【課題解決】中小製造業の技術経営 経験効果 発現の要因
中小製造業の商品開発を伴走・支援 TECH-TOSHIです。
今回は、東京理科大学 MOT(技術経営)における 経営戦略とマーケティングに関連する講義から、『経験効果 発現の要因』について、ご紹介します。
1.ポイント
内容は、『経験効果の発現の要因は7つあり、原価低減への努力の結果』でした。
経験効果の発現の要因として以下の7要因が上げられる、
1)労働者の能率向上
作業者が特定の作業を繰り返すことで習熟し能率が向上する。
2)作業の専門化と方法の改善
経験の蓄積に伴って、特定作業の専門化が進む。
3)新しい生産工程
製法の改善や新規開発が大きなコスト低減をもたらすことがある。
4)生産設備の能率向上
設備の稼働開始から利用経験が増すにつれ、生産効率の向上を目指した工夫が行われ、ノウハウが蓄積され能率が向上する。
5)活用資源ミックスの変更
経験が蓄積されるにつれて、異なる資源やより安価な資源を活用できるようになる。
例えば、作業を機械化することにより大幅はコスト削減が実現されることがある。
6)製品の標準化
製品は標準化されると、習熟に必要な作業の反復が可能になる。
例)単一モデル大量生産のケースなど。
7)製品設計
特定の製品についての経験が蓄積されると製品に求められる性能を明確に捉えられるようになる。
そこから、製品の性能を保ちつつ、生産コストを引き下げるような製品設計が可能になる場合が多い。
経験効果は自動的に発生するのではなく、原価低減への努力の結果であることを示している。
出所)網倉、新宅、『経営戦略入門』、P177-178
2.講義からの気づき
講義から気づいたことは、
『IoT・DXの活用により経験効果の発揮を効率化』 です。
IoT・DXですが、日本の製造業においては主に生産効率の改善に活用される事例が多いようです。
よって、IoTの導入により、製造現場からデータを取得して見える化するIoTは、
上記の1)、2)、4)、6)において、
取得データから見える化した後、データの分析・解析から問題を抽出し、改善活動を進めやすくなります。
また、3)については設備導入に対して事前にデジタルツイン技術でシミュレーションによる検討ができますし、
5)はロボットの導入により、7)も、特性発現のためのシミュレーションを用いての検討において、コスト削減の要因を入れ込むことにより開発効率の改善ができます。
しかしながら、
これを発展させた事例として、『小米』の『IoTプラットフォーム』があります。
小米は、中国においてスマホメーカーとして有名ですが、スマホの開発・販売を通じて獲得したナレッジを、パートナー企業にシェアリングする「IoTプラットフォーム」により、パートナー企業の能力も最大限に引き出し、ハイコストパフォーマンスの製品を消費者へ提供しています。
つまり、製品を製造・販売した際、IoTによりデータを取得し、そのデータから得られたナレッジを自社だけでなくパートナー企業へも展開し、また、パートナー企業間においてもナレッジをシェアするという『プラットフォーム によるモノづくり』を構築してビジネスモデルに組み込むことにより、自社の優位性を確保したといわれています。
出所)岡野、『中国的経営イン・デジタル』、日本経済新聞出版社、P207-259
3.現状
以前、勤務していたITベンダーにおいて、中小製造業様向けに設備稼働状況・作業状況の見える化に対し、
センサ・通信・クラウドによるデータ取得・蓄積システムとソフトウェアパッケージの導入を行ったことがありました。
その際、製造現場から取得したデータを、製造部だけでなく営業部や生産管理部においての活用も想定して構想立案をしたのですが、ITベンダーのリーダーは「製造部内のみの活用案で」と判断されました。
多くの中小製造業において、IoT・DXの導入を進めておられますが、現状は取得したデータの活用が製造部から自社内のみでの活用となっている企業が多いように見えます。
ドイツが推進している『インダストリー4.0』は、中小製造業も含めドイツ国内の全ての工場間をネットでつなぐ『IoTプラットフォーム』です。
IoTによりデータのシェアからのデータ活用を、企業内だけでなく、国全体レベルで推進しようとするものです。
出所)熊谷、『日本の製造業はIoT先進国ドイツに学べ』、洋泉社
上述した、中国の『小米』はパートナー企業も含めた『IoTプラットフォーム』でしたが、ドイツは国内の製造業全てで『IoTプラットフォーム』を構築を目指しています。
4.解決策
取得したデータからのナレッジを有効活用するためには、自社内だけでの活用だけでなく、社外での活用も必要ではないでしょうか。
顧客や同じエコシステムに所属するパートナーなど社外で活用してもらためには、データを社外へ出すことが必要となります。
<参考>
5.今後の課題
社外へデータを出す場合の課題としては、
1)どこまでのデータを社外へ出すか? 出すデータと出さず秘匿するデータとの切り分けの判断基準の設定
2)ノウハウを社外へ出す場合の保護の仕組みづくり(無形資産をどのように保護するか)
<参考>
3)社外とつなげるときの組み込みシステム・インターフェース仕様の選択と選定
意外と忘れがちですが、社外とデータをやり取りする場合の機器の仕様も大切です。
この部分については、欧米が仕様の標準化を進めているようでして、欧米とデータのやり取りするとなった場合に、
データ取得からの通信・蓄積の機器について『標準化された仕様でないと認めない』となることが考えられます。
今回は、東京理科大学 MOTにおける 経営戦略とマーケティングに関連する講義から、『経験効果 発現の要因』について、TECH-TOSHIよりご紹介しました。
尚、その他にも、この分野においての実践的なノウハウを投稿しています。
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