今と昔、自分の終盤の考え方

お久しぶりです。5月に入ってからは中継記者をはじめ新しいことの連続で、あっという間の日々を過ごしています。Noteでの投稿が約1週間ほど空いてしまいました…(決して忘れていたわけではない

そこで今回は将棋の具体的なこと書いていこと思いました。題して「今と昔、自分の終盤の考え方」。昔の自分と今の自分を比較しながら、終盤の考え方についてみていければと思います。中級者~有段者向けの内容になっていますが、級位者の方は「こいうい考え方もあるんだなぁ」くらいの軽い気持ちで見ていただけたら幸いです。

終盤の考え方

まずは下の図をご覧ください。

基本図は△3九飛まで。手番は先手。

現局面は△3九飛と打った局面で、先手の手番となっています。まずこの局面の考え方を見ていきましょう。

形勢判断の指針としては①駒の損得②玉の安全度③駒(特に大駒)の働き④手番あたりが重要になってきます。

①駒の損得ですが、先手の桂得となっています。
②玉の安全度ですが、先手が片矢倉、後手が美濃囲いとなっています。ただし後手玉のほうが戦場から一路離れている(先手が7筋、後手が8筋)ため、若干後手のほうが安全。
③駒の働きは角はお互い持ち駒なのでイーブン。飛車と竜もそれぞれ働いているので、こちらもイーブンです。ただし先手の竜は2九に利いているため、後手は桂をとることができません。そのため若干先手得。
④手番は先手番です。

①~④を総合すると先手のほうが得な点が多いです。そのため現局面は先手有利とみることができます。

問題はこの局面で先手がどう攻めていくか。終盤の基本的な指針としては、相手玉の囲いを崩していくことが大事です。例えば下の図をご覧ください。

駒の損得は同じだが、基本図と比べて後手玉が危なく見える。

駒の損得は同じですが、後手玉がかなり危なく見えます。具体的には▲7一角△7二玉▲7五桂くらいで受けなしになってしまいます。途中の△7二玉で△9二玉は▲3二竜で詰みになります。▲7五桂は次に▲6三銀の詰みを狙っています。

このような局面に持っていくために、玉の囲いを崩すことは非常に価値が高いことなのです。

以上の点を踏まえて基本図に戻って先手の指し手を考えてみてください。自分の指し手を決めたら続きを読んでください。全く分からない方は、すぐ続きを読んでも大丈夫です。

再び基本図。先手の指し手を考えてみましょう。






まず後手の玉の囲いを攻める手として▲4四桂が挙げられます。昔の自分は間違いなくこの手を選んでいたと思います。以下△6二金寄に▲5二銀が継続の一手。△同金寄と取れば、▲同桂成△同金▲7一角まで進めば先手の勝ち筋です。

厳しい王手。美濃囲いは▲7一銀や▲7一角を喰らうと粘りが利かない。

▲7一角がなぜ厳しいかというと、△9二玉のとき、▲8二金と横から金を打つ手が受からないからです。完全に守りが崩壊しています。
この攻め筋は豊島九段がTwitterで書かれていたので、こちらも併せてご覧ください。


では▲4四桂からの攻めが正解かというと実は微妙なところ。△6二金寄▲5二銀のとき、△7一金とさらに逃げる手があります。

後手が全力で逃げた局面。後手玉に迫っているように見えるが、先手の攻め駒が重い形。

先手の桂や銀が後手玉に迫っているようにみえますが、金銀を取りきるにはイマイチなポジションになっています。強引に攻めるなら▲5一銀成~▲5二桂成ですが、かなり重たい形になっています。特に2一竜の横利きが止まってしまうのがイマイチな点です。

基本図のほかの指し手も見ていきましょうか。実は▲1一竜と香を拾う手もあります。ただし△2九飛成とした局面を見ると、得をしているか微妙です。

駒の損得でいえば先手の香得だが、△2一歩や△4六桂が残っている。

駒の損得は先手の香得なので、依然先手よしではあります。ただし先ほどと同じように▲4四桂△6二金寄▲5二銀と攻めると、△2一歩と打つ手があります。

攻めが続く形ではあるが、先手の竜が使えなくなったのが痛い。

先手の攻めは続く形ではありますが、先手の竜の横利きが止まってしまいました。これが2九竜の効果です。竜のポジション関係が気づいたら逆転しています。


そこでもう少しレベルアップの攻め方を見ていきましょう。基本図からのおすすめは▲4四歩です。今の自分ならこの手を選びます。

ふわっとした一手。昔の自分では指せなかった。

一瞬何を狙っているか分からない手です。例えば後手が△1三香と逃げる手に対しては▲4三歩成が厳しい手です。△同金と「金はナナメに誘え」の格言に沿った方向に向かわして、▲6二銀と追撃していきます。

4三金と後手の金を守りから離して、▲6二銀が決め手。

ここまで進むと▲4三歩成△同金の交換を決めた効果が表れます。4三金が守りに参加できない形になっています。元の位置に戻るには△4二金~△5二金寄の2手が必要です。そのため、「金はナナメに誘え」は非常に有力な格言の一つとなっています(銀の場合は△5二銀と1手で戻れるのが金と銀の違い)。

上図の▲6二銀に△同金と取ると、▲7一角が王手金取りになります。上図でも出ましたが、美濃囲いで▲7一角や▲7一銀が取れない王手で入るとだいたい粘れません。

まとめ


①▲4四桂~▲5二銀は一番まっすぐだが、少し重たい攻め方。
②▲1一竜は△2九飛成のとき竜のポジションがイマイチ。特に△2一歩で先手の竜が止まるのがいやなところ。
③▲4四歩がふわっとした一手。次に▲4三歩成~▲6二銀の攻めが厳しい。

こんな感じでしょうか。昔の自分は将棋世界などの記事で▲4四歩のような手を見ると「なんで▲4四桂から攻めないの?」と思っていました。何かよく分からないけど、ふわっとした一手。こんな手を理解して指せるようになったのは、自分は有段者になってからです。
後から振り返ったときに「自分、少しでも強くなったなぁ…」と思うこと。それこそが学ぶことではないでしょうか。なかなか強くなれないと思う方でも、最初よりは確実に強くなっています。その過程を楽しむのも、将棋を学ぶ醍醐味のひとつですよ^^

今日はここまで。最後まで読んでいただきありがとうございました!

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