【課題解決】中小製造業の技術経営 経験効果を活用したコスト競争
中小製造業の商品開発を伴走・支援 TECH-TOSHIです。
今回は、東京理科大学 MOT(技術経営)における 経営戦略とマーケティングに関連する講義から、『経験効果を活用したコスト競争』について、ご紹介します。
1.ポイント
内容は、『経験効果を活用した価格設定によりコストリーダーになれる』でした。
1)経験効果に基づく価格設定(経験曲線の活用)
▷経験の習熟率(経験曲線)からのコスト低下のペースは産業ごとに異なるが、同一産業内では大差はない。
▷自社の習熟率算出と産業全体の習熟率推定、累積生産量から競合のコスト水準が推定可能。
▷業界全体としてのコスト水準が将来どのように推移していくのか予測可能。
▷競合とのコスト差を価格設定に反映させることで、競争を自社に有利に展開可能。
2)浸透価格政策
▷特に経験効果が強く作用する業界では、経験量の差が、さらに大きな経験量の差を生み出す、「自己強化サイクル」が見られる。
製品ライフサイクルの初期段階で、コストリーダーの地位を確保できると、その後の競争を有利に展開可能。
▷製品ライフサイクルの初期段階で、コストリーダーとなるには、『浸透価格政策』が有効。
競争相手が躊躇している間に思い切った低価格を設定し、自社製品の市場浸透を図る。
▷習熟率が高くコスト低下のペースが速い製品では、経験量で他社をリードし、コストリーダーの地位に就くことが重要。
出所)網倉、新宅、『経営戦略入門』、P178-182
2.講義からの気づき
講義から気づいたことは、
『経験曲線を活用し、浸透価格政策をどのタイミングで仕掛け、どのくらいの期間続けるか?』 です。
製品ライフサイクルの初期段階でコストリーダーの地位を確保できると競争を有利に展開が可能とのことですが、自社の状況と競合の状況の両方を考慮する必要があります。
浸透価格政策は商品の低価格販売なので、競合の資金力が大きい場合には、低価格販売の期間が長くなればなるほど自社は苦しくなります。
目的は自社製品の市場への浸透なので、期間を限定し目標の市場浸透度を達成するべく、競合に先駆けて低価格で販売することとなります。
3.現状
以前、勤務していた製造業の車載向けの製品開発において、大手自動車メーカー向けに売価の設定をしたことがあり、
その際、営業担当は過去の顧客の値下げ要求の実績値より、毎年の値下げ要求を見越して売価設定をしました。
このように、過去の実績があれば、少なくともだいたいの傾向は予測できると考えられます。
4.解決策
新規事業参入時に、経験効果からの経験曲線を把握した上で、早期参入を果たせればコストパフォーマンスを上げることができます。
つまり、経験曲線により累積生産量から平均単価の下がり具合を予測し、低価格での販売により自社製品を市場により浸透(浸透価格戦略)させ、競合より有利に展開することができます。
経験曲線を活用しやすい人的作業が多く含まれる業種としては、製造業も含まれますので、経験曲線を活用しやすい業種です。
5.今後の課題
経験曲線を活用するには、まず競合より短期間で生産コストを下げることが必要で、そのためには、生産性を高める必要があります。
そのためには、
1)職務の専門化・分業による生産性の向上
専門化・分業からの担当制により同じ作業を繰り返し行うことにより、習熟スピードの向上がはかれます。
2)作業のマニュアル化による生産性の向上
文書によるマニュアルだけでなく、動画によるマニュアルの活用で習熟スピードの向上がはかれます。
3)作業自動化ツールの導入による生産性の向上
例えば、自動検査機とかデータ分析ツールなどの導入により作業の自動化が生産性向上に寄与します。
などの施策があげられます。
その上で、浸透価格戦略の期間を設定し、タイミングを見極めた上で、自社製品の低価格での市場浸透を開始するべきです。
今回は、東京理科大学 MOTにおける 経営戦略とマーケティングに関連する講義から、『経験効果を利用したコスト競争』について、TECH-TOSHIよりご紹介しました。
尚、その他にも、この分野においての実践的なノウハウを投稿しています。
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