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『ジャンゴ 繋がれざる者』(2012年・ソニー・クエンティン・タランティーノ)

6月8日(水)の娯楽映画研究所シアターは、夕方からスクリーンを吊るして、クエンティン・タランティーノ監督『ジャンゴ繋がれざる者』(2012年・ソニー)2時間45分をプロジェクター投影。初公開以来なのだけど、ここのところセルジオ・コルブッチ監督のマカロニ西部劇を見続けていたので、ハリウッド製スパゲティ・ウェスタンとして楽しんだ。

タイトルバックに流れるのは、もちろん『続・荒野の用心棒』(1966年)の主題歌。モリコーネの楽曲も劇中に流れて1960年代気分が盛り上がる。泥だらけの道、血塗れのヴァイオレンス、悪党たち、マカロニ西部劇のあらゆるエッセンスを散りばめてのタランティーノ西部劇は大画面によく似合う。

南北戦争直前の1858年の南部。黒人奴隷として売り出されたジャンゴ(ジェイミー・フォックス)は、歯科医を騙ったドイツ出身の賞金稼ぎ、ドクター・キング・シュルツ(クリストフ・ワルツ)に買われる。奴隷を解放するのが趣味のドイツ人と、思わせておいて、凄腕のジャンゴを相棒にして賞金稼ぎの日々。この前半の展開がなかなかで、ヴィジュアルはまさにコルブッチの世界。二人は、ジャンゴの生き別れになった妻・ブルームヒルダ(ケリー・ワシントン)を探しながら、賞金稼ぎの悪者退治を続けていく。

ドン・ジョンソン、ブルース・ダーンなど往年のスター、そして初代ジャンゴ、フランコ・ネロの特別出演! タランティーノによるリスペクトがあちこちあって、映画ファンにはたまらない。

で中盤、ブルームヒルダの雇い主、残忍な領主・カルビン・キャンディ(レオナルド・デカプリオ)が登場してからの展開は、デカプリオとクリストフ・ワルツの腹芸合戦、そして狂犬のようなジェイミー・フォックス! そして黒人執事のスティーブン(サミュエル・L・ジャクソン)と濃密なキャラクターを眺めているだけでも大満足。

後半、一発の銃弾からのヴァイオレンス、ヒーローの胸のすく活躍と、度を越したタランティーノ演出は、観る人を選ぶかもしれないが、爽快なまでのヴァイオレンスは「自由を勝ち得るための戦い」というテーマが重なるので、むしろカタルシスを感じる。

タランティーノによるセルジオ・コルブッチのスパゲティ・ウェスタンへの遙かなるオマージュとして、165分、改めて堪能した。


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