラス](井上泰幸展アーカイブ担当)

娯楽映画研究所シアターは、アンソニー・マン監督&ジェームズ・スチュワートコンビの佳作西部劇『ウィンチェスター銃'73』(1950年・ユニバーサル)をアマプラからスクリーン投影。

「西部を征服した銃」と名高いウィンチェスターライフル”M 1873
を手にした人々が数奇な運命を辿っていくという「舞踏会の手帖」式のユニークな構成。だがオムニバスではなく、ジェームズ・スチュワートの主人公と敵対するさまざまなキャラクターが、次々とこの銃を手にしていくことから・・・といった展開。ロバート・L・リチャーズとボーデン・チェイスによる脚本が見事で、しかもアンソニー・マンのキリリと引き締まった演出で91分に収まっているのもイイ。

続いての娯楽映画研究所シアターは、祝・初Blu-ray化!ということで東宝特撮映画の異色作『宇宙大怪獣ドゴラ』(1964年・本多猪四郎)をスクリーン投影。昨日、東京都現代美術館の『宇宙大怪獣ドゴラ』のコーナーで、「このスチールを超えるヴィジュアルなしだけど、つい観たくなる」と大先輩の特撮研究者と話をしていたこともあり、Blu-rayで再生。

ドゴラが初めて出現するシーン。ヒロイン藤山陽子さんの自宅近くまでタクシーで送ってきた夏木陽介さん。そこで藤山さんの兄・小泉博さんが慌てて走ってきて「宇宙生物の襲撃」となる。全く立場の違う登場人物がここで出会う。関沢新一脚本の「小事から大事へ」展開!

ボタ山の石炭が吸い上げられ、煙突がポキリと折れて宙に舞う。それを見つめる下町・江東区の人々。カットの積み重ねで「大事」を見せてくれるスペクタクル演出。痺れるなぁ。

6月12日(日)『裸の拍車』(1953年・MGM・アンソニー・マン)・『機動戦士ガンダム』(1981年・松竹=サンライズ・富野喜幸、藤原良二)

娯楽映画研究所シアターは、アンソニー・マン監督&ジェームズ・スチュワーとのコンビ第3作となる西部劇『裸の拍車』(1953年・MGM)をアマプラからスクリーン投影。これまでの二人のコンビ作では、ジェームズ・スチュワートは善良な男、というこれまでのスクリーンイメージだったが、本作ではエゴイストの賞金稼ぎという、ややダーティなヒーローにシフト。登場人物全員が「脛に傷持つ」「悪人」という設定で、ネイティブ・アメリカンとの闘いを除いては、五人の登場人物の物語になっている。

娯楽映画研究所シアターで、Netflixで配信中の『機動戦士ガンダム』(1981年・松竹=サンライズ・富野喜幸、藤原良二)をそれこそ40年ぶりに。ファースト・ガンダムはちょうど高校一年の時で、第一話から釘付けとなった世代。劇場版も初日に出かけた。その後、テレビシリーズは再放映、ビデオソフトなどで繰り返し見てきたが、再編集した映画版は本当に久しぶりで、楽しかった。

少し前に試写で、安彦良和監督『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』を観たときに、テレビ版15話「ククルス・ドアンの島」を再見してから、語ろうと思っていて月日が経ってしまって。明日、河瀬直美監督『東京オリンピック2020 SIDE:B』の試写を組んでいたけど、予想通り「未だ完成せず」で観るのが延期となり、では改めて『ククルス・ドアンの島』を映画館で観ようと。

ならばテレビ版をおさらいしてからと思ったけど、ちょうど1981年の劇場版が、13話「再開、母よ…」までの構成だったことを思い出して、劇場版第1作→第15話「ククルス〜」の流れをNetflixで観ようと(笑)
改めて見直すと「機動戦士ガンダム」は戦火に巻き込まれて、少年兵として戦わざるを得なくなる若者の物語(当たり前だけど)だったのだと。2022年、ウクライナとロシアの戦争の最中に観ると妙に生々しい。アムロの「いやいや」キャラは、リアルタイムの16歳としては「めんどくせえ奴」と思っていたけど、いやいや、今や共感、共感、また共感。というわけで、きっと三部作をこの数日の間に見てしまうんだろうなぁと、ガンダム脳が起動しました。で、肝心の第15話は? 今夜見ます、多分『哀・戦士編』(1981年)も一緒に(笑)


よろしければ、娯楽映画研究への支援、是非ともよろしくお願いします。これからも娯楽映画の素晴らしさを、皆さんにお伝えしていきたいと思います。