2023年の豊かな時間 | 読了記録を振り返る
読んだ本を振り返る。これまたも発見があって楽しい。2023年は103冊を読了。読了記録を見ると★5つ(最高の1冊!)が6冊、★4つ(ぜひまた読みたい)が53冊。今年は積読解消を心がけた。以下、いくつかのカテゴリに分けて紹介する。
審美眼を磨く
食事における最高の調味料は「空腹」であり、美味しくいただくには「舌を磨く」こと。同じように、読書の楽しませるのは「好奇心」であり、満喫するには「眼を磨く」こと。同じ本を同じ時間で読んだとしても、好奇心と審美眼の度合いで、その読書経験の質は随分と違ったものになる。
文学と言語(12タイトル13冊)
と言うわけで、まずは文学に対する審美眼を磨こうと、いくつか文章読本を手に取った。次に、言語に対する理解を深めようと、言語や脳と認知に関する本を手に取った。その顛末はリンクを参照。紹介した本と別で読んだ本のうち、良かった本は以下の通り。得たものは多かった。
文学を対象とした文章読本
https://note.com/toshimitsuhara/n/n2d483a7239f5
言語に対する理解を深める
https://note.com/toshimitsuhara/n/nfcc7c0ad7352
言語に対する理解
https://note.com/toshimitsuhara/n/na42bbe938296
三島由紀夫『文章読本』中央公論新社
井上ひさし『自家製 文章読本』新潮社
丸谷才一『文章読本』中央公論新社
石原千秋『読者はどこにいるのか 読者論入門』河出文庫
國分功一郎『中動態の世界』医学書院 ★5つ
吉本隆明『言語にとって美とは何か(Ⅰ・Ⅱ)』角川ソフィア文庫 ※2冊
金谷武洋『日本語に主語はいらない』講談社選書メチエ
今井むつみ,秋田喜美『言語の本質 ─ことばはどう生まれ、進化したか』中公新書 ★5つ
メアリアン・ウルフ,小松淳子 訳『プルーストとイカ 読書は脳をどのように変えるか?』インターシフト
マーク・チャンギージー『<脳と文明>の暗号』早川書房
前野隆司『幸せのメカニズム』講談社現代新書
加藤俊徳『一生脳がよくなり続けるすごい脳の使い方』サンマーク出版
読むということ(9タイトル10冊)
読むという行為が贅沢なものになるにはどうすれば良いか。読書読本や読書会に関する本をいくつか手に取った。他に、読むということをどのように捉えるのか、ファイナンスや哲学的な視点からも探ってみた。いくつかは既に紹介している(リンク参照)。以前に紹介した本と別で読んだ本のうち、良かった本は以下の通り。
読書読本の積読解消
https://note.com/toshimitsuhara/n/n861e920d804d
齋藤孝『読書する人だけがたどり着ける場所』SBクリエイティブ
西岡壱誠『東大読書』東洋経済新報社
藤原和博『本を読む人だけが手にするもの』日本実業出版社
竹田信弥,田中佳佑『読書会の教室』晶文社 ★5つ
村上茂久『決算書ナゾトキトレーニング』PHPビジネス新書
デイビッド・ブルックス 著,夏目大 訳『あなたの人生の科学(上・下)』早川書房 ※2冊
東浩紀『ゲーム的リアリズムの誕生』講談社現代新書
東浩紀『動物化するポストモダン』講談社現代新書
國分功一郎『暇と退屈の倫理学 増補新版』新潮文庫<再読>
視点の変化を楽しむ(9タイトル13冊)
実際、文章の読み方は複数ある。今年は特に、登場人物がメタ認知によって自らの言動を改める作品に収穫があった。このことを、読書記録を振り返って気付いた。以前に紹介した本と別で読んだ本のうち、良かった本は以下の通り。
サンジョルディでオースティンの傍系を頂いたことに今ごろ気が付いた
https://note.com/toshimitsuhara/n/nb269932d18f4
小野不由美『十二国記 月の影 影の海(上・下)』新潮文庫 ※2冊
小野不由美『十二国記 風の万里 黎明の空(上・下)』新潮文庫 ※2冊
ル・グィン 著,小尾芙佐 訳『闇の左手』早川書房
楊双子 著、三浦裕子 訳『台湾漫遊鉄道の二人』中央公論新社 ★5つ
サムセット・モーム 著,河合祥一朗 訳『人間のしがらみ(上・下)』光文社 ※2冊
ヴィクトル・ユゴー 著,永山篤一 訳『レ・ミゼラブル(上・下)』KADOKAWA ※2冊
門井慶喜『おさがしの本は』光文社
米原万里『真昼の星空』中公文庫
米原万里『旅行者の朝食』文春文庫
導出力を磨く
本から気付きと学びを得て、何かを導き出す。そうやって何かしら形にすることが成果となり豊かさにつながる。
学ぶ・調べる・言葉にする(9タイトル9冊)
積読していた『拡張的学習の挑戦と可能性』をようやく読了。これからの学習を理解する上で必要だと考えている。読めて良かった。他に、調べることや読み書きに関する歴史を知る本を読むことができた。
ユーリア・エンゲストローム『拡張的学習の挑戦と可能性』新曜社
八鍬 友広 『読み書きの日本史 (岩波新書 新赤版)』岩波書店
デニス・ダンカン 著,小野木明恵 訳『索引 〜の歴史 書物史を変えた大発明』光文社
小笠原喜康,片岡則夫『中高生からの論文入門』講談社現代新書
自分が文章を書く・言葉にする上で参考にしたい本にも出会えた。『旅する木』のように文章に美しさを宿せるようになりたい。池内さんの『本はともだち』からは、著者や著作への温かい眼差しが感じられる。米原さんの『パンツの面目ふんどしの沽券』は、調べることで好奇心を満たしていく楽しさが溢れている。こういう言葉を紡げるよう参考にしたい。
星野道夫『旅する木』文藝春秋
池内紀『本は友だち』みすず書房
大竹伸朗『見えない音、聴こえない絵』ちくま文庫
米原万里『言葉を育てる』ちくま文庫
米原万里『パンツの面目ふんどしの沽券』ちくま文庫
上記には取り上げていないが、他に永井荷風を1、2冊読んで文章の美しさには感心した。2024年は荷風をもう少し読もうと思う。
対話と推論 (14タイトル14冊)
2023年はうんざりするニュースが多かった。ただし「どうして平和にならないのか」なんて、原因を求めても解決しない。「どうやって平和にしていくか」「どうやって叡智を結集するか」と実現力を磨く方が解決に向かうと思う。
個人的には、AIの進歩が著しい中で、人間には対話と推論が求められているような気がしている。だからなのか、読了記録を見ると対話と推論に役立つ本が目立つ。良かった本は以下の通り。リストの前半8冊が対話の参考に、後半6冊がアブダクションの参考になった。
ジェームズ・ゴードン・フィンリースン 著,村岡晋一 訳『ハーバーマス』岩波書店
宇野重規『民主主義とは何か』講談社現代新書
熊平美香『ダイアローグ』ディスカバー・トゥエンティーワン
小倉広『コーチングより大切な カウセリングの技術』日経BP社
古川武士『性格4タイプ別習慣術』ディスカバー21
金間大介『先生、どうか皆の前でほめないでください』東洋経済新報社
ほぼ日刊イトイ新聞,糸井重里『岩田さん 岩田聡はこんなことを話していた。』ほぼ日
佐宗邦威『直感と論理をつなぐ思考法』ダイアモンド社
A.フロム『愛するということ』紀伊国屋書店 ★5つ
アンドリュー・S・グローブ,佐々木かをり『パラノイアだけが生き残る』日経BP社
クリスチャン・マスビアウ,斎藤栄一郎『センスメイキング 本当に重要なものを見極める力』プレジデント社
アダム・グラント 著,楠木健 監訳『THINK AGAIN』三笠書房
ジムコリンズ『ビジョナリーカンパニー ZERO』
斎藤幸平『人新世の「資本論」』集英社
師走に入って読んだ『人新世の「資本論」』が思いのほか良かった。来年はもう一度マルクスに関する本を読もうかな、なんて思わされた。
註:★5つと評価したものは、タイトルの後ろに「★5」と記載。無記載は★4を表す。★3以下はリストから外した。
2024年の予定
2024年も、引き続き積読解消を進める。2023年は、年初の積読約160冊、新規購入約60冊、借りた本約20冊に対して、約100冊読了。なので現在の積読は約140冊。内容の手強い本や、分厚くて途中で止まっている本が、結構ある。好奇心と審美眼が向上した私にとって、相手に不足なし。来年もガシガシ読んで、豊かさと贅沢さを味わう予定。
それではみなさま、メリークリスマス!そして、2024年も良い読書ライフを!
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