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ウガンダからルワンダへ、赤道をまたぐ02

東アフリカには国がいくつもあるが、『地球の歩き方』に載っていたのはウガンダ、エチオピア、ケニア、タンザニア、ルワンダの5か国だ。治安なども考慮しつつ、旅行しやすいのがこれらの国ということなのだろう。それでも、ケニアの首都ナイロビは「歩き方」として「ナイロビは歩かないでタクシー利用で」と書かれているし、タンザニアの首都である「平和の家」を意味するダル・エス・サラームは治安が非常に悪化しているらしい。私がこれまでに旅行したことのある地域とは少々様子が違うようだ。

さて、どうしたものか。

『地球の歩き方』のページをくっていると、「初めての旅なら第一歩はカンパラから」という記述が目に留まった。カンパラはウガンダの首都だ。ウガンダはほかの国よりは治安がよいらしい。私にとって『地球の歩き方』はバイブルだ。ここは素直に従っておくことにしよう。ただ、ついでにウガンダと隣接するルワンダは見ておこうと思う。『ホテル・ルワンダ』の舞台となった国を自分の目で見てみたかったのだ。可能であれば、ウガンダからルワンダへは陸路で入りたい。私にとって陸路での国境越えは高揚感をともなう特別なイベントなのだ。

まずはカンパラへ向かい、ウガンダで数日を過ごす。その後、バスでルワンダの首都キガリを訪ね、再びカンパラへ戻る。そして日本へ帰国する。旅のおおよそのイメージが見えてきた。すでにわくわくしてきている。

ウガンダ行きを決めると、高揚感も手伝ってすぐさま日本とエンテベの往復航空券を手配した。後々、この軽はずみな即決を後悔することになるのだが、この時点ではもちろんそんなことは知らない。それにしても、航空券の高いこと高いこと。ウガンダ旅行をあきらめようかという考えが頭をよぎったほどだ。アフリカは「遠くて近い」のではなく、やはり遠いのだと改めて実感した。

渡航前に済ませておくことが2つあった。ビザの取得と黄熱病のワクチン接種である。

日本国のパスポート保有者は、観光目的なら多くの国にビザなしで入国できる。そのため日本国のパスポートは世界最強と言われることもある。だから、観光目的の渡航でビザが必要となると妙に焦ってしまう。ええと、ビザってどうやって申請すればよいんだっけ? 

数年前のエジプト旅行でも観光ビザが必要だったのだが、この時は入国時に手数料を添えて申請すればその場でアライバル(到着)ビザを取得できた。インターネットを調べてみるとウガンダでも同じようなアライバルビザを取得できるらしいのだが、大使館のウェブサイトにはアライバルビザの記載がない。公式サイトに載っていない情報を頼るのは少々不安である。

実は、ケニア・ルワンダ・ウガンダの3か国に渡航できる「東アフリカ観光ビザ」というものがあり、本当はこれが欲しかったのだ。しかし、東アフリカ観光ビザを申請するためには事前に旅程表を提出する必要がある。現地での滞在プランなど何もない現段階では断念せざるを得ない。すると、今回はウガンダとルワンダの2国を訪れる予定なので、ビザもこの2国で別々に必要となる。

また、現段階で頭に浮かぶ旅程ではウガンダへ2回入国することになる。この場合、ビザは2回分必要なのだろうか、それとも1回分だけでよいのか。複数回の入国が可能なマルチプルビザというものがあるらしいが、日本でこのビザが取得できるのだろうか? ウェブサイトの情報だけではどうも要領を得ず、ひとまず代官山にあるウガンダ共和国の大使館へ行ってみることにした。

大使館は代官山駅から10分ほど歩いた場所にたたずんでいた。あまりに小さくて見逃すところだった。代官山のどこにでもある、アパートの一角という感じで、大使館という言葉から想像される建物にしてはあまりにも小さい。うっかりして通り過ぎてしまいそうだった。

友人の家を訪ねるようにルワンダ大使館を訪ねる。

対応に出たのはずいぶんと不機嫌そうなぽっちゃりとした女性だった。もっとも、固そうな雰囲気を醸すあたり、いかにも大使館にいそうなタイプではある。それでも、こちらの質問にはきちんと答えてくれた。

1番気がかりだったのは再入国についてだったのだが、マルチプルビザの取得はやはり難しいようだった。ああ、この時点で私はすでに自分の旅行計画に過ちを見つけていた。初めから、往路はウガンダ入りして、復路はキガリから出国するような航空券を取っていればよかったのだ。しかし、私の航空券は変更ができないタイプだった。

どうしようかと迷っていると、大使館の女性が光り輝くような解決策を示してくれた。キガリからエンテベまで飛行機で行って、そこから予定通り日本へ向けて出発すればよいというのだ。空港で飛行機を乗り換えるだけなら「入国」にはならないから、ビザは不要である――先ほどまで不愛想と思えていたのが、急に知性をたたえた寡黙さに思えてくるから不思議なものだ。これならマルチプルビザの問題は解決で、確かに妙案に思える。よし、これでいこう。シングルビザの申請用紙をもらい、その場で記入すると、パスポートを預けて大使館を後にした。

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